35
「むー!みんな取られてたー!」
実験動物に埋め込まれてる発信機を追う事一時間。
招集された卒業生の先輩や後輩達が外に散らばった実験動物のほとんどを相手していた。
大体4、5人が手を組んで突然変異体と戦っている。
そのため俺とショコラは既に戦っている実験動物は諦め…もとい、あっちに任せて。
相手のいない逃げ回ってる実験動物を探し回っていた…のだが。
どうやらようやく見つけた最後の一体も在校生達が相手をしているようだ。
「だから早くって言ったじゃん!」
「騒ぐなよ、在校生に見つかるぞ」
俺らは今、高台の方から在校生達が戦ってる様子を観察している。
理由は危なくなったら助けるため。
戦ってるのが男のみだったらそのまま去っていたが、女が一人でも混ざってるんなら話は別だ。
「ほらほら、育っていく若い芽たちを見守るのも楽しいもんだぞー」
「…確かに楽しいけどさー、もっとあの突然変異体で遊んでたかった」
ショコラはぶつくさ文句を呟きながら在校生達と突然変異体の戦いを見る。
「生徒達が負けそうになったら助けに行く名目で戦えばいいじゃねぇか」
「うーん…そだね」
姿はドラゴンに近いが、よく見ると明らかにキメラのようだ。
ドラゴンの翼にゴリラのような上半身、ライオンのような下半身をしている。
顔はライオンっぽいかな?
「にしても…中々良い陣形だな」
「そだねぇ…剣や槍を武器に使ってるのが近距離で敵を翻弄させて、ボウガンや戦弓を使ってるのが中~遠距離で敵の注意を引く」
「んで魔術を使える奴が遠距離から動き回りながらダメージを与える」
近距離の奴らは無理にダメージを与えようとはせずにヒットアンドアウェイ方式ですぐさま離脱。
攻めてる奴らが狙われたり危なくなったらすかさず戦弓で敵の気を引く。
そして作られたスキを突いて魔術での攻撃。
見事なコンビネーションだ。
俺たちでもこんな風には戦えなかったのに。
「このままじゃ確実に出番は無いよね?」
「分からんぞ?どんな状況でも何が起こるか分からないのが戦いだからな」
「それはそうだけど…」
「この気温に慣れてるとは言え疲労が溜まると命取りになるだろ?」
因みに軍事大陸は年中雪が降り積もっている。
時には豪雪になる時も。
その昔はロシア…その前はソ連と呼ばれてたらしい。
おっと、ソ連はソビエト連邦の略ね。
正式名称はさらにソビエト社会主義うんたらかんたら…と長いんだけど。
そんなワケで気温はかなり低い。
昼間の今でさえたったの1℃だ。
夜は最悪-20℃まで下がる時もある。
寒いと身体の動きが鈍ったりするんだよねー。
普段はそうでもなくても、疲れが溜まるにつれてどんどん寒さにやられていく。
それは動きだけじゃなく思考にも影響を及ぼす。
一瞬の油断が命取りになる戦いでは気温とか自然が一番の敵だったりするわけで。
「にしても…」
「デカイよね」
俺が実験動物の突然変異体を見ながら呟くとショコラが後を繋いだ。
やっぱり同じ事を考えてたか。
戦闘修練場に居たやつはミノタウルスもどきが約6m強、ワーウルフもどきが約5m弱ぐらいだったのに対して外に逃げてたのは規格が違う。
今見てるのもそうだが、どいつも体長が10mをかるく超えていた。
こいつは15mぐらいはあるんじゃないか?
肺活量も半端ないのか、吼えただけで木が揺れて積もっている雪が地面に落ちる。
「あ」
突然変異体の咆哮に思わず耳を塞いだ前衛の生徒がそのスキを突かれて吹っ飛ばされた。
そして運が悪い事に…急に飛んできた生徒を避けきれなかったのか距離を測ってたアーチャーにぶつかる。
「コレはヤバい」
「行こう」
出番が無い、ラッキー。って思ってたのになぁ。
飛ばされた生徒とぶつかったアーチャーに気を取られたもう一人の前衛も突然変異体に攻撃されて地面を転がる。
陣形の乱れをチャンスだと本能で悟ったのか突然変異体は二人目のアーチャーの所へ走った。
「こういう戦いでは微かな綻びでも全滅するから困ったもんだ」
「それほど敵とレベルの差があるって事でしょ」
俺らも急いで生徒達の下へ走ってるが、到着するまでには少々時間がかかる。
300m近く離れていたうえに雪道だ、中々走りにくい。
くあぁ…生徒の誰かが死ぬ前に間に合えばいいけどねぇ…
ふぅ…気温が低いから眠くなってくる。
「私が相手するから回収よろしく!」
「はいはい」
剣を抜いて突然変異体に斬りかかったショコラを見て、俺は倒れてる生徒達を肩に担ぐ。
…やっぱり一回では3人までしか運べねぇか。
突然変異体から少し離れた場所に運びショコラの邪魔をしないように残りの生徒を回収した。
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