32

俺が首を傾げてる間にショコラは105号室に入って行った。



「…ショコラの敵はなんだかワーウルフみたいだなー」



因みにこの戦闘修練場の全ての部屋は廊下側の壁が半分ガラス張りになっている。



使われてるガラスは超強化防御ガラスと言うシロモノで、とにかく強い。



なんか理論上は巨象の5倍の体重で踏まれてもヒビ割れすらしないと言われてるらしい。



それをファイブシールドシステムってやつ?



科学的なデータを元に強化防御ガラスを5重にして、これ以上にない強度を生み出してるんだと。



強度はどうでもいいとして…いや、良くないけど俺の言いたい事とズレてるんだよ。



俺が言いたかったのは、戦ってる姿が丸見え。って言う点だよ。



迂闊に自分の手を晒せないじゃん?だって教官から生徒たちから…将来敵になりそうな奴らが見てるんだぜ?



とはいえ俺が戦うのが筋骨隆々な人狼よりも弱いってのは幸いか。



「ヴゥモォー!ヴゥモォー!」


「くう…!」



…なんだこのミノタウルスみたいなやつは。



あのワーウルフもどきと一緒でこれまた無駄に筋骨隆々じゃねえか。



しかもアレより一回りデカイって言う。



これ、身長も身体の大きさも俺の6倍ぐらいあるんじゃねえ?



「こいつとやるのかー」



ドアを開けた時点でもうやる気は底辺だが、大怪我してる学生にこれ以上戦わせるわけにはいかんしな。



なぜなら良く見たら4人共女の子だから!!



これは男としての格好良さをアピールする絶好のチャーンス!



「ヴゥモオォ!!」


「…っきゃ!」


「おっと」



突然変異体は脚を掴んで振り回してた女の子を俺に向かってぶん投げた。



俺はそれを優しくキャッチ。



「女の子を振り回すなんて中々躾のなってねえ獣だな」


「あ、あの、ありがとう」



女の子を地面に下ろして腰に差してた無名を抜く。



「こいつは俺がやるから下がってろ」


「え?でも…」


「ブモァ!!」


「そら来た」


「きゃっ…!」



突然変異体のパンチを女の子の肩を抱いて横に飛び一緒に避ける。



「あらら、コンクリの床を余裕で打ち砕きますか…」


「グラベぇ!!」


「こりゃ…避けるのは無理っぽいな」


「あっ!」



人間の言葉のような咆哮とともに突然変異体は蹴りを放ってきた。



体躯には合わない速度の蹴りを一緒に避ける事は不可能だと判断して女の子を突き飛ばす。



「ゴオオ!!」


「あら」



剣でガードしたものの、突然変異体はそのまま蹴り抜くように俺を吹っ飛ばした。



「まあ予想済みだけど…な!」



空中でくるんと体勢を変えてガラスに着地する。



そして床に落ちる前に突然変異体に向かって飛んだ。



「ヴゥモ!!」


「ははっ、俺の剣とどっちが…」



向かって来る俺を迎撃するようにさっきコンクリの床を打ち砕いたパンチを放つ。



そして突然変異体のパンチと俺の剣がぶつかった。



「ヴゥモオオオ!!!」


「どうやら俺の方が上だったようだな」



突然変異体の拳を半分に斬り裂き、指を全て斬り落とす。



「ほらほら、今の内に部屋から出た出た」


「え?あの…!」


「きゃっ!だ、一人で歩ける!」


「手助け無用だ…くそっ!」



痛みに耐え切れず手を振り回してるスキに女生徒を回収して部屋の外に追い出した。



「ようし、コレで気兼ねなく戦えるな」



さっきまでは女の子を気にしながらだったし。



「グ…!ブ…!ヴぅ…!グヴォオオ!!」


「おお、本気モード突入か?」



ひときわ大きく吠えるとさっきぶった斬った手が変化している。



蹄のような形になっていて心なしか硬質化してるような…

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