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「…くっ、応援がやっと来たか…」


「ありゃりゃ、包帯だらけだね」



中に入ると包帯を巻いた怪我人がいっぱいだった。



「お前…ラグイーズ…か?」


「そだよー?他に誰に見えるのー?」



包帯を巻いた教官はショコラを見ると驚いたように聞く。



くそ!なんで顔見知りの教官なんだよ!!



他にも教官はたくさんいるだろ!



因みにユニオン兵士養成学校には教官だけで500人ぐらい居たりする。



だって生徒は毎年何万人って入学してくるからねぇ。



どんどん辞めていくけど。



いっぱい居る教官の内、俺と顔見知りなのは10人程度なんだが…運が悪かったようだ。




「いや…成長して更に可愛くなったな、お父さんは嬉しいぞ」


「急に父親面しないでー」


「冗談はさておき、お前のその斜め後ろに見えるのはまさか…!」



教官は少し血の気が引いたような顔になって俺を指差す。



「ん?ああ、ていとだよ?」


「やっぱりか!幽霊になってまでお前に取り憑くなんて…!」



教官は悔やむように思いっきり地面を叩いた。



「遠間!頼むから大人しく成仏してくれ!生きてる人間を巻き込むな!」


「……あー、チガウチガウ、生きてるって」



ショコラが呆れたように手を振る。



「…なに?」


「久しぶり…と言えばいいのか?なんか生き延びてた遠間っす」


「なに!?幽霊じゃなくて本人だと!?」



ヨロヨロ…と立ち上がって俺の両肩をガシッと掴む。



生徒たちや、他の教官は何事か?とこっちに注目した。



「本当だ…!ははっ、お前生き延びてたんならもっと早く知らせろよ…」


「いやー、死んだ事になってるからその方が都合良いかなって」


「お前らしいドライな答えだ、どうやら本物らしいな」



なんか意味不明な事に…周りの人に拍手されたんだけど。



「感動の再会はさておき、状況は?」


「あ、ああ…今回の突然変異体は全部で10体、その内の二体がココにいる」


「何号室?」


「105と108だ」



さっきは描写し忘れたが、この戦闘修練場って建物…くっそデカイ。



そこいらの学校の体育館…適当な平均的な大きさ?の縦が約二倍、横も約12倍の大きさを誇る。



で、一階と二階で分かれていて…下に48部屋。



上に46部屋(教員室と簡易保健室が二部屋分)だ。



建物の形は正方形に近い長方形みたいな感じ。



主に二階は下級生の戦闘基礎を教えたり生徒同士の個人、団体戦に使われている。



一階は実験動物との戦闘オンリー。



んで一階は101から148までで、二階は101から146まで。



「今回のも前回に負けず劣らず強いぞ…なんせ俺たち教官が束になっても勝てなかったんだ」


「どっちが強そうだった?」



ショコラは明らかにワクワクした様子で教官に詰め寄る。



「犠牲者…と言うか負傷者が多かったのは105の化け物だ」


「じゃあ私はそっち!あと一体は任せたよん」


「は?二人で同時にやるんじゃないのか…?」



教官はあからさまに俺を見て心配していた。



いや、まあ弱かった頃の俺しか見てなかったんだから気持ちは分からなくもないが。



「えー?私たちが見なかったこの5年間で遥かに強くなってるから平気だよ!ね?」


「ん~…できれば面倒は御免被りたいんだけど」


「こうむりたい?」


「あ、ごめ…お前らには通じなかったよな…要約すると、あんまりしたくないって事だ」


「はあ~…異国の言葉って難しい」




つっても、『御免被りたい』って言葉も良く使うわりにおかしいよな。



ごめんは謝るor拒否、拒絶。



被りたい…被るは色々と受ける、受け入れるor与えられる。



…普通に足せば、拒否を受け入れたいor拒否を与えられたい。だよな?



なんで拒否系、拒絶系として使われるんだろう…



うーん、言葉って不思議だなぁ。

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