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「うん」


「アウトだ」



パタンと指南書を閉じると目を閉じて仰ぎながら言う。



「うーん…アウトねぇ、それはどっちの意味かな?」



ここの所長はあまり物怖じしないタイプの人間なのか、のんびりと聞いてきた。



「コレは、某研究所から盗まれた研究資料。って意味」


「つまりは…このままだと盗作になりますよー、って感じか?」



まだ発表してないんだから盗作…では無いだろうけど、とりあえずアウトだな。



「な…!何を根拠に!」


「コレを考えた発案者が私達の知り合いにいるわ」


「そんなの!そっちが盗作かも知れないじゃないか!」



中年のハゲは焦りながら顔を真っ赤にして反論する。



「…もしかしてあんた、何か知ってんの?」


「し、知らない!俺はただの雇われ研究員だ!」


「じゃあ口を挟まないで」


「なんだと?この小娘が!」



ショコラの一言が中年のハゲの怒りに触れたのか罵るように怒鳴った。



…この慌てようは絶対にナニカあるよな。



分かりやす過ぎて絶対に仕掛人の奴、人選ミスだって。



「騒々しいぞ!何があった!」




研究員達がザワザワしてると丁度良い?タイミングで研究室に残念坊ちゃんが入ってきた。



「す、スポンサー!丁度いい所に!」



中年のハゲはダッシュでスポンサーに近づく。



そして中年のハゲからこれまでの経緯を聞いて今の状況を把握したようだ。



「ふん、盗作だと?言いがかりは止めてもらいたいな」


「まさに盗人猛々しいとはこの事だな」


「なにそれ?」


「あ、昔聞いたことがある」



マキナとリザリーは首を傾げ、ショコラだけはなんとなく分かったような顔をした。



「人の物を盗んでおいて恥知らずな様、だよ」


「…この状況にぴったりだね」


「確かに恥知らずね」


「なんだと?…ってリザリーじゃないか!なぜこんな奴らと一緒にいるんだ!?」



マキナ達の発言に残念坊ちゃんが眉間に皺を寄せて睨む。



睨んでやっとリザリーに気付いたのか驚いている。



「なぜって…知り合いだからに決まってるでしょ?」


「知り合い…だと?」


「そうそう、俺らは一応友達なんだよ」


「暇つぶしに後をつけてたらビックリ、まさか盗まれた研究資料を発見できるとはねぇ」



ショコラは袈裟懸けしてたミニバッグに指南書を入れながら呟く。



「言いがかりを…!証拠でもあるのか!?」


「証拠…?ちょっとマスク借して?」


「はいよ」



俺はポーチから最後の一枚のマスクを出してショコラに渡す。



「…コレでよし。あ、証拠だったっけ?私は魔道博士の一人ルナ・ソルディ」


「私も魔道博士の一人でミリア・リアージだよ」



マスクを着けてから自己紹介のように名前を言うとマキナも同じく名乗った。



「な…!ルナとミリアと言えばあの五大魔道博士の…!!」



流石に研究者の中では絶大なナニカを誇るのか俺達を除いた全員が驚愕する。



「コレで納得したかしら?あ、因みに私は魔道博士とは知り合いじゃないわ」


「…こいつらは俺の友達だ」


「私はただ情報を提供しただけよ」



リザリーはいかにも私は無関係です。みたいに言い放った。



「リザリー、情報提供感謝するぜ」


「あなたのおかげで私たちの研究資料を取り戻せた…感謝感謝」


「いえいえ、五大魔道博士の役に立てたのなら光栄です」



ははっ、知ってる奴らから見たら茶番劇、三文芝居もいいとこだ。



なんたってリザリーも五大魔道博士の一人なんだからな。



まあでもリザリーと魔道博士のアイリスは一応別人って事になってるから。



こういう三文芝居も必要になってくるよね。



世間の人たちからしたら、リザリーは魔道博士とは縁が無い認識だし。



そういう所が色々と面倒なんだよねぇ~…



「んじゃ、目的の品は取り返したし…帰りますか」


「そだねぇ」


「えーと…リザリーさん?ありがとね」


「ミリア魔道博士にそう言って貰えると光栄です」



呆然としてる残念坊ちゃんや研究者たちを尻目に俺らは研究室を出る。



リザリーはそのまま研究室に残ってたが、後から合流するでしょ。

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