17
「止まれ」
「ココから先には行かせんぞ」
研究所から出ると鉄柵の周りにいた警備兵達に囲まれた。
「…なんで?」
「大人しく盗んだ物を返せば痛い思いはしなくてすむ、さあ返せ」
「会話になってねぇよ」
「それに元々は私たちのだしね」
武器を構える警備兵を前にしても俺たちの態度が変わる事は当然ない。
やれやれ…と肩をすくめて無理やり進もうと一歩踏み出す。
「どうやら痛い目をみないと分からないようだな」
警備兵のリーダー格的な奴が俺の喉元に剣を突き付ける。
「どっちが?」
「が!?」
俺は素早く剣を避けるように斜め前に踏み出してリーダー格の男の顎に裏拳を叩き込む。
それを合図にマキナとショコラが動いた。
「ぐあ!!」
「ぐふぅ!?」
「ぶぺ!?」
あっと言う間に十数人の警備兵は地面に沈む。
時間にして二分かかったかな?ぐらい。
「弱い」
「弱いね」
「弱すぎ」
パンパンと手を払って鉄柵の外に出る。
「ふむ、警備兵ごときでは相手にならんか」
「だから俺らが雇われたんだろ?」
「そりゃそうだ」
鉄柵の外側の木の上に男が三人座っていた。
…アレ?来た時はいなかったよな?どこに隠れてたんだ?
「よっと」
俺たちが不思議に思いながら見てると木の上からジャンプして地面に普通に着地する。
「ココから先は行かせないぜ?」
「なんで?」
「雇い主が逃がすなって言ったからだ」
おお、こいつらはちゃんと会話になりそうだな。
だが困った事にこいつら中々強そうじゃないか…めんどくせぇ。
「ふーん…とりあえず死にたくなけりゃ退け」
俺はカチューシャとメガネを外して軽く威圧する。
「あ!てめえは!」
軽い威圧を意に介さずに真ん中の男は俺を指差す。
「「?知り合い?」」
「さあ…?」
心当たりが星の数ほどあるから顔見ただけじゃ全然思い出せねぇ。
「なんだ、知り合いか?」
「知り合いじゃねえ!だがこいつの顔を忘れた事は一度たりともねぇ…!」
男は怒ったような表情になり、さっきの俺の軽い威圧とは比べ物にならない威圧感を放つ。
「…誰?」
「てめ…!!」
俺の一言に男はキレたのか背中に背負ってた剣を抜いた。
「忘れたんなら思い出させてやる…!雑魚の分際で俺の邪魔をした事をなあ!!」
「うおっと、なんだ?情緒不安定か?」
男が急に叫びながら斬りかかってきたが、ひょいひょいと避ける。
マキナとショコラ、相手側の二人も状況について行けないようでただ俺らの動きを見てるだけだ。
…俺も状況について行けてないんだけど。
「お前の所為で…!お前さえ居なければ!」
「はぁ…また逆恨みか?」
よく分からんが、こういう手合いは逆恨み系統が多いんだよなぁ。
この前のコロシアムの時のお嬢さんもこんな感じだったし。
「うるせえ!お前さえ邪魔しなければ俺が魔王を仕留めれたんだ!」
「…ああ、あの時の」
今の言葉で思い出した。
こいつは魔王にトドメを刺そうとした勇者だか英雄じゃないか。
そして…別世界の俺を殺した張本人。
ん?なんでソレを知ってるかって?
……あー、えと…その………
…大いなる意思のお告げ…的な?
俺にも説明しきれないからコレで理解して。
マジで俺にもなんで知ってるか分からないんだって。
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