15

リザリーを攫うついでだったら研究資料も盗めるハズだ。



……あ、そう言えば賊の一人は迷わずにアンノウンボックスまで辿り着いてたな。



しかも開けられるハズの無いドアを開けて中に入ってきてたし。



もしかしてその後か?俺とマキナが部屋から離れるのを見計らって、中に侵入した…とか。



「…もしかしてパスが偽造されてた…?」


「…その可能性はあるわね」


「パス?」


「あの研究所のアンノウンボックスは程人君が入れるようにって特別にパスを使えるよう私達が改造したの」



ショコラの疑問にマキナが答えた。



「だがどこからその情報が漏れたんだ?この事を知ってるのはほぼいないぞ」


「盗撮されてた…とか?」


「あり得なくもないけど…」


「でも電波は研究所から外に漏れないのだから、設置した後にまたソレを直接回収しないといけないわよ?」



こいつらの研究所にはほとんど電磁バリアー的なジャミング装置がある。



指定されてる電波以外は研究所の外に飛ばないようになっているため、盗撮盗聴は録画録音のみだ。



しかも回収しないと内容が見聞きできないからリスクがデカイ。



なぜなら、研究所の見学は基本的にNGだから。



どうしても研究所に入る場合は身分証を提示し、本人と確認が取れてからじゃないと入れない。



その際に身分証はコピーして保管されるから怪しい行動を取ると直ぐにバレる。



もちろん事前のアポイントは取ってるのが前提で。



まあこの前の少年みたいに紹介状を持ってたりしたらアポなしでも入れるんだけど。



当然、誰からの紹介状かにもよる。



「過去二回以上訪れた人を洗い直して調べる必要があるわね」


「ちょっと電話して調べてもらうね」



マキナはケータイを取り出すとおそらく研究所…に連絡した。



行動が早いな、おい。



つーかあの研究所の職員にスパイが居るって可能性は考慮しないのか?



…それはありえないか。こいつらがふるいにかけて選んだ人達だし。



人を見る目はある…のか?



そこらへんは良く分からんが、あの研究員たちがリークしてメリットがあるとは思えん。



だってバレたら社会的に抹殺される可能性があるんだぜ?



そんなリスキーな事はしないだろ。



「とりあえず研究室に行ってみましょう」


「そだね」



リザリーの先導で一番奥の研究室に向かう。



「ココよ」


「失礼しまーす」



研究室に着くとノックもせずにショコラがいきなりドアを開ける。



「…この研究室は関係者以外は立ち入り禁止なんだけどなぁ」



さっき廊下で会った所長?が俺らを見て聞こえるように呟いた。



「ちょっと調べたい事がありまして」


「ち、ちちちょっと君達困るよ!見学するなら向こうの部屋に行ってもらわないと!」



どうやらこの研究室は病院の手術室みたいな造りになってるようだ。



部屋の斜め上がガラス張りになっていてその個室から研究室を見下ろせるみたいだな。



「ん?君はさっきスポンサーと一緒にいた…彼女さんじゃないかい?」



慌てて近づいて来た中年のハゲとは違って所長と名乗った男は落ち着いている。



「え?あ!そ、それでも許可は取って下さい!」


「何をそんなに慌てているのかしら?」


「盗んだ研究資料を基盤にしてるから後ろめたいんじゃね?」


「「「!!?」」」


「な、何を…!」



俺の言葉で一気に研究室に緊張が走った。



「でもまだちょーーっと根拠が無いんだよねぇ」


「だからその指南書…見せて欲しいな?」



マキナとショコラが笑いながら所長?に近づく。



「え?あ、はい。どうぞ」


「ありがと」


「所長!!」



所長は普通にマキナに渡し、中年のハゲが信じられない…!と言わんばかりに叫ぶ。



マキナは指南書を受け取ってパラパラ…と軽く内容を確認するようにページを捲った。



ショコラも横から覗き込むようにして一緒に確認している。

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