38
翌朝。
「…起きなさい!」
「ふげっ!?」
朝っぱらからいきなりリザリーにソファから叩き落とされた。
「…なんだよ…?」
「ソレはこっちのセリフよ、あんたのそのキスマークはなんなの?」
…やっぱりな、こうなると思ってたぜ。
「昨日のアレだよ、意趣返し的な?」
「私に嫉妬させようとしてワザと?」
「ん~、まあそうだ」
「そう、一体どこの馬の骨にやられたの?人の所有物に勝手に手を出したらどうなるか…身を持って教えてあげるわ」
リザリーはそう言いながらバッグから自分の武器である鞭を取り出す。
やっぱり昨日のあの事を覚えてないか…これで何回目だよ。
このやりとりも二桁は越えてると思うけど…
「嫉妬すんなよ…ってかどこの馬の骨でもお前には関係ないだろ」
「関係あるわ、幼馴染を悪女には取られたくないもの…あんただってそうでしょ?」
確かに、リザリーやマキナ、ショコラが悪い男に引っかかって取られるなんて…想像しただけでキレそうだ。
「確かにそうだけどさ」
「なら早く言いなさい、一体誰と寝たの?」
…どうしたものかね…そこら辺の女。とか言ったら手かがりを元に探しそうだし。
娼婦。って言ったら店まで乗り込みそう…逆転の発想で実は男。とか言ったら誤解しか生まない。
うーむ…ならココは前の前の前の前に使った手でいくか。
「お前だよ」
「え?」
「だ・か・ら、一緒に寝たのは、お前だけ」
「…ズルいわ」
俺の言葉にリザリーは拗ねたようにソッポ向く。
どうだ、お前が聞いてきたのは一緒に寝た相手…つまりは俺にキスマークを付けた相手じゃない。
これ以上は言及できまいて。
…いや、俺にキスマークを付けた相手はリザリーなんだけど。
つーかこんな朝っぱらからなんでこんな争い?してんだよ。
昼ドラでも無いのにドロドロしすぎやわ。
その後、リザリーが少年を起こして街に出向いた。
調停者曰く、あの少年を元の世界に帰すにはもう少し時間がかかるそうだ。
「うわー…馬が街中走ってる…え、車も?」
珍しそうに辺りをキョロキョロしながら歩く少年。
「まるでお上りさんだなー」
「観光客や旅人もいるからそこまで目立たないのは幸いね」
異世界から来た割にイベントがあまり無いのはおそらく俺の所為だろう。
普通なら異次元から来たんなら出身を聞かれたり、身分を怪しまれたりする。
それに最初はギルドの人に拾われたり、下手したら騎士団に拾われて牢屋行きになったりとか…な。
まあ現れる場所や時間帯にもよるけど。
いきなり王宮や宮殿、官邸や城に現れたらそこら中パニックだぜ。
残念ながらソコは俺なだけにそんなテンプレートなイベントは起こらない。
…とは言え、イベントの有無はこいつの主人公属性の強さに左右されるけども。
つーわけだが…こいつの主人公属性は無駄に結構強かったりする。
なんでって?そりゃね…びっくりだよ?
街中を一通り見て回った後に昼食を済ませたら、あの森にもう一度行ってみたい。とか言い出した。
そこまではまあ…うん、よくある事だとしよう。
理由が、もしかしたら何か分かるかもしれない。だからな。
問題はその後なんだよ。
あいつ森の中で勝手に行動した挙句、俺らとはぐれやがった。
しかも…また魔物に襲われてるし、それを任務中のギルドの人に助けられてるし…
まあ少年が逸れた辺りからギルドの人に助けられるまでの一部始終を、ずっと見てただけの俺もアレだったけどさ。
因みにリザリーは少年が現れた場所を調査中。
んで、それから少し経った今。
危険度Aの森の中心部で、俺とリザリーとこの国のギルドの人達と少年が鉢合わせ…と言う状況になる。
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