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「なぜギルドの人達がココに?」


「この森の地質調査だよ、昨日と今日の二日がかりで」



俺とリザリーはギルドの人達に聞かれないようにコソコソと話す。



「貴方達は何故こんな森にいるんだ?」



ギルドメンバーの一人が訝しむように質問してきた。



「なんでって…調査だよ」


「なに?なら俺たちと一緒…なのか?」


「地質調査じゃない、そっちが調査してるのはこの森に異常が起きつつあるからだろ?」



普段は森の奥から出てこない魔物が入口付近に居たり、普通なら森から出ない魔物達が森の外の観光客を襲ったり…



この国の邪神信仰団が最近になって頻繁に何かをやらかしてるのが原因らしいけど。



確か調停者から聞いた情報だとそんな感じだったな。



因みにこの国にも調停の使者が居る。



つーかこの世界の至る所に居るし。



魔物や人間、悪魔に天使、神獣、妖精、精霊…全ての種族に調停の使者は存在する。



「じゃあ何の調査だ?」


「…生態系に変化が無いか、だ」



俺は適当に思いついた事を言う。



「生態系だと?」


「ええ、そうよ…とある研究者から極秘裏に頼まれてたの」



おう、流石だ…ナイスアシスト。



「と言うわけだ、これ以上は秘密にしないと」


「貴方達を始末しないといけなくなる」



俺の言葉を繋げるようにリザリーが脅しをかける。



「…分かった、これ以上は…」


「危ない!!」



ギルドメンバーの一人が喋ってる最中に魔物が襲いかかってきた。



それもかなりレベルの高そうな奴が。



おそらくいつもは森の最深部辺りに居るんだろう、と思わせる雰囲気が出てる。



俺とリザリーはその魔物が近づいて来てるのをとっくに気づいていたため、余裕で攻撃を回避。



さっきまで喋っていたギルドメンバーの一人は少年が咄嗟に押し倒したからギリ回避。



他のギルドメンバーは何人か魔物の攻撃をモロに食らって吹っ飛んだ。



「グオオォォ!!」



魔物は雄叫びを上げて俺たちを威嚇する。



「な…!モルグレッドだと…!?何故こんな所に!?」



少年に押し倒された男が驚いたように魔物を見て呟く。



…良く分からんがやっぱり森の最深部に棲息してるらしいな。



「だが所詮は一体…やるか!」



男は立ち上がると腰に差してたサーベルを抜く。



あーあ、バカだなぁ…あと三体近づいて来てるってのに…



気配やその他で気づかないのか?リザリーは気づいてるっぽいけど。



「ブオオォ!!」


「ゲッゲッゲー!!」


「どうする?」


「とりあえず観察しましょう」



俺とリザリーは、最初の魔物が威嚇した時に気配を絶って既に木の上に避難していた。



今は木の上で少年と男を観察中。



この木の枝は地面から7mぐらい離れてるから魔物達に気づかれる事は無いだろ。



別にあれぐらいのレベルなら50体現れても倒せるんだけど…めんどくさい。



危険区域特A難易度指定(略称危険度特A)の森の最深部に棲息してるであろう魔物4体vsギルドメンバー2人+少年。



この戦いのキーマンはあの少年だな。



果たしてどれぐらいの力を持っているのか?



チートなのか、一般なのか普通なのか…どっちかな。




因みに一般は一般人と同じ力で、普通は小説の主人公とかみたいに一般人より強い力の事ね。



チートは説明しなくても分かるでしょ。



さてさて…俺らは文字通り高みの見物をきめこむとしますか。



あの時はリザリーが助けたおかげで分からなかったんだから。



「うわあああ!」


「くっ!」


「この数は…キツイぞ…!」



少年は魔物から逃げ回り、ギルドメンバーは2人で3体の魔物を相手にしている。



「うーん、運動能力はありそうだな」


「ええ、あの魔物から逃げ切れてるのが証拠ね」



イノシシに近く、馬みたいな特徴もある…そんな魔物から脚力のみで逃げ切るのは一般人には無理だ。

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