25
「あのすみません、お客さんが訪ねて来てますけど…お通ししますか?」
ちょうど色々と一段落した所でヒョコっと女性研究員が顔を出した。
因みに、この研究所に専用の受付嬢は居ない。
なぜなら、ここで働く女性研究員達が代わる代わる受付嬢をしてるから。
俺は流石に顔パスで入れるが…本来なら受付嬢の許可を得ないと、研究所内には入れない決まりとなっている。
その許可を出すのが総責任者のマキナとリザリー+総責任者補佐のエルー。
そしてエルーがいつの間にか総責任者補佐になってる不思議。
まあ軍に属してるから責任者になるのは色々とアレなんだろう。
…ショコラやハルト、エリア達は軍に属していても責任者らしいけど。
………んん?まてよ、この流れでいくと……もしかしてフラグが立ってる系?
「今は無理ね、時間を置いてまた出直すように。と伝えておいて」
「分かりまし…あ!」
「すまん、邪魔するぞ」
部屋から出て行こうとした女性研究員の後ろから男が現れた。
やっぱりかよ、だからタイミングが良すぎるんだって!
俺は速攻で入口から死角になっているソファーの下に転がる。
「入室許可を出した覚えは無いのだけれど?」
「無断入室は不法侵入で犯罪だよ?」
「…その葉っぱを研究材料として提供してやったんだ、多少は大目に見てくれ」
男はリザリーとマキナの責めるような言葉に渋々そう返した。
「何しにここへ?」
「状況が変わったんだ、あの葉っぱを今すぐ返してくれ」
「…理由次第ね」
「ウチのギルドメンバーが瀕死の重傷を負って運ばれたそうだ、状況は一刻を争うらしい」
男は焦ったようにウロウロしながら理由を話す。
「頼む!その葉っぱを返してくれ!」
「どうする?せっかくの研究材料だよ?」
「……いいわ」
「いいのか?」
「ええ、人の命がかかってるならしょうがないでしょ?それに」
リザリーは一旦言葉を切って俺の所まで歩いて来る。
「こいつがいればソレの情報には不足しないもの…そうでしょ?」
寝っころがってる俺を指差してマキナとエルーに同意を求めた。
「そうだね」
「確かに」
「と言うわけでコレは持って行って大丈夫よ、早くこの部屋から出てちょうだい」
リザリーは追い出すように男に葉っぱを渡し、部屋を出るように促す。
「…?そこに誰か居るのか?」
「ええ、でも貴方にはあまり関係のない人よ」
「とりあえず目的は達成したんだから、メンバーの元に行ってあげて」
「…手遅れにならないといいな」
男から俺を隠すように三人はソファーの所に移動する。
…見つかったらまた面倒な事になりそうだしな。
「…じゃあすまないがこの葉っぱはありがたく使わせてもらう」
腑に落ちなそうな雰囲気だったがドアをバタン、と閉めて部屋から出て行った。
…実は俺、ソファーの隙間から一部始終を見てたってば。
「持って行かせて良かったのか?」
「ええ、これから調べようとした事はあんたから聞いたから問題ないわ」
…あれ?そういえば、リザリー達はあの葉っぱをいつ手に入れたんだ?
「あの葉っぱって二週間前から持ってたのか?」
「ううん、渡されたのはつい最近だよ」
「確か…一昨日だったか」
「よく枯れなかったな」
葉っぱだけの状態での保存はなかなか難しいのに。
「保存方法については色々と別の所で研究してたみたい」
「ずっと冷気に晒しておけば大丈夫な事が分かったんだって」
「へえー…じゃああのポリ袋の中にも液体窒素的なのが入ってたのか?」
「そうだな、液体窒素ほど温度は低くないが」
この世界の技術も進歩してきてるなぁ。
…とはいえ今の所分かってるのは保存方法だけっぽいけど。
「じゃあこの葉っぱについて色々と聞かせてもらおうかしら」
「へいへい…ちゃんとメモれよ」
女性研究員を元の場所に戻るよう指示をだして、リザリー達がソファーに座りメモの準備が完了するのを待ってから説明を始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます