24
「…コレだ」
エルーがポリ袋の中から取り出したのは楕円形で2mはある葉っぱだった。
「ああ、それね」
「分かるの?」
「まあな」
俺があの男にあげた魔界の植物の葉っぱじゃねえかよ。
「なんでもこの葉っぱを身体に巻けば傷が治るそうよ」
「骨折ぐらいなら簡単に治るんだってさ」
「だが…いかんせん扱いが難しいらしいな」
扱いが難しい?ただ身体に巻くだけなのに?
「程人なら、コレがナニか分かると思ってたけど…」
「ビンゴだったね」
「…まさか、そのためだけに急に呼び出したのか?」
「ええ、そうよ?悪い?」
リザリーは全く悪びれもせずに答えた。
…いつもの事ではあるんだが、今日に限っては呼ぶ必要はなかったんじゃないか?
その葉っぱがどんな効果か知ってるんだろ?
何も知らないんならともかくさ。
…あーあ…今更か、もう諦めた。
「でもこの葉っぱ、切れないんだよね」
「あの前ギルドマスターが持ち帰ったのは全部で4枚で、内2枚は半分に切られてたらしいな」
「コレ、どうやって切るか分かる?」
エルーが手元の資料?を見ながら俺に軽く説明して、リザリーが葉っぱを持って聞いてきた。
「普通に切れるだろ」
「…いえ、ハサミで切ったら直ぐに枯れたそうよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃないわ、そう聞いたもの」
ハサミで切ったら枯れた?んなわけあるか。
この葉っぱ、柔らかくてしなやかな割にハサミごときで切れる硬度じゃねえし。
「ごめんなさい、ハサミと言うのは言葉の綾よ」
俺がそう説明?するとリザリーは素直に謝った。
「確か…ハサミでも包丁でも切れないから、兵士に剣で斬ってもらったら即枯れたって聞いたよ?」
「まあコレを切り分けるのには技術がいるからな、そこら辺の奴らが手を出せるシロモノじゃねえよ」
ココで言うそこら辺ってのは実力の無い下っ端の事ね。
「詳しいのね」
「は?だってソレ、俺があいつに渡した物だし」
「「「は?」」」
俺の言葉を聞いた三人の声が重なる。
「えーと…もう一度言ってくれる?」
マキナが困惑しながら聞き返してきた。
「だから、俺が魔界でわざわざ採って、あの男にあげたんだよ」
「はあ!?」「「え!?」」
三人は驚愕しながら俺と葉っぱを交互に見る。
「程人君が…あの前ギルドマスターにあげたの?」
「逆にあんな奴が自力で採れると思うか?」
「と言うか…あんたも魔界に行ってたの?」
「おう、ちょっと野暮用でな」
ようやく衝撃が収まってきたのか、リザリーとマキナがソファーの後ろから俺の両肩をガシッと掴む。
「…なんだ?」
「根掘り葉堀り聞かせてもらうわよ?」
「一人だけ抜け駆けなんてズルいよ!全部吐いてもらうからね!」
「…諦めろ、俺も聞きたいし」
俺は助けを求めるようにエルーに視線を送るが、期待を裏切られた。
……………………説明中………………………
面倒だから説明は割愛で。
本来の目的だった剣作り以外を説明する事30分。
「そう…それが真実だったのね」
「うーん、前ギルドマスターから聞いた話と全然違うね」
どうやら前以て魔界に行った時の話は聞いてたらしく、話が食い違う。と言われた。
ぶっちゃけ、俺は本当の事しか話してないからそんな事言われてもな。
まあとりあえず俺の方を信じてくれたみたいだ。
「それにしても…あんたの話はアレね」
「うん、受ける印象が全く違うよね」
なんか前ギルドマスターは俺に助けられた事をえらく強調して、美化してた…との事。
因みに俺の事は魔界で会った見知らぬ人間。と説明してたそうだ。
「あんたの説明じゃ良い奴なのか自分勝手な奴なのか分からないわ」
「結果だけ聞くと聖人?と思うような善人なんだけど…」
「その過程がな、結局は自分の事しか考えてない行動が運良く…って感じだ」
でもなんか納得した。と三人は腑に落ちたように頷いていた。
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