06

「すっげぇ…!」


「ふむ、ちゃんと手入れはしてるみたいだ」



お互いに剣を抜いてマジマジと見る。



「父さん、コレ…凄い業物じゃない?」


「ああ、俺が作った中でも最高傑作の内の一本だからな…名は無名だ」


「名前が無名…なんかかっこいい!」



そうか?良く分からんが悪い気はしないな。



「ねえ…お願いがあるんだけど…」


「流石にその剣はやれんぞ」


「いや、俺にはソレが相棒だからいいよ…今回だけ使わせてくれない?」


「別にいいけど?じゃあ俺は久しぶりにコレか」



ライナとお喋りしてる間に22:00が過ぎた。



「アレか…」


「結構な数来てるね…マジで国軍だ」


「いまさら国を敵に回す事にびびったのか?」


「そんなわけないでしょ…妹のためなら、俺はたとえ国を敵に回そうとも討ち破ってみせる!」



ライナはまさに主人公、なセリフを叫び、国軍に向かって走って行く。



「んじゃ、俺も行きますか…」



ライナに続いて国軍に向かって歩く。



「…お前ら誰だ?」



国軍の一番前にいる餓鬼が、近づいて来た俺とライナに問う。



「ミィナの兄だ!今退けば見逃してやる!だから撤退の指示を…!」


「ふん、俺の最後の慈悲を無下にするか…あの女…!必ず捕まえて俺の前で跪かせてやる!」



ライナの言葉が聞こえてないのか、それとも無視したのか分からんが…



会話が噛み合ってなかった。



「もう一度だけ言う!今撤退すれば間に合う、だから…!」


「この人数相手に見逃してやる…だって?あの女同様、お前も頭悪いのか?」


「ライナ、話し合いは無理そうだぜ?これ以上家に近づかれる前に片付けねえと」


「そっちは兄…じゃあ、お前は誰だ?」



餓鬼は偉そうに俺を見下した感じで聞く。



「俺はあの子の父親だよ…お前偉そうにしてるけどさ、その親の七光りも今日までだぜ?」


「なに?父親だと…?父親など戸籍上だけの存在だったんじゃないか?それに…」



なーんか近頃の子供は会話のキャッチボールがし辛い。



「俺の逆鱗に触れたんだ…たとえ国王だろうが責任は取って貰わないとな」


「どう見てもその隣の奴と変わらない歳だろ!」


「ライナ、先手必勝」



俺が短く一言告げると、直ぐに餓鬼の後ろにいる臨戦態勢を取ってる兵士が数人倒れる。



「なに!?ふ、この1000の兵に勝てるとでも思ってるのか!行け!我が兵達よ!」



たかだか1000ごときで勝ち誇られても…



この程度の兵じゃ人海戦術とは呼べないぜ?



ライナが次々と兵を倒して進む中、餓鬼は後ろの方に逃げていた。



ま、ムカつくが餓鬼は生かして置いても問題は無いだろ。



まだ子供なんだし。



どうせ責任は現国王に取ってもらうつもりだからな。



ライナがどんどん敵兵を倒すのを見つつ、俺もアクションに移す。



「我、風の精にねが…!?」


「魔術師諸君、相手は俺だぜ?」



詠唱中の魔術師の喉元を剣で突き刺す。



ライナは甘いからただ気絶させてるだけだろうが、俺は違う。



「な…!?」


「ぎゃ!」


「う…うわぁ!…ぐげっ!」



詠唱をしようがしまいが魔術師を片っ端から殺す。



まあ片っ端と言ってもこの中には15人ほどしかいないだろうけど。



「終わりか…」



俺は10分も経たない間に魔術師の格好をしてる奴らを全員倒した。



あっちの方はライナが一人で奮戦してるようだ。



俺の所にくる奴は皆殺しにしてるけどな。



「俺も行くか」



ライナを相手にしてる奴らの首を後ろから撥ね飛ばしていく。



「な…!?」


「雑魚共はアレだ…仕える相手を間違えたな」


「おのれ!」


「スキだらけだ!」



俺に意識が向けばライナが、ライナに意識が向けば俺が、敵兵のスキを狙って攻撃する。



これぞ親子のチームプレーだぜ。



30分もすれば1000人の国軍は5人まで減った。



その5人も三分でお陀仏。



残るは国軍を率いてた餓鬼のみ。



「う…うそだ…!こんな事が…」


「父さん、こいつどうする?」


「ほっとけ、それより帰るぞ…もう眠い」


「確かに…じゃあ帰ろうか」



ライナと俺は別荘に向かって歩き…後始末をしてない事に気づく。



「あー…ライナ、俺は後始末するから先に帰ってろ」


「え?」


「なんだ?お前がやってくれるのか?」


「父さん、お休み!」



ライナは聞くや否やダッシュで別荘へ戻った。

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