05
「ホントはヤだよ!私だってみんなと一緒にこうやって暮らしたいよ…!」
真ん中の子はボロボロ泣きながら思いの丈を吐き出す。
…あれ?なんかこの状況…どっかで…?
あ、この前読んだ小説の内容と似てる!
新作の何作品かがこんな感じの内容だった!
まさか…俺がそんな状況を体験するなんて…
人生何が起きるか分からんな。
「でも…!もう待てないって…!今日の22時までに了承しないと、最後の手段に出るって…!」
「最後の手段?」
「…国の軍を使ってこの家を攻撃するって…!だからわたし…!」
はぁ…そのご子息も俺と同じ小説を読んでたのか?
それとも素でそれなのか?どちらにせよ…小説の内容に沿ったキャラだな、そいつ。
顔が見てみてぇ。
「だってよ、もう子供同士の問題じゃ収まりが着かねえな」
「はい」
「こういう時こそ、私たち大人の出番ですね」
待ってましたと言わんばかりに、メイド達はふんわりキラキラの柔らかい笑顔で立ち上がった。
「それなら俺にも任せてほしいな」
リビングのドアの方から声がしたため、振り向くとそこにはライナがドアに背もたれていた。
「ただいま~、なんか久しぶりに帰ってきたら面白い事になってんじゃん?俺も混ぜてよ」
…この主人公属性が…!
今完全に俺が主人公になる所だっただろ!
横からかっさらって行くな。
「友達はいいのか?」
「ん~…オーストラリアで追い詰めるまでいったんだけどさ、ギリギリに逃がしちまった」
「国外にか?」
「うん、そう言うわけで情報収集がてら今帰ってきた…ってわけ」
つくづくタイミングが良いなこの主人公属性は。
…そうでなきゃ、拾った甲斐が無いというものだけど。
「…ライナ兄、どこから居たの?」
「父さんがミィナに抱きついた辺りから…で、いつまで抱きついてるの…?」
「羨ましいだろ?柔らかくてぷにぷにしてて抱き心地最高」
「おとーさんの腕の中…なんだか安心する…」
真ん中の子も嫌がってないため俺はそのまましばらく抱く事にした。
「羨ましいけど、その図なんか危ないよ?…ミィナ、こっちおいでー」
「やー」
「お兄ちゃんより俺の方が良いんだと」
「くっそー!!」
「ライナ兄抱っこー」
「…私も」
ライナが真ん中の子に拒否られて地団駄を踏んでると、下の子達がライナに駆け寄った。
「そーら!高い高ーい!」
「きゃははは!もっともっとー!」
「順番な、次はリィンだ…それー!」
さっきまでのシリアスな雰囲気が一変、いつもと変わらない雰囲気になる。
「お、もうこんな時間か…お前らもう寝ろ」
「「「えー!」」」
時計を見ると時刻は21:45。
だいぶ遅い時間帯だ。
「明日学校ですからね…さあ、寝室へ行きましょう」
「でも…!」
「ハリュー、後の事はライナと私達に任せて明日の学校に備えて、ね?」
「…分かった、ライナ兄…負けないで」
真ん中の子とキリ、ライナとメイド長だけリビングに残り、後は渋々寝室へ向かう。
「さて、お前も安心して寝ていいぜ」
「…大丈夫…?」
「ははっ、俺だぜ?こんな国一つぐらい敵に回した所で潰せるって」
「…おとーさんだったらホントにできそう」
「うん…ミィナ、父さんの強さはお前も手合わせしてるから分かるだろ?心配するだけ無駄だよ」
ライナが真ん中の子の手を取って寝室へ連れて行く。
「キリ、お前も悪魔祓いで疲れてるだろ?今回は休め」
「うーん…残念だけど、次回頑張る事にするね」
「ついでに子供達を寝かしつけてくれるか?」
「オッケー、子守唄でも歌っとくよん」
流石にその歳ともなると直ぐに理解してくれるから助かるぜ。
「んじゃ、あと10分…作戦会議といきますか」
先に戻ってきたライナに大まかに作戦を説明する。
「分かった、じゃあ俺は兵士狙いだな」
「生殺はお前に任せる」
「なるべくなら話し合いで終わらせたいけど」
ライナは甘い事を呟いて別荘の外で待機した。
「お待たせしました」
「おう、じゃ…俺らは5分で作戦会議だな」
メイド7人+俺で作戦について話し合う。
4分で結論が出た。
メイド達は別荘の周りに魔札で多重結界を張り、敵が万が一中に侵入してきた時の排除。
俺は外でライナと共に大暴れ。
メイド達は顔が割れると買い出しとか、色々支障を来しそうだから専守防衛に専念してもらう。
因みに多重結界はかなり高度なやつを張る事にした。
全属性+完全防音の結界。
さらに別荘の周り上下左右を内側から張って破れ難くする。
22:00まで残り3分。
俺らは行動に移す。
「あ、そうだ…父さん、この剣ヤバイね」
「だろ?めっちゃ使えるぜ」
「今父さんが腰に差してる剣には負けるだろうけどね」
「へぇ…これの真価が分かるのか?」
俺はライナから剣を受け取り、無名を渡した。
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