44

俺は街中を駆け巡り、魔獣を見ると片っ端から狩っていく。



ソレを続けてる内に、一時間もしないで魔獣共が俺に集まってくるようになった。



全戦力をつぎ込んでいるのか数が尋常じゃない。



俺は剣と斧を手に無双せんがごとく、魔獣を斬り伏せた。



「はぁ…ため息が止まらねえ」



右手の剣を一回振る度に最低でも一匹以上は仕留めてる。



それは左手の斧も同じ事。



つまりは両手一振りで二匹はいなくなる計算だ。



それを何回、何十回と振っている。



殺せど殺せど一向に減らない魔獣。



唯一の救いは返り血さえも冥界に還る、という事ぐらいだろうか。



「まだまだいっぱいいるなぁ」



乱舞のように両手の武器を振り回しながら敵の計算をする。



…今でだいたい201…202…あ、205、ぐらいだろ?



んで、周りにいるのがだいたい200弱。



俺の部隊と同じぐらいの数だ。



陽が登る頃に攻めてきて、今は陽が沈み始めてる。



全然減らねぇな…この手応えは確実に倒してるハズ。



冥界に住んでる魔獣にも限りがある。



なのになんだこの数は…?



「漸く隙見っけ!」


「アホか」



人間が魔獣の群れから飛び出して来た。



俺の首を狙って振ってきたサーベルをヒョイと避ける。



「うわお!!」



カウンターで後ろ回し蹴りを腹に減り込ませてどっかに吹っ飛ばした。



なんだ?今の攻撃…明らかに魔獣側の人間だよな?



「くっそー、人間の持久力じゃねーよ!」


「人間舐めんなよ」



まあ俺は人間じゃないんだが。



アレが黒幕か?んじゃあ一気に片付ける!



剣と斧の握る力を強くして俺は今までより速く振る。



今までは最小限の体力消費にするために受身で敵の攻撃を避けつつカウンター、的な省エネな戦闘方法だった。



終わりの見えない戦いでムダな体力消費を避けるために。



だが黒幕が見えたからには体力温存なんて終わりだ。



俺の周りにいる魔獣は全てぶっ殺す!!



約10分で200弱の魔獣を全て冥界へ還した。



「…ありえねぇ…化け物かよ、あんた」


「そう見えるか?」



目の前の少年?は首を緩やかに横に振る。



「いくら人は見た目に依らないからって…コレは無いだろ…」


「喋りたいのはやまやまなんだが…時間が無いから終わりな」



俺は素早く少年?との距離を詰めて右手に持ち替えた斧を斜めに斬り上げた。



「うわあ!あんた見た目とのギャップが凄すぎ!過去未来現在で右に出る奴は居ないんじゃないか!?」



無駄口を叩きながらもサーベルで受け流す。



…ほう、中々やりおる。



「そんなに褒めんなよ…照れるじゃねえか」


「嘘つけ!」



斧を振り上げた状態のまま左手の剣で胴を狙って突くも、捻って避けられた。



ギイン!ギイン!と鉄同士がぶつかる音が辺りに響く。



「君、やるなぁ…」


「あんた程でも無い…よっと!」



攻戦一方とは言え全然攻撃が当たらない。



こいつも俺と同じく下から這い上がって来たタイプか?



「その動きを手に入れるのは、地獄みたいだったか?」


「!!?あんた…何者だ!?」


「いやいや、似たもの同士って事だよ」



明らかに少年?の顔色が変わった。



「俺の……何を知っている!!」


「何も知らねぇよ」



怒ったのか、サーベルを握る手に力が増したのが分かる。



だって弾けなくなったし。



相変わらず俺が攻戦一方ではあるが、少年?は何かを狙ってるようだ。



「そこだ!!」



少年?は勝ち誇ったかのように叫ぶ。



どうやら俺の後ろからナニカが攻撃してきたようだ。



なんか後ろから風を切る音が聞こえるから間違いないかも。



とっさに右回りで半回転して、ついでに少年?を後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす。



コレは1/2の確率だ。



俺は右に避けた、もしかしたら左に避けた方が当たらなかったかもしれない。



ただ、その場から少しでも離れかった。



「ぐ…!うそだろ!?」



どうやら避けきれたらしい。



俺のすぐ右にナニカが通り過ぎていく。



「また魔獣かよ」



気配も無く後ろから攻撃してきたのは魔獣だった。



一匹だけしかいない所を見ると、これ以上は増えないらしいな。



俺は斧で横一閃、ズレた上半身を剣で斜め一閃にして魔獣を冥界に還す。



「あんた…マジで何者だよ…」


「アリア!見つけたぞ!」



少年?が腹を抑えて呻きながら呟くと、また新しい少年が現れた。



なんだ?仲間か?ガキ共はつるむからなー、めんどくせぇ。

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