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「うわ~…めんどくせえ」
100はいそうだな。
町民をある一箇所に非難させるためには時間をかせがないといけない…が。
俺が気づかなかったって事はもしかしたら魔獣は別の所にもいるかもしれない。
「もったいねぇけど仕方ないか」
俺はポーチからスタングレネードを二つ取り出して一つのピンを抜いた。
魔獣達に向かって走りながら斜め上に投げる。
目を閉じ、耳を塞いで爆発に備え、もう一個のピンを抜く。
それは真上に投げてポーチから魔札を取り出す。
今度は耳を塞ぐだけで、魔獣の周りに魔札を地面にセット。
二個めのスタングレネードが爆発した30秒後、セットが完了した。
「15枚も使うとは…プロミネンスタワー」
魔術名を唱えると魔獣達が炎の柱に包まれる。
さて…これで今いる分は退治した、だがこんなもんじゃ無いはずだ。
俺は女性二人を肩に担いで派遣中隊が駐在してる建物に向かう。
「魔獣が現れたぞ、今すぐ避難勧告だ」
「なに!?」
「本当か!?」
「さっさとしろ、この役立たず共が」
俺はただ驚くだけで動こうとしない隊員に毒づく。
「いきなり来て何様のつもりだよ、お前!」
中隊の中でもまだ若い奴が俺の前に立った。
「とりあえずお前らよりは強いし、お前らよりも偉い」
「はぁ!?お前みたいな一般人がか?こりゃ傑作だ!」
目の前の奴が笑うと隊員達も笑い始める。
「あの!」
俺が剣に手をかけると、今連れてきた女性が声を上げた。
「この人が!一人ででっかい魔物を倒したのを私、見ました!」
「それに!あっという間に100体はいそうな魔獣の群れも倒してました!」
ははは…は?と隊員達の笑いが止まり、顔が引きつる。
「嘘…だろ…?」
「本当です!私たちがこの目で…!」
「…魔物の群れを倒した時は、光と音が凄くて見えなかったけど…」
「ソレが収まってくると魔物の群れが燃えて消えていきました」
女性たちは必死で俺を庇おうとしている。
「信じる信じないはお前らの判断に任せるが、魔獣が攻めて来てるのは本当だ」
これ以上は時間の無駄だな…と建物を出ると遠くの方で悲鳴が聞こえた。
マジかよ、なんで今回は感知出来ねえんだ?
俺のスーパーな直勘も働かないみたいだし…
なんかのカラクリでも仕掛けられてんのか?
悲鳴の下へ走ると魔獣が二体、住民を襲っている。
異形の猿みたいのと、凶暴なパンダみたいなのが。
「はぁー…んっとに、めんどくせえ」
そのまま魔獣との距離を詰め、猿?の体を剣で横一閃に斬り裂く。
「きゃああ!」
悲鳴を聞いて見ると、少し離れた所であと一体の魔獣が尻餅を着いてる少女に襲いかかっていた。
「させるか!」
俺は横に振り抜いた剣をそのまま投げる。
勢いよく魔獣の頭に突き刺さり横に倒れた。
へっ、俺の前で女に手を出せると思うなよ。
「っせい」
「ぶぎゃっ!!?」
剣を投げた態勢をさらに回転させて、横一閃に斬り裂いた魔獣の頭に後ろ回し蹴りを食らわせる。
手を振り上げてた所を見るとどうやら後ろから攻撃しようとしてたらしい。
魔獣の生命力はホントめんどくさいねぇ。
蹴りとばした魔獣は運の良い事に…あと一体の魔獣の下へ飛んでいった。
俺は走って追いかけ、剣が頭に刺さってるにも関わらず立ち上がった魔獣から剣を引き抜く。
んでもって横に真っ二つ…縦にも真っ二つ。
上半身だけの魔獣も縦に真っ二つにした。
「はあ~あ…大丈夫か?」
軽くあくびをしながら剣を鞘に納めて少女に手を差し伸べる。
「あ、ありがとうございます…」
「怪我は無さそうだな」
男と違って女の子の傷跡は一生を左右するらしいからな、無傷でよかった。
はたから見た今の俺って超良い奴じゃね?
「あんた、やるねえ!」
「凄いぞ!」
「うっせぇよ、サッサと避難しやがれ」
俺は女の子を立ち上がらせるとそこらの住民に向かって背中を押す。
「え…?」
「魔獣はまだまだ来る、数が増えれば庇いきれんぞ」
「そ、そうだ!早く避難しないと!」
近くにいた男が少女の手を取って駆け出した。
それに倣うかのように他の住民達も同じ方向へと走って行く。
魔獣による侵攻か…いいねぇ、この前の事を思い出すわー。
あの時は攻める立場だった、が今は180°違う守る立場だ。
だがやる事は攻めの一手のみ!めんどいけど殺しまくってやるぜ!
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