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どうやら今日で一週間目って言ってたが…怪我人続出らしい。



エルーが隊長としてコッチに派遣されたのが昨日。



その前からそいつらは派遣されてたって…本気でバカだろ。



普通は隊長と中隊は一緒に派遣させるんだぜ?



それとも元々の隊長が使えんから降ろしたのか?



エルーもかなりめんどくさい状況で送られたんだな…



この戦力で一日でも善戦できたのが凄え。



俺だったらこいつら引っ込めて一人で戦うけど。



つーわけで、それをそのまま伝えました。



『あんたらじゃ足手まといにしかならんから、住民を避難させて盾にでもなってろ』と。



当然、非難ごうごう…いきなり来た見た目一般人にそう言われて怒らないわけがない。



だから俺は今、外にいる。



街の…外に。



魔獣の動向を探るためにね。



別に居づらくなったわけじゃないよ?



あんな奴らのさえずりなんて気にするだけ無駄だし。



女の子達だったら居づらくなるかもしれんけど、野郎共だと軽く殺意が湧く程度。



奴らを殺さないために、出てきた。



逃げて来た…と言っても間違いではない。



あのまま居て俺の精神力が保つとは到底思えないからな。



そんなこんなで暗くなってからも街の外をグルグル回りながら遠くを見るが、魔獣が見当たらない。



攻めてきてる以上は冥界に還るってのはあり得ない…



だが街の周りには見当たらない…



街の中にもいなかった。



結構遠くから攻めて来てるのか?



…とりあえず街の中に戻るか。



一応警戒はしたまま宿に戻り休息を取る。



そして、何事も無いまま陽が登り始めた。


何も無かったなー、とベッドから下りて軽くストレッチと運動をする。



「「キャー!!!」」



運動も終わりに差し掛かった所で外から悲鳴が聞こえた。



急いで外に出ると、街の入口に魔獣の姿が。



一匹だけだが…普通よりもデカイ。



身長が10mはあるぞ。



まあそれでも魔獣の中では中の中ぐらいの大きさなんだけどな。



デカイ奴は50mぐらいあるし。



いやあ~、アレはデカかったよ…しかも首をぶった切っても死ななかった。



イラついたから最終的にダルマ落としの要領で足から頭まで細切れにしてやったぜ。



デカイとその分どうしても動きが鈍くなる。



だから俺の目の前にいるのも普通のに比べたら鈍いはず……あれ?



そう言えば、なんでこいつ俺の警戒網に引っかかってないんだ?



冥界から現れたとしてもこっから魔獣までの距離は約200mちょい。



引っかかるハズなんだが…



疑問には思ったが、とりあえず行動に移した。



俺は中型の魔獣に向かって走り出す。



距離が近づいてきた所で魔獣が俺に気づいた。



「ぐもぉぉぉ!!!」



吠えながら手を振り下ろしてくる。



「おっと」



走る速度を落としブレーキをかけて手の着地点の手前で止まった。



魔獣の振り下ろした手は地面に減り込み、小さな石が俺に向かって飛んでくる。



剣を抜いて飛んできた小石を全て弾いて魔獣の手に乗った。



そのまま二の腕に移動し腕を切り落とす。



「ぐもぉ!!!」



魔獣は痛みでなのか吠えながら手を振り上げた。



あ、俺は二の腕に剣を刺して落とされないように支えにしてるよ?



ちょうど頭の真上にきた時に剣を引き抜き二の腕から降りて、そのまま頭頂部に剣を突き刺した。



一旦引き抜いて肩に移動し、剣を鞘に納め…素早い抜刀で魔獣の首を斬り飛ばす。



これで死ねば楽なんだけど…



続いて血が噴き出す前に右肩?、左肩?を切り落として魔獣から地面に降りた。



そして右脚、左脚も斬って魔獣からダッシュで離れる。



だいだい俺の剣の斬れ味だと、切って15秒は血が出ない。



返り血を浴びないためにも急いで離れないと。



戦って一分もしない内に魔獣はダルマになって倒れた。



え?死んだの?マジで?…中型脆いな、おい。



まだ生きてると思い臨戦態勢を取ってたが、魔獣の姿が消えた。



魔獣は魔物と違って死んだら元の世界…冥界へと還る仕組みになっている。



なぜかは知らんが、調停者は輪廻がうんたらとか言ってたな。



「さて…魔獣が動き出したし……は?」



俺は一旦踵を返し、宿に戻ろうとした。



そこでさっき悲鳴を上げた女性達が俺を見て震えてる事に気づく。



いや、正確には俺の後ろ……魔獣の群れが現れた。

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