29
「みんな席に着けー、授業を始めるぞー」
「起立、礼」
教師が教室に入ってくると一人の生徒が号令をかけた。
「よし、じゃあ武器の作り方の実践といこうか」
箱を机に置くと中からこぶし大の石を取り出す。
「コレは去年、理事長があるコネで手に入れた魔鉱石と呼ばれる物でこの世界に100個しか存在しないらしい」
「…っ!?」
俺は教師が持ってる石を見た瞬間リザリーの胸ぐらを掴んだ。
「お前、アレ…もしかして」
「ええ、そうよ。見つけるのに相当苦労したわ…まさかあんな所に封印してあるなんてね」
「マキナ、まさかお前も…?」
「えーとぉ…………うん」
ギッと睨んだ俺から目を逸らして視線を泳がせた後に少し頷く。
俺はリザリーの胸ぐらから手を離して深呼吸し、無理やり心を落ち着かせる。
「えーと、何か揉め事かな?」
「ああ、いや…虫が付いていたので取っただけ」
教師が困惑したような顔で聞いて来たため、笑って誤魔化して教室を出る。
「ちょっと、虫を持ってるなら手を洗ってよ」
「そうよ、ちゃんと逃がしなさい」
マキナ達は小芝居を打って教室を出て俺の後に付いてきた。
教室を出て直ぐ早足で屋上に出るドアの前に向かう。
リザリー達も早足で付いてくるのを横目で確認しつつ目的地に着いた所で、リザリーの顔の近くの壁を叩く。
「お前さ、なんで俺がアレを隠してたか分からないわけじゃないだろ!?」
「……ええ」
「マキナもだ!あの研究を知ってるんなら理由ぐらい分かるだろ?」
「…うん」
二人はうな垂れながら返事をする。
「バニさん!何してるんですか!」
後を追ってきたのかクレインが階段を駆け上って来た。
「クレインか…悪いが教室に戻ってくれ、お前が口を挟める問題じゃない」
俺はクレインを一瞥した後にまたリザリーに目線を向ける。
「何故アレを探した?…いや、探すのはいい、その件は俺が悪かったとしよう…だがなぜアレを渡した?」
「なんの話をしてるんですか?」
「お前は戻ってろ」
話に割り込んでこようとするクレインに俺は冷たい声で返した。
「そんな言い方って…!私だって、何か力になれるかもしれないじゃないですか!」
「はあ…まあいいさ、聞けば分かるだろ」
食らいつくような、引かないぞ!と言う姿勢にめんどくさくなった俺はあっさり折れることに。
「コイツら、俺が隠してた研究結果のアレを盗んだ上に他者に渡しやがった」
封印までして隠してたんだから盗まれた。の表現であってるはずだ。
リザリー達も言い返して来ないし。
「まあ俺が本気で隠さなかったのも悪いのかもしれんが…」
「盗んだ…?姉さん達が?」
クレインは動揺してリザリー達を見た。
「別に盗んだのは問題じゃない、こいつらになら何を盗られても許してやるさ…俺が怒ってるのはソレを他者に渡した事だ」
「他者に渡した…?あ!もしかしてあの魔鉱石の事ですか! ?」
流石、ココまでの情報提示で察する事ができるのか。
「アレは俺の初期の研究で、アレを100…正確には111個作るのに20人の犠牲と3ヶ月の月日が必要だ」
「20人の…犠牲!?」
「魔鉱石はザックリ説明すると、特殊な鉱石に特殊な加工をする事で完成する」
「特殊加工?」
俺の話についていけてるのか分からないが、クレインは首を傾げている。
「…大量の血に特殊な鉱石を漬け込むのよ」
「しかも人間の血液の中に」
魔力持ちの…が抜けているがまあいっか、説明するの面倒だし。
つまりは濃い魔力に3ヶ月間浸し込めば完成。
魔力を込めただけで形状が変化する魔鉱石の出来上がり♪ってわけ。
だが…俺は完成する直前である大失敗をしてる事に気がついた。
解析などの対策をしてなかった、と言う事に。
コレ以外の研究は解析や分析をされないように何重もの複数の特殊加工をしているが、コレだけし忘れた。
完成直前になって気づいたため、時既に遅し…付け焼き刃の加工なんて直ぐに破られるものである。
と言うわけで…俺はこの魔鉱石を封印した。
誰も見つけられないように隠した、と言うわけだ。
魔鉱石を複数の研究者に分析、解析などをされたら直ぐに研究内容…過程、作成方法までがバレてしまう。
そして複製されてしまう恐れが出てくる。
こんなのが世に出回ってみろ、自分専用の強い武器が簡単に手に入るんだぜ?
世界の争いが更に激しさを増す事間違い無しだ。
そんな不完全な研究結果がアノ『魔鉱石』なわけ。
だ・か・ら、アレを封印して隠してたのに…
こいつらと来たら…!!
俺はリザリー達を睨んでこんなが…のくだりからクレインに話した。
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