28
教室の後ろの方にはすでに父母が十数人ぐらい来ている。
クレインは俺たちを見るや否や凄い笑顔になった。
「はい、今度の父兄はとても若いですね…誰かのお姉さんかな?」
先生?が教壇の前でそう言うと教室がざわつく。
「あ、もちろん言うまでも無くみなさんの父兄も若いよー?時代は変わったなー」
しみじみと呟く多分40代の教師。
お前の時代もさほど変わらないと思うんだが。
「では授業を続けます、みんなイメージは出来たかな?」
黒板を見ると武器生成方と書いてあった。
…まさか魔鉱石を使ったやつじゃないよな?
アレはかなり希少な鉱物で、この世界でも最も危険な場所でしか採掘できない鉱物だぞ?
しかも数も少なく実用化するまでには時間がかかる代物だ。
…なわけないよな?自分で鍛治して作るんだよな?
「はい!イメージできたようですね、では次の時間に実際に生成してみましょう」
授業は終了、解散!と教師が言うとみんな席を離れた。
「…魔鉱石を使った武器生成…参観のタイミングでやるのは……そういう事、貪欲ね…」
「…自分達の学校の評価を上げるため…か、中々良いアイディアだよね…」
二人共なんか聞こえるか聞こえないかのギリギリの音量で学院の意図を探っている。
「姉さん!来てくれたんですね!」
「ええ、マッキーも一緒よ」
「マッキー姉さんも!ありがとうございます!」
クレインが授業が終わるや否や席を離れて走って来た。
マッキーはマキナの偽名?的なアレね。
マキナに抱きついて頭を撫でてもらい満足そうにしている。
「バニさんが来たって事は…兄さんは…」
俺を見た瞬間、落ち込んで暗い顔になった。
おいおい、理由が違うとしても人の顔を見てガッカリすんなよ…
「お、おい、クレイン!その人達、お前の姉さんなのか!?」
「似てない事も無いけど、美人だな!」
「お前も将来そうなるのか!?」
ワラワラとクレインの周りに男子が集まってきた。
「おいガキ共、遊び半分でコイツらに手ぇ出したら…ぶっ潰すぞ?」
俺はかなり低く、生々しい覇気と少しの殺気を纏わせた言葉を放つ。
いわゆる威嚇と言うやつだ。
クレインに悪い虫がふっ付いたらエルーが怒るだろうから、今の内に虫除けしなきゃな。
俺ってめっちゃ友達思いだろ?
決して自分のため、とか心が狭い、とかじゃないぜ?マジで……本当に、ね?
「ひっ…!」
「ご、ごめんなさい…!」
「すみませんでした!」
俺の低レベルな威嚇にも逃げていく生徒達。
あの程度で逃げ出すとは…やっぱりガキだねぇ。
「なにみっともない真似してるのよ」
「ふ…コレが後に響いてくるのさ」
あいつの周りに怖い奴がいた、と言う噂が流れれば遊び半分で声をかけてくる男は減るだろう。
それでもいい、と強い意思を持った奴しか近づけまい。
「ねえお兄さんさあ…大人気ないよ?」
クレインの隣にいたやる気のなさそうな男子が俺に向かって言った。
「そんな事は百も承知だよ?だから?」
「カッコ悪いなー、と」
「ははっ、君面白い事言うね…格好ばかり気にしてたら何も出来ないだろ?ヒーローじゃないんだから」
「子供に突っかかるの止めなさい」
しゃがんで子供の目線に合わせるとリザリーに後頭部を叩かれた。
「いちいち叩くなよ、お前と違って記憶力良くねえんだからさー」
「やっぱりお兄さんってバカなんだね」
「そうだよ?見た目通りの頭しかないんだー、ははっ」
子供のバカにしたような視線と言動をそのまま受け止めたように笑う。
「…見た目もバカっぽいもんねー」
「まあな、でも周りがソレを補ってくれるんだよ…友達って大事だぜー?」
リザリーとマキナが後ろでため息を吐いた。
どうやら俺がしてる事に気づいたらしい。
怒るわけでもなく、凹むわけでもない、ただ受け流して相手に返す。
「はっ、友達なんて必要ないね!俺は一人でも大丈夫だから」
「そうかー、強いんだな」
「そうさ!一人では何も出来ない奴とは違うんだ」
「一人では損や苦難が多い生き方だぞ?まあ選ぶのは自分自身だけどな…お兄さんは友達がいるから、今は楽で得だぞー」
いえーい、とリザリー達に親指を立てる。
リザリー達は呆れたように見てるだけだった。
「ま、君もいつか気づく日が来るさ…人は一人では生きられない生き物だからね」
「いつか…ね、そんな日が来るとは思えないけど」
「一応マジな助言をすると…一人で戦えば早い内に死ぬ、覚えて置いてねん」
授業開始のベルが鳴ったため俺は早口で告げて少年から離れる。
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