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敷地が広い=それに見合った建物、ってわけじゃない。



建物は普通より少しデカイだけだ。



なぜ敷地が広いのか?ってのは一般人への被害を減らすため。



養成学校では普通に軍事訓練などを行っているし、この魔法学院でも魔術による訓練を行っている。



そんな学校が街中にあると危ないだろ?



そう言った理由でワザと敷地を広くして普通の一般人達との距離を空けている…らしい。



俺からしたら無駄としか言えんが。



この学校も敷地内に山があるし、兵士養成学校にも二つほどある。



山岳地帯での訓練は中々キツかったな~…



なんて俺が考えごとをしてると部屋の中から誰か出てきた。



あ、考え事って言っても一分ぐらいだぜ?



俺の書き方だと結構時間経ってるように思うかもしれんけどさ…



実際はそこまで時間経ってないような時もあるから。



出てきた奴が制服を着てる所を見ると生徒だろう。



なぜこんな授業中に…?もしかして…!



朝っぱらから理事長とアンアンしてるとかか!



「アレ?父兄の方ですか?ここは部外者は立ち入り禁止となっておりまして…」


「私たちは理事長に用があるんだ」


「理事長に…?もしかして…!リアージ博士とミッシピノ博士!?」



生徒は怪しげな表情から一転して驚いたように大声を上げた。



リザリーは煩わしそうに少し眉間にシワを寄せる。



「ええ、そうよ」


「今から正門に迎えに、と思ったのですが…良く場所をご存知でしたね」


「案内板見れば誰でも分かるだろ、さっさと挨拶を済ませたいんだが」



俺は生徒を退かしてノックもせずにドアを開けた。



「ちぃーす」


「誰です?ノックもせずに…」



まだ30手前ぐらいの女性が椅子ごと振り返り俺を見る。



「助手で~す」


「クレインです」


「クルシェイルでーす」



俺の後に続くようにして二人は理事長室の中に入った。



「良くおいで下さいました…迎えは必要無かったようですね。もう教室に戻っていいわ、ご苦労様」


「僕まだ何もしてないのに…」



生徒は渋々と言った感じでドアを閉める。



「魔法学院の理事長をしております、ノンリと…これ以上はよろしいですかね」



だんだん足音が離れて聞こえなくなった所で理事長が改めて挨拶をした。



「久しぶりですね」


「うん、久しぶりー」


「そうですね、クレインさんとは電話越しで何度か話していますけど」



この三人は昔の…と言うか二年前からの知り合いらしい。



俺と会うのはこれで三度目だけど、あの時は生徒に女装してたからなぁ。



素で会うのはこれが初めてだ。



「そうそう、あの時留学生の名目で無理やり入れてもらった生徒がコレです」



そう言ってリザリーは俺を指さす。



「え…?男…ですよね?身長差も違いますし…」


「そう言えばまだ聞いて無かったわね…どうやって身長を縮めたの?」


「え?また何か面白い事やったの?」



理事長からは困惑の目、リザリーからは逃がさないと言う目、マキナからは好奇の目を一斉に向けられた。



「ちょっとした外道魔術?ってやつ、身体全ての隙間と骨を限界ギリギリまで締め付けて無理やり縮ませた」



しかも関節とかの機能が下がり、かなり動き辛いと言う欠点もある。



コレをすると戦えないけど日常生活には支障を来さないレベル。



ただ過ごすだけ、なら。



暗殺も無理になるから使い勝手は超最悪。



手や腕、足や脚も小さくなるから本当に変装するだけにしか使えない。



「身体を縮ませて、後は女装…声もそれ用にちょろっと変えたけど」



もし俺が声優になったらアニメ一本の全キャラを一人でこなせるんじゃねえか?



確実に数日は喉が死ぬかもしれないけどな。



理事長は驚き過ぎて声も出ない様子だった。



リザリーとマキナの反応は普通。



「さて、挨拶はこれぐらいにしてナターシャの様子でも見に行きましょうか」


「講演の予定は午後だしね」


「じゃあ俺はそれまで寝て…」


「ダメよ、エルーの代わりを頼まれてたでしょ?」



俺はガシッと手首を掴まれて引きづられながら理事長室を後にした。









「ここ?」


「1-Aだから当たってるよ、出席番号は23番、席は窓際の前から三番目だった」



席替えして無ければそのままのハズ。



ガラ…とドアを開けてマキナ、リザリー、襟首を掴まれた俺の順で教室に入る。

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