43

お姫様に近づくと同時に電気が消えて真っ暗になった。



ほう…ボチボチ来やがったか。



「きゃあ!」



俺はお姫様の尻を撫で回して悲鳴を上げさせる。



「む、村人B…きさむぐっ」


「姫様、ゴメン…俺に合わせて」



素晴く後ろからお姫様の口を塞いで耳元で囁く。



「なにがあった?」


「簡単に説明すると第二、第四、 第五の王位継承者がテロ組織のトップで伝説の暗殺者を雇った」


「な!むぐっ」



静かにしねぇと暗殺者に気づかれてしまうじゃないか。



「それで、俺は暗殺者を始末するから協力して」


「う、む……わかった」


「って言ってもただ静かにしてればそれでいいよ」



この暗闇の中で真っ直ぐにこっちに向かってきてる奴がいる。



俺はお姫様をしゃがませるとソイツの動きを注意しながら行動に移す。



行動に移すって言ってもただ返り討ちにするだけ、だけど。



奴が俺の後ろまで来て、ナイフらしきモノを取り出す。



「ぐふっ!?」



俺は後ろを振り返ると同時に奴にボディブローを喰らわせた。



「伝説の暗殺者ねぇ…仕事が雑すぎんぜ」



暗殺者?にすかさず二発三発とパンチを喰らわせる。



「くっ…貴様、何者だ!」


「護衛だよ、コレで死ね…ってうお」



どうやら暗殺者で当たってたらしい奴の顔面めがけて思いっきり殴りかかると、手が割り込んできた。



俺の渾身?のパンチを受け止めようとしてたが結局暗殺者の顔に当たる。



だが手に阻まれたせいで勢いが落ちて威力も大分落ちた。



「邪魔が入ったか~」



くそ、あの野郎に逃げられた…二回戦めで決めてやろう。



パッと電気がつくと目の前に居たハズの暗殺者の姿は当然無い。



その代わりに俺の拳を掴んでる奴の姿は見えた。



「お前もお姫様を殺したがってんの?」


「お前、だと?礼儀のなってない猿が…誰に口を聞いている!」



目の前の男が叫ぶと俺の拳を握る力が増していく。



「この程度の力か?コレじゃお姫様は殺れねえな」



左手で俺の拳を握ってる奴の手首を掴んでグルンと回す。



合気道とか柔道の技の応用だ、相手の重心や力を利用して投げる技。



マキナも前に似たような事をやってたけど…アレは昔、俺が教えたんだよね。



故郷で忍になるための訓練してる時に身につけた技の一部。



柔道、剣道、合気道、空手などの複合させて最も実戦向けにした武術らしい。



俺が体術に優れてるのも、その頃の基礎が活きていると言えよう。



「王子!」


「近づくな」



側近みたいのが倒れた男に向かって急いで近づいてきた。



俺は鞘ごと剣をその側近に向けて威嚇する。



それに怯えたのか側近はピタッと動きを止めた。



「この猿が!」


「おっと」



男が起き上がるや否や俺に殴りかかってくる。



俺はそれを受け止めて腕を捻りあげた。



「ぐうぅぅ…!!」


「村人B!あなた、兄様になにを!その手を離しなさい!」


「離せ?冗談だろ、コイツ…多分姫様を殺そうとしてる奴だぜ?」



弱いから多分第四か第五あたりかな?



「ソレは証拠があっての事ですか?」


「俺に証拠なんて必要無い、疑わしきは罰せよ…だ」


「あなたは証拠が無いのに兄様を疑うのですか?」


「まあ今回は証拠はあるぜ…ホラよ」



俺はポケットからさっきポラロイドカメラで撮った写真をお姫様に渡す。



「誰ですか、この人は?」


「姫様を狙ってたテロ組織の幹部で、一応生き残り」


「生き残り…?」



俺の言葉にお姫様は不思議そうに首を傾げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る