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「そ、こいつ以外の幹部は全員始末した…つってもユニオンの内通者は捕まっただけで生きてるけど」


「それで、その方から情報を聞いたのですか?」


「おう、だから多分間違いないぜ?俺の役目は姫様の護衛だけど…降りかかる火の粉は火の元から絶つ、タイプだからさ」


「は、あは、あはははは!!」



俺の言葉を聞いたお姫様が突然笑い出した。



ザワザワとしてた周りが静かになる。



「その情報が偽物で踊らされてるとは考えないのですか?全く、おめでたい脳みそですね…兄様たちが私を殺そうとしてる?そんなわけないじゃない!!」


「…まあソレを信じる信じないは任せるけど、こいつらは殺させてもらうぜ?」


「なぜ?」



お姫様が見た目とは似つかわしくない殺気を放つ。



うーん、面白いなぁ…猫が必死に威嚇してるみたいで可愛い。



「気に入らないから、お姫様を殺すためにあんな少年まで駆り出すんだぜ?」



知り合いっぽかったから精神的に揺さぶりをかけよう、って腹かな?



俺が護衛じゃなかったらヤバかったかも。



元一位ランカーだったら情けはあれど、容赦無く倒してると思うし。



「私の目の前でそんな事…」



お姫様の言葉を全部聞く前に素早く左手の逆手で剣を抜いて第四?第五?王子の首を撥ねた。



「できるんだなー、それが」


「な…!?」



わずか一秒ほどの出来事にお姫様は絶句する。



あ、しまった…女の子の前ではちょっと刺激が強かったかな?



「き、貴様!!皆のモノ!捕らえよ!」



意外にも一番反応が早かったのは現王様だった。



その声を聞いて警備兵達がバタバタと俺の周りに集まる。



「あー、話の分かるやつ…いる?第二と第五?第四王位継承者は誰だ?」



ソイツの顔を知ってる何人かが周りに集まっている内の二人を見た。



そしてそれとなくその場から離れさせようとしてる。



俺は剣を鞘に仕舞い、姿勢を低くして警備兵の包囲を突破して逃げようとしてる一人の男の首を撥ねた。



「き…!キャー!!王子!王子!」



メイド的なのが悲鳴をあげてようやく周りのみんなは事態に気づく。



大声出すのも面倒だけど…それ以上にパニックになられても困る。



「慌てるな!!」



俺は会場の人たちがパニックになる前に大声を出して場を制した。



「言っとくが!俺は無差別に人を殺してるわけじゃない!そこにいるお姫様の護衛として!その命を狙っているテロ組織のメンバーを潰してるだけだ!」



静かになった会場に俺の大声が響く。



「ふ…ふざけるな!我が息子を殺してなお貶めるだと!?」


「ふざけてたら命までは取らねぇよ、まあ詳細は終わった後に…っておおっと」


「村人B!きさ…まっ…!?」



急に斬りかかってきたお姫様の剣を俺の剣で受け止めて回り込むように素早く後ろに回って頭の一点を指で強く押す。



ツボ押しマッサージ、一式昏睡急。



良く考えたらツボ押しシリーズの呼び名って色々だな。



ツボ押し拳

ツボ押し剣

ツボ押し脚

ツボ押しマッサージ



戦闘用から休息用まで幅広く使えるっつー汎用性がヤバイ。



「貴様!娘にまで…!護衛と言うのは嘘か!?」


「嘘じゃねーよ、邪魔だから寝かしただけで30分ぐらいでは目を覚ますよ」


「なんの騒ぎだ!」



騒ぎを収めるように一喝して元一位ランカーがズルズルと何かを引きずりながら俺の所までやってきた。



「…あれ?少年二人はさておき、そいつは?」



肩に担いでるのとは別に右手で人のようなものを掴んでいる。



「ん?ああ…お前が知ってるかは分からないが、噂に名高い伝説の暗殺者だ」



…うっそーん、俺がやる前にこいつに取られてるし。



変な事で時間をかけるんじゃなかった。



「で?なんの騒ぎだ?」


「俺のミスでこんな事態だ…人前でテロ組織の幹部を斬首しちまった」


「……あの倒れてる二人か、転がってる顔を見る限り第四と第五王位継承者のようだが」


「第二、第四、第五王位継承者がテロ組織のトップだとさ…幹部を尋問したから間違いないハズ」



俺らの周りで喚いてるユニオンのお偉いさんを無視して二人で話を進める。



「はぁ…もっと良い方法はあっただろ、これじゃ誤解しかされないぞ」



また俺と戦いたかったのか?と言い元一位ランカーはヤレヤレとため息を吐いた。



「お前が暗殺者をどうにかするって分かってたら…いや、これ以上は結果論だから仕方ねえな」


「何をしている!さっさと捕らえんか!」


「…テメェら、さっきからピーチクパーチクうるせぇんだよ」



俺は元一位ランカーの側で喚いてる30代の男の首を掴む。



「止めろ、面倒ごとが増える」


「へいよ…じゃ、俺はテロ組織の頭でも始末してこうかな」



腕を掴まれたため首から手を離して大混乱となった会場から出た。



あーあ、伝説の暗殺者ってのを楽しみにしてたのに…



まさかあの元一位ランカーに取られるとはなー。



でも俺の仕事が一つ減ったと思えばいっか。



伝説の暗殺者を気にして雰囲気無視の短期決着に臨んだのに。



逃げた第二王位継承者…チラッとしか見てないけどそこらの王子よりはホネがありそうだ。

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