20
「お嬢ちゃん、可愛いね」
「!?」
「なにをする!」
俺はナンパ男に見せかけて姫様の二の腕を掴み斜め後ろに引っ張った。
そのおかげで鎌は姫様に擦りもせずに空を切る。
「お兄さんと遊ばない?」
「は…?」「おい、てめえ!」
姫様が意味不明、な声を出したのと男が怒鳴ったのは同時だった。
「なんです?ナンパの邪魔しないで下さいよ」
「邪魔したのはてめえだろ!姫より先にてめえから殺ってやろうか!?」
「ええー、あなたもナンパしようとしたんですか?じゃああっちの路地裏で決着つけましょうか」
「上等だ!俺の邪魔した事を後悔させてやる!!」
男はバッと踵を返すと俺が指差した路地へ歩いていく。
「おい…」
「しっ!姫様、俺に話を合わせて下さい」
「う、うむ…分かった」
姫様が俺に問い詰めようとするのを制して、小声で話をかける。
姫様も雰囲気から何かを察したのか緊張した面持ちで頷く。
俺が裏路地に入ると男がこっちを振り向く。
「おう、ちゃんとついてきたか…じゃあ姫の前に軽く殺してやる!」
男は懐から鎌を4本取り出すと二本の鎌をドッキングさせた。
そしてS字のような鎌を二本持ってグルグル回す。
また面倒な武器で来たなぁ…じゃあ先手必勝で。
俺は素早く男との距離を詰めて足を払う。
「ぬぅ…!」
男は壁に手を付き、なんとか倒れるのを防いだ、が…壁に手を付く事で鎌の動きが止まる。
俺は男の左手首と左肘を掴んで肘関節を逆に曲げ、骨をへし折った。
「ぐう!!」
その腕を後ろに回して背中に右足を置いて男を壁に押し付け…そして左肩の関節を外す。
「があっ!!」
そして背中から足を離して右脇から右手を滑り込ませ、羽交い締めにするようにして右肩の関節も外した。
ボキ!ゴキッ!ゴキッ!!と骨の折れる音が路地裏に響き渡る。
そのまま地面に投げ捨てて倒れた男の左膝に足を乗せた。
「質問に答えなければ膝を折るよ?…なぜ姫様を襲った?」
「うぐ…!うぅ…!」
痛みで呻いてる男の左足の踵を掴んで上に持ち上げ足に力を入れる。
ベキャ、とネギをへし折ったような情けない音が鳴った。
「うぐあぁ!!」
「今度は右足をへし折るよ?…なんで、姫様を襲った?」
「けっ!懸賞金がかけられたんだ!俺の上着のポケットに入っている!頼む!こ、殺さないでくれ!」
男を転がして上着を剥ぎ取りポケットを漁る。
WANTEDと書かれた紙の真ん中に王女の顔写真、その下に金額と詳細が書かれていた。
100,000,000$
『この極悪非道な悪の次期王女を殺した者には上記の賞金を与えます、顔写真の次期王女の首、もしくは死体を撮った写真をお持ちの上でご連絡下さい』
…一億ドルってえと…世界共通通貨にすると…
100億!!?
半端ねぇ~…一人殺すだけで100億かぁ。
こりゃ相当ぼろ儲けできるな。
俺の拷問?に耐えきれずに目を瞑って耳を塞いでいた姫様が静かになったのを不思議に思ってか目を開けた。
「ああ、終わったよ…女の子にはちと刺激が強かったかな?」
俺は未だに呻いてる男の頭を蹴って気絶させ警察と治安部隊に電話する。
「村人B、貴様…いや、お前は何者だ…?」
姫様は一気に警戒の色を強くして恐怖の対象を見るような目になった。
「ん?姫様の思ってた通りただの村人Bだよ?今は」
「…今は?」
「まあとりあえず移動しようか、警察とか来たらややこしくなるし」
今担いでるバッグ(竹刀入れるやつ)に、俺とお姫様の剣を入れてるからバレたら面倒な事になりそう。
姫様の後ろに回り込み肩を押しながら路地裏から出る。
肩に触った時にビクッてなったのは見ない振りをしておこう。
そしてそこらへんの喫茶店に入って紅茶とジュースを頼み、姫様を座らせた。
「俺が何者か?って言うさっきの質問だけど、兵士の落ちこぼれ…っつー所かな」
「兵士の…落ちこぼれ?」
「そうそう、見た目じゃ分からないと思う……とは言え、もうとっくの昔から兵士じゃないんだけど」
「何故だ?辞めたのか?」
「お待たせしました、アッサムティーとおすすめドリンクです」
ちょうどシリアスな雰囲気に入ろうとしたら店員が割り込んできた。
「ありがとうございまーす」
「…う、うむごくろう」
「ごゆっくりどうぞ」
とりあえずジュースを飲んで喉を潤す。
俺が飲んだのを見て、姫様も紅茶を一口飲んだ。
「…美味しくない…が、マズくもない……」
飲んだ後に憮然な感じの顔をしてミルクと砂糖を入れる。
味をごまかして飲む気なのか?
出された物は残さない、とする姿勢は素晴らしいな。
「続き」
「は?…ああ、まあ落ちこぼれだったからな…今見ての通りって事」
一瞬何を言われてるのか分からなかったが、少し考えて姫様の言いたい事が分かったから続きを話す。
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