19
10分ほど裏道を歩くと廃工場に着いた。
押されるように中に入ると更に20名程のヤンキーがたむろっている。
「リーダー!連れてきやしたぜ!」
俺の隣の男が叫ぶと廃工場の奥から一人の男が出てきた。
「デカイ声出すんじゃねえ…んん?これは上玉だな」
「なんだこの無礼者は」
男は舐めるような目で姫様を上から下まで見ると姫様は不快そうに眉間にシワを寄せる。
「ははっ!気が強いな、そうでなくちゃ…ん?なんだ連れがいるのか?」
男が俺に気づいて観察するような目で顔を凝視した。
「…!まさか…」
何かに思い当たったのか一気に男の顔から血の気が引く。
「これで三度目だな?そんなに死にたいの?」
一回目はリザリー、二回目はマキナと一緒にいる時に絡まれた事がある。
言うまでもなく、二回とも目の前の男がリーダーを務めてる集団に、だ。
「な…なんでこんな所に…」
「リーダーどうしたんですか?さっさとやっちまいましょうよ」
「馬鹿野郎!」
隣の男が俺の肩に肘を置くとリーダーが男を殴り倒す。
「り、リーダー…なにを…?」
「この人に気安く触るなんて…てめぇ死にてえのか!」
「え…?」
「この人こそ二度も俺の人生の汚点を刻んだ人だぞ!?」
リーダーが男に向かって叫ぶと周りの男達がざわめきだした。
…まあ自分で汚点って言うんならいいんじゃん?
二回ともただ返り討ちにしただけ、だけど。
「すいませんでした!今は抗争が激しくなって、みんな荒れてるんです!どうか俺に免じて!」
リーダーは俺の前でガバッと土下座をして地面に額をこすりつける。
「お前に免じて?言葉の使い方、分かる?」
「うむ、次からは気をつけろよ!」
俺が冷ややかな目で見下すようにリーダーを見ると姫様が勝手に許した。
「あ、ありがとうございます!」
リーダーは再度地面に額をこすりつける。
それを見てた集団はポカン…と唖然としていた。
「ひめ…おっと、お嬢様…そんな勝手に?」
「これだけ反省しているのだから許してやれ」
「うーん…じゃあ、まあ、うん…但し、仏の顔も三度までだ」
「?なんだそれは?」
俺の言葉に首を傾げた姫様に言葉の意味を説明する。
「そうか、そんな言葉も存在するのか」
「そう言えば…おい、てめぇこの前の俺に誓った言葉を覚えてるか?」
「…『女子供には決して手を出さない』」
「そうだ、で?」
俺が集団を顎で示し、聞き返すとリーダーは冷や汗ダラダラで目が泳いでいた。
それを破ったら殺すぞ?と脅しておいたハズなのに…やっぱり殺すか?
ただの不良ごとき、何百人束になろうが屁でもねぇし。
「えーっと、そのですね…抗争が激しくなって…仕方なく…」
「それはいいわけか?」
「いや…その…この抗争が収まれば……女子供には手を出さない大陸になるなー…と」
リーダーはしどろもどろに俺の質問に答える。
「本当か?二言はないな?」
「…はい」
「お前は今の自分の発言に嘘偽りはないと胸を張って言えるか?」
「はい」
立ち上がってまっすぐ俺の目を見て答えた。
「よし…じゃあ抗争相手の頭を呼べ、俺がぶっ殺してやる」
「いや…殺すのはちょっと…」
「ああん?…仕方ない半殺しで我慢してやる、さっさと呼べ」
「でも、俺たちのチームを除いても4チームはありますよ?」
恐る恐る俺の顔色を伺いながら発言してくるリーダーはもはや小物臭しかしない。
いいから呼んで来い、とイラつきながら言うと慌てて周りの集団を集めた。
?マークを出さんばかりに首を傾げてる姫様に色々省きながら現状を説明する。
「つまりは不良どもの覇権をかけた戦争か」
変な風に解釈したが、まあいいか。
「近くの街にいるから集まったら呼んで」
集団のリーダーにそう言って姫様を連れて街に戻った。
「あんな連中でも色々あるのだな」
「まあ社会の縮図っちゃあ社会の縮図みたいなもんだからな」
「社会の縮図?」
「下っ端は偉い人になるために頑張って、上の方は地位を維持するために頑張るだろ?」
街を歩きながらさっきまでの出来事を話の種にする。
和やかーに姫様と話をしながら観光名所を回ってると、人混みの中に和やかな雰囲気とは全く似つかわしくない…殺気を放つ男がいた。
只の殺人鬼か?このまま歩けばすれ違うな、無差別だったら狙われる可能性があるが…
俺は歩くスピードを少し落として王女の少し後ろからついて行く。
姫様と殺人鬼?がすれ違おうとした瞬間、殺人鬼?は懐に手をいれ…
すれ違い様に姫様に鎌で斬りかかった。
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