15
俺とリザリーも乗り込み研究地区の近くでリザリーを降ろすと、あらかじめ手配されてるホテルへと向かった。
5時間後、ユニオンの経済の中心地…まだアメリカ合衆国と言う呼び名だった頃の首都に到着。
今の呼び名はユニオン経済特区と言う意味の『ユニオンE・Z』になっている。
Economic Special Zone
エコノミック スペシャル ゾーン
略してE・Z…『イー・ズィー』と呼ぶ。
国民達が勝手にそう呼んでたら、広まり過ぎてそのまま地名になったらしい。
昔のホワイトハウスと呼ばれてたらしい官邸が今はブラックワイズと言う感じの呼び名だ。
なんせトップになる人には色々と黒い噂がつきまとってるし。
今のユニオンのトップ、皇帝王の名前ってなんだっけ…?
「なあ姫様、ユニオンの皇帝王の名前って分かる?」
「…あ……そんな事も分からないでこの国に住んでるの…?」
俺の質問に王女は絶句した挙句に、信じられない…と驚いた顔をした。
「いやー…俺みたいなのは偉い人とはあまり関わらないから」
「関わる関わらない以前の、一般常識の欠落ですわ」
「んじゃ、姫様は?分かる?」
「当たり前、『ジョーダル・フウグリス』かつての独立の英雄の血筋の方…はてな」
独立の英雄…うーん、独立ってったらドイツかマーラス…あとイギリス辺りか…?
100年戦争ってのも確か独立がうんたらかんたらだったよな?
あれって確か…ジャンヌって女が神を盲目的に信仰するあまり、悪魔の力さえも手に入れて神の怒りに触れ処刑されたやつだよな?
普通に考えて、ただの女の子だったのが戦場を駆け抜けて生き延びるなんて不自然な話だし。
神の啓示を受ける儀式と称して悪魔を呼び出していたって言う。
神と悪魔、両方の怒りを買うなんて…数年前の俺みたいだ。
いやぁ…アレはヤバかったね。
常時瀕死。的な感じだったし。
良く生き延びれたもんだ…もしかして俺って才能が無い分、かなり運が強いのかも。
「何をぼーっとしてるの?早くチェックインしなさいよ!」
「へいへーい」
先に車から降りて王女をエスコートしながらホテル内に入りチェックインする。
所定の部屋は1001号室、最上階のワンフロア下だ。
二週間も同じホテルで大丈夫なのか…?
まあテロ組織には違うホテルの情報が回ってるらしいから大丈夫か。
いざとなったらホテルの入口に立っとけばいいし。
数が多いようなら血を固めて人形でも作れば大丈夫でしょ。
つってもなぁ…人形なんてせいぜい35体までしか作れないんだよなぁ。
まあ倒した相手の血を全部抜き取ればいいか。
確か、魔界の時にそれやり過ぎて5万体以上にまで増えたんだっけ…懐かしい。
最終的に優しい魔族のアドバイスで、血人形の5万体を全部凝縮して5カラットぐらいの結晶にしたんだよな。
黒混じりの割に、赤く、赫く、紅く、朱く、緋く、そして澄んだ透明感を持つ血の結晶体。
この前、リザリーとマキナに見せるや否や凄い勢いで奪い取られそうになって焦った。
何万リットルの血を凝縮した結晶体だからな…本当にいざと言う時の最終兵器の一つだ。
昔を思い出してるとエレベーターが止まり、所定のフロアに着いた。
「1004…1003………1001、ここか」
鍵を回してドアを開ける。
「ほう…なかなか良い部屋ではないか」
「どうやらお気に召したようで」
ロイヤルスイートらしいからな…なんと一泊800万と言う驚きのお値段。
流石にこれでお気に召さないとホテル側もやりきれんだろ。
あ、一応ボーイ的なのは事前にリザリーが断っていたみたい。
用心に越した事はない、と。
だから荷物も俺が全部持ってるっていう。
アタッシュケース3つぐらいだから特に多くはないのが、幸いだ。
「うむ、ベッドも広くてふかふかしてて弾力もあって申し分ないな」
「どこの評価です…?」
とりあえずベッドの側にアタッシュケースを3つ置いて、近くのソファーにリザリーが置いてったバッグを下ろした。
さて、何が入ってんのかね?食器は備えつけだから…紅茶とか、デザートの材料とかか?
バッグを開けるとビンゴだった。
高級そうな紅茶の茶葉が4袋、そしてちょっと値段が高めの1kgの小麦粉が5袋。
そして、紙が一枚。
リザリーの字だ、相変わらず綺麗な字だぜ。
なになに…
『次期王女様に朝はダージリン、昼はアッサム、夜はアールグレイの紅茶を淹れるように。
あと…パン派らしいから毎日パンを焼いてね。
それと…デザートもなるべくクッキーやケーキといった紅茶に合う物で。
食事もなるべくならそこら辺のスーパーから買って作った方が安心だと思うわ。
じゃあ二週間頑張ってね、グッドラック!
貴方の愛しのリザリー・クレインより』
注文多っ!えっ、俺って護衛だよね?
執事とか召使いじゃないよね?
どんだけお姫様に気ぃ遣ってんだよあいつ。
しかも最後の『貴方の愛しのリザリー・クレインより』ってなに!?
貴方の愛しの!?ちょっ…!
ツッコミどころが多過ぎて捌ききれねぇ!
今頃あいつマキナ達と笑ってるんだろうなぁ…くそっ。
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