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もう外は暗くなり始めてるし…今回は外食でいいよな?



「姫様、って…目の前で平然と着替えるのはどうかと思うぞ」


「私の身体に恥ずべき所などない、それに人の上に立つ者はいつでも平然とすべし!と言う教育を受けている」



まあ意味を取り違えてるね。



にしても発育の良い身体してんなあ。



うーむ…目測、上から72、62、68ぐらいだな。



「咎める割にマジマジと見るのだな…」


「まあ俺はロリコンじゃないしな…ってか」



俺の前でブラとパンツまで着替えんなよ。



「ふふっ、流石にソレは見ないのだな」



ため息を吐きながら王女に背を向けると意地悪そうな声が聞こえた。



「もう振り向いてもいいぞ」


「へいへい」



王女の許可を得て振り向くと、そこには可愛い少女の姿が。



なにこの王女!さっきの仰々しい偉そうな服から着替えると美少女になるの!?



「?なにか変か?」


「いんや?ファッションセンスは良いんだな…って、美少女最高」



ロリコンじゃない、と否定した後のロリコン発言。



どうやら俺の性癖は簡単にブレるらしい。



「ふむ、そうか?」



王女は身体を捻って自分の格好をマジマジと見た。



「まあ美少女な姫様の格好はさて置き、腹は減ってない?」


「む、実はさっきから空いている…して、ディナーはなんだ?」


「ホテル内の一階にあるレストランはどう?」


「……行ってみるか」



少し考えた後、了承してくれる。



エレベーターに乗って一階に下りてレストランへ向かう。



「いらっしゃいませ」


「二人、お願いします」


「かしこまりました…こちらです」



店員は王女を見て奥の数少ない個室へと案内する。



…なかなか有名人なのか?それとも気品オーラゆえなのか?



「では注文が決まりましたらお呼び下さい、ごゆっくり」


「ありがとうございます」


「?なぜ礼を言う?仕事なのだから当たり前だろう」



俺の言葉を不思議に思ったのか、王女が聞いてくる。



「ん?特に意味はないよ?ただなんとなく…別に嫌な気はしないだろ?」


「そうだが…」



王女は腑に落ちないような顔でメニューを取った。



「よし、決めたぞ」


「決まった?じゃあ呼び鈴を押せばボーイさんが来てくれるよ」



呼び鈴を押してボーイを呼ぶとメニューを告げる。



「村人B、貴様は頼まないのか?」


「ん?…じゃあオレンジジュースで」


「かしこまりました」


「…食べないのか?」



ボーイが頭を下げていなくなると王女が怪訝な顔をした。



「俺みたいな庶民に高級料理は口に合わないんだよ」


「は?貴様は庶民の出なのか?」


「気品の欠片もない言葉使いや態度で分かるだろ?」



俺が笑いながら自虐的な事を言うと丁度料理が運ばれてくる。



早いな!まだ5分も経ってないぞ?



「ふむ、なかなか迅速だな」


「ちょい待ち」



早速料理を食べようとする王女を制して料理が入ってる皿を見る。



「ん~…見た目は大丈夫、匂いも…しない、OKだ」



匂いがしない、と言う事は命に関わるほどの薬は入ってない。



それ以外の薬は入ってるかもしれんが、それは流石に味見しないと分からん。



まあ食べても特に問題は無いだろ。



「お待たせしました…こちら、オレンジジュースでございます」


「ども」



王女が料理を食べてるのを見つつオレンジジュースを飲む。



コレにも何も細工は無い…心配し過ぎか… ?



王女が上品にコース料理を食べる事、一時間。



「食べ終わった?」



三杯目のジンジャーエールを飲みながら空になった皿を見た。



「うむ、なかなか良い味だった」


「そ、じゃあ戻るか」



ボーイから伝票を受け取りレジへと向かう。



うひゃあ…このコース料理、6品で60万もするんかい。



リザリーから預かったブラックカードで会計を済ませて部屋に戻る。



ブラックカードて…上限額無制限のやつだろ?



何千億をポンと出せるレベルの金持ちじゃないと持てない代物だと聞いた事あるんだが…



上の方から支給されたのか?流石にあいつのじゃないよな…?



紅茶を淹れながら考えるが、結局結論は出ないまま作業を終えた。



「姫様、紅茶ね」


「ん?おお、気が利くな村人B……マズくありませんように」



王女は天に祈ってから紅茶を一口飲む。



「なんと!作る人の見た目とは裏腹に上品な味だ……我が国にもここまで味と風味を引き出せる者はいない」


「そこまで?」


「しかも私の好みを突いて夜のアールグレイ…貴様、何者だ?」


「何者って…見たまんまだけど?」



紅茶を飲んだだけでえらい驚きようだな。



なんか俺への評価も上がったっぽいし。



「ほい、特製ミルク」


「?私はミルクは入れないぞ?」


「まあまあ」


「ふむ……………っ…!このふんわり優しい甘み…!今までのただ甘ったるいだけのミルクティーとは違う!!」



ふっふっふ…火にかけながら蜂蜜を入れて溶かし、黄金比に調整したのさ。

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