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『では、これより代表戦を行います。先ずは南側開門』



南側…って俺の所か、おっ、開いた開いた。



俺は門が開ききるのを見て闘技場の中に進んだ。



『先ずは南側ぁ!無名のダー…クホースぅ!道化師のー!ピエぇロぉ!!』



リングの上に上がると実況の声と共にわあぁぁ!!と観客の大歓声?が響く。



う、こんな歓声的なもんを聞くと処刑の時を思い出すな…



『経歴不明なだけにその強さは未知数ぅ!!さっきの試合では素手で魔物を殴り倒す非常識を見せてくれた!!果たして代表戦は勝てるのかぁ!?』



実況の声が切れると同時に向かいの門が開いて人が出てきた。



『次に北側ぁ!今大会の優勝候補の一人!この男に斬れない物など無い!斬って切って斬りまくるぅ!斬り切り済のアリぃカぁ!!』



実況に紹介された男は軽そうな鎧を身に纏い剣を4本持っていた。



背中に2本、腰に2本差している。



ってかキリギリス?虫の異名…二つ名とかイジメられてんの?



『午前の部の試合では参加者はもちろんの事、魔物をもバラバラに斬り刻んだぞぉ!!今回は道化師をバラバラに刻めるかぁ!?』



いやいや、代表戦は相手を殺したら失格だから無理だろ。



何言ってんのあの実況。



まあでもなかなか強そうではあるな。



『今日の代表を決める試合の~……始まりだぁ!!』



実況が叫ぶと同時にアリカ…だっけ?が剣を抜いて斬りかかってきた。



俺はそれを軽く避けて中指を上げた拳で右腕の一点を殴る。



ツボ押し拳二式麻痺急だ。



「ぅあ!…く!」



腕が痺れて剣を落とすが左手で素早く抜刀して斬りかかる。



それをしゃがんで避け、アッパーカットで左腕の一点を殴った。



ツボ押し拳三式麻痺急。



「…っ!っだあ!」



左腕も痺れて抜刀した剣を落とすが、素早く体を捻り鋭い蹴りを放つ。



「なっ!ぐぶっ!」



俺は蹴りを掴んで止め、アリカ?の胴を思いっきり蹴飛ばした。



あーあー、剣を抜くまでもねぇな。



やっぱり人間だとツボ押し楽勝やわー。



ま、天使、神獣、魔物、魔獣、悪魔と色々戦ってきたからな。



ツボを探すのも一苦労する相手ばっかりだったし、失敗したら死ぬ可能性大だし…やっぱり努力は報われるね。うん。



『おおっとぉ!!あのアリカがリングの外まで吹っ飛ばされたぁ!!身軽な上に力まであるのか!?まさに未知数ぅー!!』



リング外まで吹っ飛んで行ったはずのアリカが俺が瞬きする間に既に目の前にいた。



「は?…ぐっ!」



驚く間もなく今度は俺が吹っ飛ばされる。



神がかりな反射神経でなんかガード出来てたらしく、衝撃は腕にだけだった。



『出たぁ!!アリカの十八番!瞬間移動だぁ!気づいたらいつの間にかソコに居ると言うこれまた未知の技!!』



瞬間移動ぉ!?なにそれ!そんなん二次元の世界だけじゃね!?



二次元限定の技を三次元に持ってくんなよ!



反則技にも程があるわ!どう対処せぇっちゅうねん!!



って、あ…俺の影移動も一応は瞬間移動だ。



しかもワープ的なやつ。



あれ?そういうのって空間移動って言ったっけ?



……よく考えたら俺もたいがい非常識で二次元染みてるじゃん。



人に言えねぇー。



受け身を取って立ち上がるとまたしても目の前にはアリカの姿が。



流石に二回目ともなるとそんなに驚かなくなるわけで。



少しだけでも冷静に相手の動きを見れるようになった。



そのおかげで口に咥えた剣で首を撥ねられる、なんて事態は免れたみたいだ。



俺は軽くしゃがんで横一文字に薙がれた剣を避ける。



危ねぇ…危うく首スパーン!ってなる所だったぜ。



まさか剣を口に咥えて斬りかかるとか…恐ろしい奴だ。



つーか顎の力のヤバさはさて置き、その剣を俺の剣で受け止めたら歯ぁ全部折れんじゃね?



顎の力は強くても歯の強度…歯茎の強度までは強く出来んだろ。



俺が受け止めてたらどうするつもりだったんだろうな?総入れ歯?



『なんと!斬り切り済のアリカの怒涛の攻撃を全て避けている!!』



奴の歯の事を考えている間にも攻撃はされてるわけで。



両腕はまだ痺れているのか、脚技と口に咥えた剣で斬りかかってくる。



実況の声を聞いたら分かる通り俺は全ての攻撃を見切って避けている最中だ。



そろそろその脚も痺れてもらおうかな。



俺の頭を狙った右脚の蹴りを当たるスレスレで下に避けて太ももの一点を狙って殴った。



ツボ押し拳四式麻痺急。

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