12
「さあ、どうする?」
『本当に、できるのか?』
どうやら副隊長はプライドを捨てたようだ。
「さあ?とりあえずやってみるしか無いだろ」
『仕方ない、我の不甲斐なさに怒りで身が焼けそうだが…貴様に託してやる』
やれやれ…素直じゃねえな。
「とりあえず、ゴツイ奴を仕留めとけ………くそっ、失敗した!」
俺はとりあえず魔術に失敗した振りをした。
魔物と意思疎通が出来てる事がバレないように。
『なんと!ピエロの長々とした呪文の魔術は失敗したようだ!あのモンスターはあと一人を狙ったぞ!ピエロはアウトオブ眼中なのか!?』
「誰でもいい!マントかデカイ布は無いか!?」
俺は走り回りながら客席に向かって叫んだ。
手品みたいに布で覆えばあとは影移動で魔王城に帰せるし。
走りながら叫んだ甲斐もあり客席からは大小様々な布が闘技場内に投げられた。
俺はそれらを全て拾い、結んで大きい布にする。
『ああっと!ついにノックアウトか!?これで立てなければ残るはピエロだけだぞ! 』
アナウンスを聞く限りゴツイ奴がやられたらしいな。
とりあえず準備は完了したし…あとはコレを被せれば終わりだ。
俺は副隊長の前に行き闘牛士のようにデカイ布をはためかせる。
副隊長をすっぽりと覆いそうな布を見て俺に向かって突進してきた。
よし、計画通り…次はあいつの血を舐めて移動させる。
副隊長の突進を避けてリングの外に倒れてるゴツイ奴の所へ走った。
肩に担ぎ観客達から見えないように血を少し舐めとる。
うぇ…やっぱりあんま美味しくねぇな。
ゴツイ奴を肩に担ぎながら鉄門を目指してると再度副隊長が突進してくる。
肩に担いでいる奴を適当に放り投げて俺はデカイ布を構えた。
突進を避けると同時に布を被せ指パッチンして影移動させる。
『…は?モンスターが………居なくなった!?なんだこれは!?ミーラークールー!!なんと!勝者は道化師のピエロだぁ!!』
実況の声が俺の勝利を告げると客席の方で絶叫の雨嵐。
多分、コロシアム恒例の裏での賭けの事だろう。
無名の大穴が勝ったんならそりゃ叫びたくもなるってもんだ。
しかも無傷。
まあ副隊長とは戦ってすらいなかったしな。
攻撃は最初の一発だけで、あとは影移動で消しただけだし。
ゴツイ奴が係員にタンカに乗せられ連れていかれるのを見て、クレインがいる個室へ向かう。
「ご勝利おめでとうございます」
部屋の前まで行くとドアの所でスタンバってるスーツの人に頭を下げられた。
「あ、ああ…ありがとう」
まさか話しかけられるとは思わなかったので俺はちょっとビビりながら返す。
「おめでとうございます!」
そのまま部屋に入るとクレインが椅子から下りて走ってきた。
「やっぱり程人さんが勝ちましたね、私の言った通りです」
クレインが笑いながら俺の周りをはしゃいでいる。
「あ、そうだ…コレ、どうしたらいいですか?」
「何これ…?げっ、賭博券じゃねえか」
クレインから紙の束を渡され、一枚みて見ると『No12.道化師のピエロ…倍率35.7』と書かれていた。
倍率高っ!!やっぱり大穴だったんかい…予想的中やわー。
「リザリーさんに『コロシアムのほとんどが賭けの対象になってるわ。程人の試合の時に有り金全部賭けなさい、絶対に儲かるから』って聞いたので……いけませんでした?」
クレインは俺の反応を見てビクビクと上目遣いで聞いてくる。
…はあ、やっぱりあいつの入れ知恵かよ…まあ今は金がある分助かるんだけどさ。
「まあ…うん、リザリーが言ってたんならいっか……すいませーん」
とりあえずドアを開けてドアの所にスタンバってる人を呼ぶ。
「はい?何かご用ですか?」
5mも無い距離から直ぐに来てくれた。
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