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『では参加者が揃った所でー………開・門だぁ!!』
向かいの鉄門が開き唸り声と共に魔物が出てくる。
出てきた魔物を見て俺は少し驚いた。
『ああっと!これは最悪!今大会、否!この国で一番強暴な魔物のお出ましだぁ!!他の魔物とは格が違う!なんと捕らえるだけでもイグニス国の兵士を三桁も犠牲にした、まさにモンスターぁ!』
体長5mあろうかと言う強靭な体躯に、硬く鋭そうな爪に牙、そして獰猛な目つき。
おいおい、軽い気持ちでどうせ魔獣だろ?とか思ってたのにマジなやつじゃねえか。
うーん…でもどっかで見た事あるような…
俺が魔物をガン見してると参加者のほとんどが逃げ出した。
『ああっと!参加者の半分がリタイアだぁ!コレで残る参加者は5名となった!』
「グオォォ!!」
実況が状況を説明すると同時に魔物が吼える。
あ、思い出した!どっかで見た事あると思ったら……なんで見てすぐに思い出さなかったんだろ。
魔王軍第三侵略部隊の副隊長じゃねえか。
そう言えば最近行方不明になった、って言ってたっけ?
まさかこんな所に捕まって…しかも見せ物にされているとは。
名前が思い出せんなあ…まあいいか。
俺が考えを切り上げると同時に副隊長が襲ってきた。
「がっ…!!?」
予想外に速すぎる突進を避けきれずに参加者の一人がリングの外まで跳ね飛ばされる。
俺を含む4人はなんとか回避できた。
『いきなり攻撃を食らったぁ!これは大丈夫なのかぁ!?』
副隊長はリングの外に跳ね飛ばされた奴を襲いかかる。
ありゃま、あいつ…死んだかもな。
倒れてる奴に爪を振り上げた時にバンダナと騎士団の奴が二人掛かりで副隊長を倒しにかかった。
そして二人掛かりで攻撃を仕掛けてる間に他の参加者の一人が倒れた奴を回収し、鉄門の外に投げる。
ふむ…投げられた奴は数名の係員が受け止めるのか。
「硬い!?」
「くっ!」
副隊長に斬りかかったはいいが皮膚の硬さに刃が思ったより食い込まかったらしい。
一旦後ろに引いて態勢を立て直そうとする。
「!?」
騎士団のリーダーのバックステップと同じタイミングで副隊長は距離を詰めた。
「かっ…!?」
そしてそのまま右腕で胴を薙ぎ払いリングの外に吹き飛ばす。
闘技場の客席の下の壁に激突した騎士団のリーダーの鎧はボロボロに崩れ落ちた。
どうやら一撃でやられたらしく、壁の破片と一緒に倒れていて起き上がる気配はない。
「マジかよ…」
バンダナが倒れているリーダーを見て呟く。
俺はリーダーを回収するために副隊長の視界に入らないようにリングの外の壁際を走った。
「よいしょ」
副隊長がバンダナとゴツイ奴に襲いかかってるのを見てリーダーを鉄門に放り投げる。
係員が受け取るのを見てリングの上に戻った。
バンダナとゴツイ奴が二人掛かりで副隊長と戦い、押してるように見える。
「どうしようかな…」
あの輪の中に入ろうかどうか迷う。
副隊長はなんか怒りのあまり?周りが見えてない暴走状態だから俺にも容赦無く襲いかかるだろうしなー。
一旦冷静になるまで待つか?それとも…
策を考えてる最中にバンダナが吹っ飛ばされてきた。
「おっと、大丈夫か?」
「おお、悪ぃナ。あリャかなり手ごワいゼ」
適当に受け止めて放り投げる。
副隊長の方を見るとゴツイ奴を相手にかなり優勢だった。
ゴツイ奴が攻撃を受け流し一旦距離を取ると副隊長がこっちを向く。
「ロックオンされた?」
「ピエロは逃げタ方がいいナ」
副隊長は俺に突進して来て腕を振り下ろす。
「ピエロ!?」
バンダナはすぐに距離を取ったが俺は動けなかった。
正確に言えば腕が振り下ろされるまで動かなかった、だが。
丈夫で鋭い爪を備えた太く強靭な腕が30cmまで迫って来た時、俺は行動に移した。
よし、今が絶好のタイミングだな。
副隊長の腕を掴んで鉄棒の要領でぐるりと回り手の甲?の部分に立つ。
そして軽く飛んで肩?…おそらく肩の部分に着地する。
着地した瞬間に副隊長の腕がリングの床に当たり、穴を空け、砂埃を撒き散らした。
『なんと言う身の軽さ!軽業師さながら!正にピエロだぁ!!経歴は……不明!?なんと唯一分かってる事はユニオン国から来たと言う事だけ!!』
「名前ノ通りピエロだナ!」
「そりゃね」
俺は副隊長の側頭部のある一点をめがけて殴った。
技名はあるが、ダサいのであまり口に出したくない。
なんせ『ツボ押し拳』と言う名の拳法?らしいし。
因みに技名はツボ押し拳一式鎮静急。
頭の経穴…ツボを押す事によってエンドルフィンと言う名の脳内物質の分泌を促進させる効果だ。
わかりやすく言えば頭を冷やして冷静にさせる、ってわけ。
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