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やっぱり俺が時代を先取りし過ぎてるのか?
とは言え身に付けるだけで身体能力が上がる、とか言う指輪が世界中に出回ったら大変だよな。
悪人の手に渡ると厄介…な……あ……?
ちょっと待て、何か…何か重大な事を見逃してないか?俺。
研究を完成させた時から頭の片隅にあった違和感……ちょっと頭を整理しよう。
俺は自分の研究を完成させた上にソレを世界に広めようとしている。
自問自答アンサー。
Q.なんの研究だ?
A.魔力の無い一般人でも魔術が使える研究だ。
Q.ソレを広めるとどうなる?
A.全ての人が戦力になり魔獣や魔物を倒せるようになる。
Q.倒した後はどうなる?
A.戦う相手が魔物や魔獣から人に変わる。
Q.するとどうなる?
A.全ての人が魔術を使えるため、戦争は激化の一途を辿り…やがて地球は滅びる。
…………マズイな、コレは非常にマズイ。
俺の研究が世界を滅ぼす可能性が出てきた。
この研究が世に出回れば一般人がいなくなる…つまり世界中の人間が軍人のようになるっつー事か。
大き過ぎる力は災いを呼ぶ。と言うが…
誰でも気軽に強い力を使えれば、より強い力を持つ者が弱い者を支配し、それが悪化すると血で血を洗う暗黒時代に突入してしまう。
魔術での争いが日常茶飯事に…まるでラノベのような世界になるのか。
しかも原因は俺の研究で。
やべえな…このままじゃ人類が不幸になる未来しか見えねぇ。
人と人が…同類で殺し合う世界なんて来てほしくねえよ。
だがやはりいつの時代も争いは避けられん…か。
魔物、魔獣、天使、悪魔……ソレらの敵がいなくなれば人同士で争う。
この世の中に救いなんてあるのか?
俺がこの研究を破棄した所でせめて戦争の規模が縮小するぐらいだろうし。
…それでもいいか。
子孫のため、とか知ったこっちゃねえが女の子が理不尽に死んで行く世界なんて嫌だしな。
俺の行動原理はいつだって女が中心だ。
「いい湯だったよー」
「サッパリしたわ」
「あ…あの…」
俺がキャラに合わないシリアスな事を考えてるうちに女性陣が風呂から上がってきた。
時計を見ると草木も眠る丑三つ時の深夜2時。
いつの間にかエルーは俺の隣で寝ている。
…俺、小一時間ほど考え込んでたんかい。
クレインはリザリーにバスタオルで髪を拭かれながら歩いていた。
…まるで姉妹だなー。
「あんた達も入って来たら?」
「着替え…は洗えばいいか」
「ついでに私達のも洗いなさい」
「へいへい…エルー、行くぞ」
床で寝ているエルーの襟を掴んで引きずる。
「?コレは?」
リザリーがテーブルの上にある紙を見て不思議そうに聞いて来た。
「そのアクセサリー類の解析結果、あ、そうだクレイン」
「ひゃい!」
「その腕飾り…ちょっと改良するから置いといて」
「ひゃい!」
ひゃい!って…まあリザリーに髪を拭かれてるからまともな返事はできないんだろうな…
エルーを引きずって風呂場まで歩くと風呂場の手前で目を覚ました。
「う…」
「風呂入んぞ」
「わかった…」
服を脱いで洗濯用の桶に入れ、風呂場に一緒に持っていく。
「洗濯物はこの中に入れろ」
「おう…」
まだうつらうつらとしてるようで俺の頭の上に脱ぎ捨てやがった。
「たのむ」
「はいよ」
洗濯桶に専用の洗剤(自家製、かなり落ちる)を入れて洗濯板でゴシゴシと衣類を洗う。
この洗剤も俺の研究からとか言ってたよな…?あの頃の俺っていったいなんの研究をしてたんだ?
異常な程に汚れ落ちの良い洗剤で女の子達のブラやらパンツやらを丁寧に洗い、五分程で洗濯が終わった。
この一週間?毎日洗わされてたら、女の子の衣類を洗うのになんとも思わなくなって来た…慣れって怖ぇ。
(特別性の洗剤だから洗濯機には使えないらしい)
エルーは既に湯船に浸かっていた。
俺も体を洗い流して湯船に浸かる。
おっと…洗濯物も流さないとな。
小桶で湯船のお湯を掬い洗濯物の洗剤を流す。
「あー…大分温まったし頭でも洗うか」
「そうだな」
独り言を呟いたつもりが隣から返事が返ってきて少し焦った。
頭を洗い終わり体全体を流して洗濯物と一緒に風呂場から出る。
「あ、着替えが無いんだ」
脱衣所にある風系魔術を組み込んだ箱…脱水機に洗濯物を入れてエルーに頼み起動させた。
残念ながら魔力が無いと発動しないんだ、これが。
五分程で完全に乾くからそれまでにタオルで体を拭く。
魔術式の脱水機って便利だなー…世界でこの一台しかないらしいけど。
例により学生時代の俺の研究の成果だそうだ。
…もうどうでもいいや、今の俺には関係ないし。
乾いた衣類を取り出してエルーに渡し、着替える。
リザリー達の洗濯物はちゃんと綺麗に畳んでからリビング的な所に戻った。
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