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「助かる」


「お言葉に…甘えます…」



さっきまでの元気は何処へやら、クレインは眠そうに船を漕いでいる。



「研究所の奥の方が宿泊用になっているわ」


「寝る前に三人で一緒にお風呂に入らない?」



マキナは疑問系で言うくせにクレインの手を引っ張って連れて行った。



「眠ぃけど…その前に確かめないとな」


「お前…覗くのか!?」


「…お前は俺をどういう風に見てるんだよ」



覗くわけないだろ、バレたら…てか確実にバレるし。



報復で死ぬわ。そんなハイリスクローリターンな事を誰がするか。



「クレイン達の選んだ装飾品が危なかったら困るだろ?」


「ああ、そっちか」


「エルー…?」


「リザリーが呼んでんぞ」



エルーがリザリーの所へ行くのを見て部屋の端の机から紙を数枚拝借した。



「えーっと…解析…スキャンの術式は…」



俺はボールペンでスラスラと数枚の紙に同じ術式を書く。



書いたはいいけど…良く考えたら今の俺に魔力は無いんだった。



術式を書いても意味ねぇー…どうしようかなー?



うーん…と頭を捻っているとエルーが戻ってきた。



…結構長い時間考えてたんだな、俺。



「どうした?」


「解析魔術を発動したいんだけど魔力が無いからできんのだよ」


「俺がやろうか?」


「いいのか?」



その手があったか!確かエルーは魔力持ちだったから発動させられる。



「構わないぞ」


「じゃあ遠慮なく」



術式は省くとして、簡潔に結果だけを言おう。



マキナの首飾りは『少しの魔力耐性強化』が二つと『かなりの身体能力強化』が一つ。


ピアスは『微妙な魔力強化』が三つ。


指輪は『結構な魔力強化』が一つと残りは普通。



リザリーの首飾りは『結構な魔力強化』。


腕飾りは『結構な魔力耐性強化』が二つと普通のが一つ。


指輪は『結構な魔力強化』が一つに『少しの身体能力強化』が二つ。



そしてクレインの……だが、こいつが選んだのは半端ねぇ。



まず首飾りが『かなりの魔力強化』。


腕飾りは『能力制限』が一つと『雷系魔術強化』が一つ。


指輪は『雷系魔術の術式が組み込まれた』のが一つに『炎系魔術の術式が組み込まれた』のが一つ、『かなりの魔力強化』が一つ。



魔力強化ってのはそのまま装着者の魔力を強くするって意味。



身体能力強化ってのもそのまま装着者の身体能力を上げるって意味。



魔力耐性強化ってのは…うーん…なんて言えばいいかなぁ?



魔力許容量を増やす…みたいな?



魔力の量が人によって違うのは当たり前だけど、許容量も人によって違う。



分かりやすく…かは分からないが、例えるならば…




Aさんは魔力量100で魔力許容量は110。


Bさんは魔力量80で魔力許容量は170。



みたいな感じ。



ちなみに『魔力量』はデフォルト…常時で、使って減ってもここまでは自然に戻りますよー、って言う量。



『魔力許容量』は一時的に増えてもこれまでなら大丈夫、って言う量ね。



ただし魔力許容量を超えると大変な事になる。



身体の負担が増えるのは勿論の事、暴走状態になったり…最悪の場合は脳がヤられて廃人もしくは植物人間になるらしい。




俺も聞いた話だから本当かどうかは定かではないが。



能力制限はなんつーか、呪い?みたいな感じのやつだ。



装着者の魔力、体力、視力、聴力、脚力、握力、鼻力、筋力と言った力の類をランダムで極端に小さくするか封じる、と言うやつ。



封じるとか極端に小さくするとか…なんでこんなハズレアイテムを選ぶかねー?



見た目で選んだから仕方ないのか?



…いや、まてよ………確かクレインはチャームの魔法がどうのこうの……コレを改良すれば………!



そういう事か!だからアイツはコレを選んだのか!



なんて才能だ…!おじさんビックリだよ。



ん?歳的におじさんよりお兄さんだろ、って?



いやー、ほら。クレインから見たら俺ってもうおじさん、って歳じゃん?



まあどうでもいいんだけど。



とりあえず改良するために頑張るか…あの娘の笑顔が見たいから!



…なんつって。



雷系魔術とか炎系魔術だとかは俺の研究と一緒のヤツね。



ただコレはめんどくさいヤツだけど。



指輪自体に魔力が無いから魔力を込めないと使えないタイプ…だが、その代わり耐久性に優れてて何回も使えるって言う利点が含まれている。



おっと、エルーが選んだ装飾品の解析結果がまだだったな。



エルーの指輪は『結構な魔力強化』が一つと『微妙な魔力耐性強化』が二つ。


アクセサリーは『魔力伝導力強化』が一つと普通のが一つ。


杖は『かなりの魔力強化』だ。




魔力伝導力強化ってのは無機物に流す魔力をよりスムーズにする、って意味だ。



さっき説明し忘れたけど、魔力強化は『量が増える』じゃなくて『質が上がる』って意味ね。



魔術の威力が上がるだけ、だけど…それだけで充分でしょ。



量が増えるよりは質が上がった方が許容量オーバーになりにくいし。



だが残念ながらコレらの装飾品はオートじゃない。



つまり、身に付けてるだけじゃあ効果は無いと。



能力制限はオートだけど、その他のは使わないと力を発揮しないんだよね。



しかも、回数制限で壊れるって言う…旧時代の使えねー遺物だな。



俺だったらオート…身に付けてるだけで効果が発揮する物が作れるのによ。

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