36

「あら、生きてたの?」



リビング的な所に戻ると俺の方を見たリザリーさんが開口一番酷い事を言う。



「悪いか?」


「8割方」


「酷ぇ!」



どうやらイライラしてるようだが、俺を捌け口にするのは本当にやめてほしい。



「スッキリしたの?」


「少しはね」


「譲渡の件…どうする?」



マキナとリザリーが何かを話し合ってるのを遠巻きに見てるとクレインが近づいてきた。



「あ、あの」


「ん?」


「こ、これ…」



まるでラブレターだかチョコレートだかを渡すようなモジモジした雰囲気で小箱を差し出す。



「部下の人達に渡せなかったので…」


「ん~?……ああ」



思い出した、そう言えば別れ際にクレインに小箱を渡してたな。



「ありがとう」


「いえ、それで…あの…」


「ん?」



俺は小箱を受け取るもクレインが何か言いたそうにしている。



「中身…半分は返してしまいました…」


「中身?」



斧以外になんか入ってたっけ?見てみるか。



「全部」



小箱をひっくり返すとジャラジャラと宝石やらなんやらが床に山を作る。



「ああ、そう言えば秘宝とか入ってたな」


「す、すみません!」



クレインは深々と頭を下げた。



いや、そんな頭下げられても困るんだけど…俺は剣と斧さえ有ればそれでいいし。



「別に気にしないけど」


「本当…ですか?」



うっ…!涙目で上目遣いだと…!可愛いじゃねぇか!



「おう、どうせ要らんしな…好きな物貰っていいぞ」


「ありがとうございます」



さっきとは一転ぱあっと花の咲きそうな笑顔に変わる。



ああ…やっぱり女の子っていいなぁ。



「リザリー、マキナ、エルー、ちょっと」


「?なに?」


「なによ?忙しいのに」


「なんだ?」



エルー達を手招きして宝の山を見せる。



「わぁ!」


「なに…これ…!」


「凄いな!」



三人共驚いている…が、マキナとリザリーは女の子のような顔をしていた。



「さる国の戦利品?なんだけど、好きな物貰っていいぜ」



これは俺の、と斧だけは除けた。



「本当に!?」


「…いいの?」


「三人で相談してな」



どうせエルーは欲しい物なんて無いだろうし。



男で宝石類に興味あったら怖いわ。



「…俺は?」


「余り物でもいいだろ?」


「そうだな、そこまで興味なんて湧かん」



エルーと二人で宝の山?の前ではしゃいでる三人を傍観する。



あのクールなリザリーが目を輝かせてるのなんて見るのは何年振りだろうか。



いろんな偶然の末に生まれた魔剣を譲ってやった時以来か?



「…はしゃいでる女の子達…いいなぁ」


「テイト、本音が漏れてるぞ」


「お前も思ってるんだろ?」


「…少しは」



はしゃいでる女の子達を見るのもいいが、選び終わるのに結局三時間近くかかっていた。



俺とエルーはテーブルに突っ伏して寝てた所を起こされた形になる。



だって日付が変わるまで選んでんだぜ?コッチは眠いっつーの。



「私はコレ!」



マキナは首飾りを三つとイヤリングを三対、そして指輪を四つ。



「私はコレね」



リザリーは首飾りを一つと腕飾り?を三つとイヤリングと一対、そして指輪を三つ。



「ほ、本当にいいんですか…?」



クレインは首飾りを一つと腕飾り?を二つと指輪を三つ。



「…じゃあ、俺は…コレだ…」



眠そうな顔のエルーは指輪を三つと剣の装飾品的なアクセサリーを二つと杖を一つ。



「全然減らないなー」



半分は返した。と言ってたがそれでも結構な量は残っている。



秘宝…と呼ばれるような剣や杖、武器的な物から壺や水晶、と言った家庭用装飾品?的な物が余っていた。



多分、値段が付けられないような高価な物ばっかりだと思うんだが…



マジで俺には要らねんだよなぁ。



とりあえず床に散らばっている秘宝?を小箱の中に全部入れる。



「エルー、ナターシャ…今日はもう遅いから泊まって行きなさい」



小箱に入れ終わると目をこすりながらリザリーが提案してきた。

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