32
「さて、ナターシャを守る事についてのこれからの事だけど…」
リザリーが先のプランを練ろうと議題?に出した時に研究所のチャイムが鳴った。
「?今日はもう閉めてるハズだけどな」
マキナが疑問に思いつつも玄関先?に向かう。
「え?ちょ…!きゃっ!」
入口の所でマキナとモメる声が聞こえたと思ったら軽い悲鳴が聞こえ、カツカツと複数の足音が近づいてきた。
「責任者、リザリー・クレインはいるか」
「私だけど、なにか用?」
「これはまた…美人な研究者だ…」
突然の来訪者はリザリーの容姿を上から下まで見て言葉を失ったようだ。
そういや服装についての説明が無かったな…
上は研究者が着けるような長めの白衣で、下は膝上10cmぐらいの白のスカート。
そして靴下が黒のニーハイ。
ミニスカでも無いのにエロい見た目だ。
ちなみにマキナは靴下以外はリザリーと同じ服装だ。
やっぱり研究者だから?
「そりゃどうも、で用件は?」
「それはもう一人の責任者、マキナ・クルシェイルが揃ってから言う」
「程人く~ん…」
入口の方でマキナが情けない声で俺を呼んだ。
なぜ俺を?と思いながら入口の所に行くと、壁際の床に倒れ込んでいるマキナを三人の男が囲んでいる。
「助けて~」
「はぁ…メンドくせ」
「なんだお前…ぐべっ!?」
「なっ…!ぐっ!?」
「てめえ!…っ!?」
マキナを囲んでいる真ん中の男のわき腹を思いっきり蹴飛ばし、俺を方を向いた右側の男のみぞおちに後ろ回し蹴りを当てて沈ませ、構えた左側の男の顎に左手で裏拳を食らわせた。
三人共一撃でK.Oとか…弱すぎだろ。
俺を呼ばなくても自分でなんとかできただろ…とマキナに手を差しだす。
「えへへ…ありがと。痛っ…!」
手を取って立ち上がるとまた地面にへたり込んだ。
「足首やっちまったか…」
捻ってる程度なら立ち上がれるから…折れてるな。
相当な力で突き飛ばされたのか…許すまじ!
「カードを使うか…研究室はあっちか?」
「あ、うん」
マキナをお姫様抱っこして持ち上げると研究室まで運んだ。
「程人?どうしたの?」
「マキナが足首やっちまったから治すわ」
「変な事したら…分かってるわね?」
「うーい…」
「程人君…私ならシてもいいよ…?」
リザリーに殺気を向けられ、マキナに耳元で囁かれる…天国と地獄、天使と悪魔ってこういう事を言うのか?
まあナニもするわけ無いけどさ。
研究室に着いてマキナを降ろし魔札を探した。
「ん~…確か15番目の中頃ぐらいに書いたよな…」
拙い記憶を探りながら机の上に山積みになっている魔札の束をさぐる。
自分の物じゃないからどこに置いてるか分からんなー……あった。
「ルオナ」
魔札をマキナの足首に当てて魔術名を唱える。
「どう?」
「凄い…!直ぐに治った…!?」
痛みが無くなったからか立ち上がりピョンピョンと何回か飛ぶ。
こういうのを見ると魔札様々だな。
やっぱり女の子は無傷が一番だ。
二人でリビング的な所へ戻るとなんか空気が殺伐としていた。
「あちらがマキナ・クルシェイルよ」
「何?」
「本当か?」
「はい、マキナ・クルシェイルですけど…何か用ですか?」
来訪者二人がマキナを見て怪訝そうな顔をする。
多分、来訪者は全部で10名。
入口の所でノビてるやつを合わせてだ。
全員同じ服装で同じ帽子を被っている。
「こいつを突き飛ばしたのは誰だ?」
「は?」
「お前か?」
俺の問いに反応したのは一人。
リザリーに見惚れてた奴だ。
「いや、俺じゃない…」
言葉が途切れチラッと隣の男を見る。
「お前か」
「ぐ…!?」
その男の足首にローキックを食らわせた。
全然反応しきれずにバキッ!と鈍い音が聞こえる。
「!?何をする!」
「貴様!」
男が床に膝を着くと他の奴等が俺を囲み腰に差してる剣に手を掛けた。
「何をするって…ねぇ?やられたからやり返してんの、マキナの足首が折れてたからそいつの足首を折っただけの事さ」
女には甘くても野郎には容赦しない。
それが俺だ。
「ヤる気満々だねぇ…でもキミタチ相手が悪いよ」
「はいはい、そこまで!」
リザリーがパンパンと手を叩く。
「程人、下がりなさい」
「うーい」
仕方なく周りの男をかき分けてエルーのテーブル越しの前の椅子に座った。
「責任者の二人が揃ったわ、話を進めて頂戴」
「しかし…!」
「あいつの存在は無視して。いないと思って結構」
ひでぇ…なんて事をいうんだこいつ。
「ほら、退きなさい」
「俺にずっと立てと?」
「さっきみたいに床でゴロゴロしてればいいわ」
…本当に俺の存在を無視するつもりなのか?
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