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「はい…とりあえず周りの人に状況を説明して呼んできてもらいました」
「ふーん」
エルーのお兄さん達が止めなかったら父親は死んでただろうな。
「殴るついでに絶縁を言い渡してきた」
「「えっ!?」」
クレインを除いた女二人が驚いている。
「あんたそれって…」
「そこまでする事なの…?」
「?絶縁って親子の縁を切っただけだろ?」
「「はぁ…」」
そこまで驚く事か?と言おうとしたが二人が同時にため息を吐いた事でタイミングを逃した。
「エルーの元々の立ち位置は知ってるわよね?」
「立ち位置?家柄のか?」
「そうよ」
確か兄弟の一番下の三男で、後継者争いから弾かれたってやつか。
「その顔じゃ覚えてるようね、あんたの研究を発表した後にエルーの家柄が子爵から侯爵まで上がったわ」
「そしてお兄さん達を押し退けて強制的に後継者に選ばれたの」
リザリーの言葉をマキナが引き継いだ。
「…ああ、そう言う事か」
侯爵家の次期当主に選ばれて将来が安定した勝ち組の人生を捨てたって事か。
「察した?」
「おう、だけど自分の人生だろ?」
「子爵の時と侯爵の時では権力が違うの」
「侯爵の権力を使えばナターシャのお母さんを探し易くなるのに…」
リザリーとマキナはチラリとクレインを見た。
「ナターシャの母親の居場所なら突き止めた」
「!?」
「へえ~」
エルーはそんな事か、ぐらいの軽さで言う。
「姉さんは生きてるの?」
「ああ、だが厄介な所にいる」
「厄介な所?」
「『イグニスルス半島』だ」
「「「!?」」」
エルーの言葉にクレイン以外…俺も含めて驚いた。
なぜなら『イグニスルス半島』はイグニスの領土で最警戒区域だからだ。
イグニス…正式名称はイグニス独立国と言う。
軍事力に最も力を入れている国の一つで、世界でも5本の指に入る軍事力を持つ軍事国家だ。
イグニスルス半島の周りには必ず軍艦が徘徊していて海域に入ると警告され、5分以内に海域外に出ないとスパイ容疑で攻撃される。
イグニスに入国するのは簡単だが、イグニスルス半島に上陸するのは不可能だ。
ってかなんでそんな所にいんの?クレインが捕まった所より二つ国隣りだぞ?
「なぜそんな所に?」
「詳しくは分からないが…異質の体質とか言ってたな」
「姉さんに変わった所なんてあったかしら…?」
「あ!」
体質で思い出した。
クレインって確かチャームの魔法が使えるんだよな?
もしかしたらリザリーの姉から受け継いだ体質かもしれない。
「クレインってチャームの魔法が使えるんだっけ?」
「はい。あの…できれば…」
「魔法?魔術じゃなくてか?」
クレインが何か言いかけたがエルーの言葉に消されてしまった。
「無意識らしいから魔法じゃねえか?」
無意識で発動できる魔術は今の所は発見されていない。
魔法ならば魔力さえあれば意識、無意識に関係なく発動できる。
…ただし、魔法を使える人間なんてそう簡単にはいないと思うが。
「チャーム…誘惑ね」
「なんか男を惑わす魔女だと言われて色んな所を転々としてたんだと」
「うわぁ…本当なの?」
「…!は、い…」
昔の色々を思い出したのか泣きそうな表情になって歯を食いしばり返事をする。
「安心して、これからは私達が守るわ」
「そうだね」
「ああ」
え、なにこのノリ…俺も入ってんの?…マジで?勘弁してくれよ。
俺、こういうノリってあんまり好きじゃねーんだよなぁ。
「程人?」
「ん?」
「返事をなさい」
「なんで当たり前のように俺が入ってんの?」
俺は人間の敵である魔王の手下だぜ?
「そんなの関係ないわ」
「心を読むな」
「顔に出てるのよ、魔王の手下だろうとどうでもいいの」
嘘つけ、俺今完全に無表情だろ。
どうやったら顔に出んだよ。
「あなたの力も必要なの」
「目ぇ合わしながら真剣な顔で恥ずかしい事言うな」
コッチが恥ずかしいだろ…ってかお前ら俺に注目すんなや。
はぁ…仕方ねぇな…できる限りは協力してやるさ。
コレでも一応紳士的なアレだからな。
ってか俺が作った料理が全部食われてるんだけど…まだ一口も食ってないのに。
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