30

殴る蹴るなどの暴行を受けること10分。



やっと落ち着いたのか攻撃が止んだ。



頭や急所の所はガードしたがそれ以外は無理だった。



攻撃が速いのなんのって…キックボクサー顔負けだよ。



多分、ヘビー級チャンピオンでも勝てない。



だって後ろの壁に穴が空いてるし。



約60cmのコンクリートの壁を俺越しとは言え素手と素足で穴を空けたんだぜ?



俺、一体どれだけ死んだんだろう…そろそろ回復しなくなるんじゃねえかな。



「ごめんなさい」


「謝るならやるなよ」


「じゃあ謝らない」


「なんで!?」


「じゃあ感謝なさい、このマゾ豚が」


「ぶひぃ…」



リザリーの怒りが落ち着いたのかどうか俺には分からない。



だってこいつ俺にはいつも酷いもん。



「次からは謝らない」


「女王様か」


「感謝する事にするわ」


「おおぅ」



デレたの?え、こいつ今デレたの?



まさかのツンデレ!?そうだったのか!?



今までのは愛情の裏返し…とか?…怖いわ。



病んデレ…もといヤンデレじゃねえかよ。



「それで?」


「様々な汚い方法でこの国から追い出したらしい」


「…姉が暫くの間旅に出ると言って家を出てったのが八年前…だったわね」


「追い出そうとしたのは12年前だそうだ」



ん?まてよ…てぇ事はナターシャは何歳なんだ?



見た目13~4歳ぐらいだけど。



リザリーが知らなかったって事は旅に出てから産んだのか?



それとも産んだ後も隠してたのか?



「ナターシャ…ちゃん?今年何歳なの?」


「13…です」


「へぇ…俺たちがエルーの家に最初に遊びに言ったのは一学年の時…計算は合うな」


「リザリーのお姉さんって7歳上だよね?」



ん?俺たちが今年……で、リザリーのお姉さんが………!



17の時の子供!?まだまだ養成学校の時じゃん!



まじか~…養成学校の影のマドンナ的な存在だった時には既に身籠ってたのか~…



初恋の相手とかでは無いけど、聞かなければよかった。



なんとも言えない気持ちだな。



「四年間も嫌がらせに耐えてたんだな…」



俺の呟きにリザリーがハッとした様子を見せた。



「そう言えば…家を出て行く時に『お姉ちゃんがいたらみんなに迷惑をかけそうだから、少しの間旅に出るね』って…」


「私も覚えてるよ」


「ん~?…俺も微かに…」



確か養成学校が休みの日にみんなでリザリーの家に遊びに行った時にお姉さんは出て行ってたな。



あれ~?なんか私の美貌でリザリーがモテなくなるとかなんとか言ってたような…



うーん…思い出せない…



「あ、良く考えたらリザリーのお姉さんは遅生まれ?」


「そうよ?」



ああ、そう考えたら…あれ?養成学校は10歳からだよな?



で、リザリーのお姉さんは17歳…



エルーのクソ親父に孕まされたのが17歳…



産んだのも17…歳?あれ?おかしくね?



赤ちゃんって産まれるまでに十月十日かかるんだよな?



誕生日のすぐ後に身籠って誕生日の前に産んだのか?



それなら…ありえるのか…?



三月の終わりに誕生日で、四月の終わりに襲われる、んで一月の終わりから二月の初めに出産…?



うーん…考えるだけ無駄か。



実際にナターシャは今年13歳なわけで…あ、今年か。



て事は今は12歳、12年前は俺らは……



うん、計算的には合うな。



スッキリしたわー。



一瞬矛盾してるかと思ったよ。



俺が手を叩いて納得してるとあっちの四人側の空気がシン…としてる。



「エルーは父親から話を聞いた後どうしたの?」


「思いっきり殴った、何回も、兄さん達が止めるまで」


「私じゃ、無理でした」


「ナターシャ…もといクレインが呼んできたの?」



流石に女の子に呼び捨てはマズイか。



いきなり距離を詰めるのもなんか『こいつ急に名前を呼び捨てにしてきてるんだけど…何で?』とか思われそう。



…俺だったら思う。



仲が良くも無いやつに名前を呼び捨てにして欲しくない。



立場が上のやつだったら気にもしないけど。

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