27
「テイト!」
どこからか俺を呼ぶ声が聞こえる。
「あいつどこ行ったんだかね」
「手分けして探します?」
「テイト!出て来い!」
なぜエルーは親の敵のように俺を探してるんだろうか?
俺は今研究所の中でも最もゴチャゴチャしてる部屋の最深部でゴロゴロしている。
ゴチャゴチャしてる、と言うのは研究過程で使ったであろう材料が適当に置いてある。と言う意味だ。
ドアを開けようものなら雪崩でも起きかねんぐらいゴチャゴチャしている。
なんとか潜り込み、奥の方の空いてるスペースに隠れた。
なぜかと言えば…もちろんリザリーから逃げるためである。
エルーが余計な奴を連れて来なければこんな事をしなくても済んだのに…
「この部屋は?」
「開けてみたら?雪崩が待ってるわよ」
「…止めとく」
部屋の前で話し声が聞こえたため俺は息を潜めた。
気配はダッシュした時からすでに消している。
隠れる事に抜かりは無い!
そして隠れる事一時間が経過。
早く帰れー、早く帰れー、と思いながらゴロゴロしてるとガチャ…とドアの開く音が聞こえた。
俺が入ってきたドアとは違う方向…しかも廊下側じゃない所からの音だ。
この部屋には実は三つのドアがある。
開けると雪崩が起きる廊下側の鍵無しのドア、俺がゴロゴロと転がっている近くにある鍵付きのドア、部屋の中間地点の壁にある鍵付きのドア。
今開く音が聞こえてきたのはおそらく中間地点の壁にあるドア。
だがそこのドアの鍵は今俺が持っているから開かないはず…
「…見つけた」
「見つかったかー」
「手間取らせないで」
なんで俺が鍵を持っているのにドアが開いたのか分かった。
こいつ、鍵を分解しやがったんだ。
なんて簡単な事を見落としてたんだろう…
「逃がさないわよ」
俺はリザリーに足首を掴まれてそのまま引っ張られた。
部屋の中の2/3は山のように積み上がってるが、1/3は空いている。
俺が何を言いたいのかというと…
つまりは逃げ場が無いわけだ。
足首を引っ張られた俺はそのまま部屋の外に投げ飛ばされた。
一応受身をとったからダメージは無い。
「痛い」
「どうせ嘘でしょ」
「まあ嘘だけど」
「エルーが待ってるわよ」
「だから?」
「あんたも来なさい」
俺はリザリーにアイアンクローばりにコメカミを掴まれた。
「嫌、って言ったら?」
「強制連行よ」
アイアンクローからヘッドロックに移行される。
リザリーにヘッドロックされると当然胸が当たるわけで。
脂肪の塊だからか柔らかい。
「胸を押し付けてんぞ」
「だから?」
「気にしないなら別にいいけど」
「気にするわ」
「ぐぇ!?」
リザリーは俺の足を払って頭を軸に身体を地面に叩きつける。
背負い投げみたいな?
「足を掴めば問題ないわね」
「服が汚れる」
「大丈夫よ、毎日掃除してるから」
「そういう問題?」
足首を掴まれてリビング的な所までズルズルと引きずられた。
「連れて来たわ」
「どこにいたの?」
「廃材置き場」
テーブルの方にまたしても放り投げられる。
「久しぶりだな」
「あ、あの…お久しぶりです」
「ああ…うん」
エルーとリザリーの姪っ子が床に転がってる俺に挨拶してきた。
リザリーの姪っ子…名前は何だっけ?
まあいいか、そのうち思い出すだろ。
「じゃあ話の続きね」
リザリーが椅子に座ったのを見てマキナが話を切り出した。
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