21

俺はそこらに倒れてる椅子を片付けて座る。



「研究?」


「カードとアクセサリーのね」


「なんの研究だよ」


「字にすると魔の札と魔の石と書くわ」



魔札(カード)と魔石(アクセサリー)ねぇ。



「ふーん」


「一応あんたの研究よ」


「マジ?」


「マジよ、魔力の無い一般の人でも魔術が使えるようになる。…コレを軍事に転用すれば恐ろしい事が起きるわね」



魔力の無い一般の人でも魔術が使えるようになる?そんな事ができるのか?



だって魔術は魔法が使えない人間が生み出した技術だろ?



魔力が無い人間には魔術が使えないのが世界の常識のはずだぜ。



魔物や魔獣、悪魔や天使は魔法が使えるってのも世界の常識だし。



だから人間は悪魔や魔物に対抗するため魔法に代わる手段として魔術を開発したんだろ。




でも本当に出来んのか?



半信半疑どころか二信八疑ぐらいなんだけど。



信じるが二割、疑うが八割。




「どうやって?」


「覚えてないの?」


「うん」


「…はぁ、一応秘密になってるけど…いいわ、開発者には教えてあげる」



リザリーは心底面倒くさそうな表情でため息を吐いた。



…流石の俺もそれは傷つくぞ。



ゴソゴソと部屋の端っこにある机の引き出しを漁るリザリー。



「あった」



紙切れを手に俺の所に歩いてきた。



「いい?魔術は魔力と術式で発動するでしょ」


「術式って魔法陣とか呪文とか結界とかか?」


「方法は様々ね、で、ソレをカードに書き込んだのがコレ」



ピッと人差し指と中指で挟んだカードを俺に見せる。



「コレには魔力を込めたルーンで魔法陣、呪文を書き込んであるわ」



…ああ、そういう事ね。



あとは発動条件だけだから誰にでも使えるってわけか。



「後は魔術名を言うだけで発動出来る、と言うわけよ」


「画期的だな」


「いちいちツッコまないわよ…で、魔石は魔札と同じ技術を宝石に仕込むわけ」


「その宝石はピアスやネックレス、指輪に使われるからアクセサリー…ねぇ」



魔札と違って身に付けてるからどんな状況でも魔術が使えるのか。



うーん…なんかそんな系な事をやった記憶があるな…



詳しくは思い出せないけど。



だけど方法は思い出した。



「思い出したぜ、確かにやってたな」


「やっと思い出した?一応この研究はまだ8割方…って所ね」


「へぇ…結構進んでるんだな」



俺の時は他のと同時進行だったとは言え半年はかかったのに。



「…あんた今、早いと思ったでしょ?」


「…読まれてた?」


「言っとくけど、5年かけてやっと8割よ?しかもあんたの研究をなぞって」



わお…こういう時なんて言えばいいんだろうか…?



「あんたの研究結果は抽象的すぎんのよ…本人にしか理解出来ないぐらいにね」



え?なんで俺また責められてんの?



「こっちは色んな専門書なんか読んで、当てはめて地味に研究してんの」


「はあ…」


「あんたが読めば一ヶ月では実用化まで出来たのよ!」


「ふーん…」


「謝りなさい!」



ええ!?なんで!?なんで俺が謝らないといけない雰囲気になってんの!?



「えーと…ごめんなさい?」


「なんで疑問系なのよ、まあいいわ」



なんでこいつこんなに態度が横柄なんだ?



昔からの事とは言えなんか釈然としねぇな。



「話を戻すわよ、その二つの研究も残すは実用化だけなの」


「二つ?」


「魔札と魔石よ」


「合わせて一つじゃないんだな」



どっちも似たような感じに思えるんだが。



「一つ作るにも大変なのよ…二つまとめてなんて無理」



の割には二つとも終わりがたーなんだよな?



…言わないけどさ。



言ったら揚げ足取るな、なんて言われそうだ。



「その為に書籍区域まで行ってデロッサを無理やり連れ戻して来たのに…」



あ、コレまた責められそうな気がする。



「あんたが帰ってきたら今までの努力なんて無駄じゃない」


「無駄ではないだろ、ちゃんとした理論で説明できるし」


「慰めにもならないわね…この五年間無駄に過ごしたわ」



リザリーは腰に手を当て下を向いて落ち込んでいるような素振りを見せた。

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