22

「あの少年で何をしようとしたんだ?」


「あの子は魔力持ちだから魔札と魔石作りの協力をさせようと思ってね」


「へえ…魔力持ちとは珍しいな」


「だから拾ったのよ」



…魔力がなかったら拾わなかったのかよ。



俺が微妙な表情をしてるとリザリーがまた部屋の隅の机の引き出しを漁っている。



「さっき見せた魔札とコレが一応試作品よ」


「おっと」



ポイッと俺の方へ石を投げてきた。



俺は片手で普通に受け取ると何の石かを見てみる。



「アメジスト…か?」


「正解」



良く見ると石の中に文字が浮かんでいた。



「おお…!石の中にルーンが刻まれてるのか?」



石の中央の方に魔法陣が浮かび上がっていて、どうやらその魔法陣はルーンで刻まれているらしい。



発動する魔術は中級と言った所だろうが属性までは分からない。



「我、風の精霊に願う…?悪しき物を退治せんが為に汝の力を貸し与え給へ…?」


「良くそんな小さい字を解読できるわね」



リザリーは呆れたように俺の手から石を取り上げた。



「…風の魔術か?」


「正解よ、でも読み上げて発動したらどうするつもりだったの?」



責めるような目つきで俺を睨む。



「そん時は俺が作ったさ」



たった今、思い出した。



ソレらの作り方に使い方を。



確かにリザリーの研究はまだ8割方と言った所だろう。



これじゃ実用化しても量産なんて出来ない。



と言うか実用化までいくかすら分からないと思う。



「あんたが…?」


「コレの使い方は分かるのか?」


「…まだよ、それが今の一番の壁ね」



やっぱりな。



いくら作り方は分かると言っても使い方が分からないんじゃあ話にならない。



しかも作り方もかなり効率の悪いやり方だ。



だけど一番安全で一番人道的ではあるかな。



まさか俺がリザリーに物を教える日がくるとは…夢にも思わなかったぜ。



「俺が、その研究を完成させてやるよ」



俺は両手を広げて自信満々にリザリーに言ってやった。



そのあと俺とリザリーは今さっきまでいた白い部屋に移動。



マキナにも声をかけたがなんか研究資料を整理するそうだ。



実はマキナとリザリーの二人でアノ研究をしてたんだと。



研究をしてた理由を聞いてびっくり。



「あんたの敵討ち」


「マジ?」


「9割方冗談よ」


「1割は本気なんかい…」



どうやら研究を完成させたら魔物と全面戦争を起こす気だったらしい。



「本当はただの八つ当たりよ」


「お前らしいな」


「この私からオモチャを奪った報いをたっぷり思いしらせてあげるつもりだったわ」


「俺はお前のオモチャ扱いかよ…」



リザリーらしいと言えばリザリーらしい内容だった。



そして本題に入る。



「用意する物ってこれでいいの?」


「充分、ありがとう」



魔札を作るうえで必要になる物をリザリーに用意してもらった。



スズリと小筆、白紙のカードを十数枚、そしてカラー油性ペンを何本か。



「とりあえず、俺がやってた実験の内容を確認するぞ?」


「ええ」


「俺がやってたのは紙や宝石に魔術を詰め込む事で、魔力の無い人たちが魔術を使えるようにする事ではない」


「そう書かれてたわ」



自己中な実験を大衆の為の研究にする辺りリザリーたちは素晴らしい考えをしている。



「そしてその方法だ」



俺はリザリーからスズリを受け取り床に置く。



そしてさっき机の上から拝借したカッターで自分の手首を切る。



「ちょっと!何してるの!?」



それを見ていたリザリーが焦ったような声を上げた。



スズリに俺の血が溜まるのを見てカッターをポケットに入れる。



「手首大丈夫!?」


「ん?ああ」



俺の手を取り傷口を確かめようとした。



「傷が…無い…!?」


「それは後から説明するよ、持ってて」



床のスズリを拾い上げてリザリーに渡す。



「今の俺の血には微力ながら魔力があるんだけど」



元々は魔力なんて無かった俺も魔物になるとなぜか魔力持ちになっていた不思議。



「え?それって…」


「その辺も後で説明するよ、見とけ」



リザリーから白紙のカードと小筆を奪い取り、小筆をスズリに溜まっている血につけた。



「本当は魔力持ちの血をインクで薄めるんだけど…」



白紙のカードに魔法陣とルーンをさらさらと書き込む。



「これがさっきリザリーが見せたカードね、内容は違うけど」


「え、ええ」


「作り方は今見せた通り…次に使い方だけど…」



白紙のカードを一枚適当な位置に投げる。



「対象を決めないとカード自体で発動するんだよ…ロックオン、ファイヤ」



魔術名を唱えると床に落ちていた白紙のカードが勢いよく燃え上がった。



そして手に持っていたカードがボロボロと灰になる。



「これが使い方だな…二通りの内の一つ、あと一つは…」


「凄い…」



俺はまたさらさらと白紙のカードにさっきと同じものを書き込む。



「ファイヤ」



書き込んたカードを投げて魔術名を唱えると投げたカードが燃え上がる。

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