34
「…全っ然着かねぇな」
王都を目指して一直線に進む事早五日。
急いで進んでいるはずなのに街や村すら見えてこない。
「もう山も森も七つは越えたはずなのに…」
部下共が木や草を食べてるせいか後ろを振り向くと道みたいになっている。
待ち伏せとかは無いけど…後ろから追いかけられたらどうしよう。
山なんて線の剃り込みみたいになってるし。
そんな考えをしながら森を抜けるとやっと遠くに街が見えた。
「あれが王都か」
遠くからでも分かるデカい城。
その下の方に城下町みたいなのがある。
魔王城は城下町とかないのに…
最初は城下町から攻めてから城の方を攻め落とすか。
俺は城下町の方へと走った。
部下共も俺の後ろから速度を速めてついて来る。
なんだかんだこいつらって俺をたててるっぽいよな。
俺の前を進もうとはしないし。
「いや、待てよ」
俺はある事を思い出し走るスピードを緩めた。
王都って確かテロがうんたらかんたら…
結構な規模って言ってたっけ?
うーん…と考えながら走るスピードをどんどん緩めていく。
今では普通に歩くスピードと変わらない。
「まあいっか」
部下共に城下町を囲まして、俺が一人で城に行って交渉、その間に部下共が城下町を侵略…ナイスアイディアだ。
俺って実は策士なのかもしれない。
この天才的頭脳さえあればなんでもできそうな気がする。
…無理か。
人にはできる事とできない事があるからな。
俺は人じゃないけど。
かと言って人でなしってわけでもない、のかな?
そんな考えをしてる内に城下町の目の前まで差し掛かっている。
俺はさっき考えた事を部下共に命令して城下町に入った。
俺は軽く身構えて入ったが、城下町は特に何もなく平穏だった。
テロがあったって言うのは嘘だったのか?
街を見渡すと路地の中や街の隅っこの方に隠すように瓦礫の山がある。
それが気になり注意深くあちこちを見ると色んな所に傷跡が残っていた。
屋根が傷ついてたり、包帯を巻いた人が路地の方に多くいる。
果ては元噴水があったであろう場所に土の山。
隠し方が雑すぎる。
だがテロがあったってのは本当らしい。
俺はそのまま大通りを抜けて城の方に向かって歩いて行った。
運が悪い事に街の人達の平穏もつかの間だ。
あと28分で俺の部下共がこの街を襲う。
その前に交渉をしたい所だけど間に合うかな?
「ここより先は通行証が必要だ」
城の門の前に行くと門番の一人が剣に手をかけて言い放った。
「王様に会いたいんだけど」
「用件はなんだ?」
「報告に」
「ちょっと待て」
もう一人の門番の方へ行き、何やらごにょごにょ話している。
そして無線機を取り出して何やら報告してるようだ。
…ここで門前払いなんてされたらたまったもんじゃない。
門番を殺し…もとい倒してでも城に入らないと。
「許可が下りた」
「運が良かったな」
どうやら俺を通してくれるらしかった。ありがたい。
「だがその前に」
「テロリストでは無いかどうかの確認をさせてもらう」
は?テロリスト?俺が?ないない、なに言ってんのこいつら。
「…どうやらテロリストでは無いようだな」
「もういいぞ」
俺がバカにしたような顔をしたからか、なんかすんなり通してくれた。
あ、そっか。
もしテロリストだったら、あの質問された時に緊張した感じになるもんな。
頭いい事を思いついたものだ。
俺はそのまま門をくぐって城の中に入って行く。
門をくぐると城の庭みたいな所に出た。
うわお、閉店ガラ……これ以上はやめとこ。
一人で事故るかもしれん。
にしても立派な庭だなー。
ローズガーデン的な?
英語にしたら『Rose Garden』みたいな。
そんな雰囲気。
めっちゃ焼き払ってみたい…
綺麗なバラが勢いよく燃える様は面白いと思う。
そんな考えをしつつ俺は庭を抜けて今度こそ城の中に入る。
「おや?お客様ですかな?」
ドアを開けるとちょっと白髪まじりで燕尾服を着たおじさんが話しかけてきた。
え、こいつ、もしかしてずっと待機してんの!?
「あ、はい。ちょっと王様に」
「ああ!そういえば門番の人から連絡がありました。どうぞこちらです」
燕尾服を着たおじさんは恭しく頭を下げると、案内しますね。と言って先に歩き出す。
うやうやしく…どんな意味だったっけ?今度辞書で調べてみよ。
そういや…魔王の六体で魔王の左腕と呼ばれてる人間(100%人間)って『恭亮』って名前じゃなかったっけ?
きょうすけ、ね…まさか魔王軍でも数少ない人間の内の一人が同郷とか凄い偶然なんだけど。
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