13
は?俺が魔物の力を発揮する?するわけないだろ。
暗示をかけてまで押さえ込んだ力をそんな簡単に開放できると思うか?
…まあできるけど。
「そこまでして俺と戦いたいのか?」
「…当たり前…だ」
「残念だけど俺は力を開放する気はない。諦めろ」
「…やはり…隠してたか…」
『やはり』?…気づいていたのか?それともさっきの話の流れからか?
俺の力は自己暗示によって人間と同じぐらいの力しか出せないようにしてある。
隠しているわけではないから気づくのには無理がある…と言う事は後者か。
人間は常に80%の力までしか出せないようになっているらしい。
残りの20%は自分を傷つけないようにするために非常時以外は抑えられているという。
常に80%に抑えられている状態で過ごしている人が100%の力を開放したらこれくらい、とか気付けるか?
答えはnoだ。
意識的に抑えてるなら少し探れば気付けるだろうが、無意識に抑えられてるなら気付けるはずがない。
だから、殺してもう一度冥妖の門を開けさせる…とか恐ろしい事を考えだしたのか。
…なんて恐ろしい奴だ。
しかし俺は今殺されようとも力を開放する気はない。
理由は簡単。気が乗らないからだ。
「ただ邪魔だから押し込めただけで隠してはないさ」
「…なぜ…邪魔だと思う…なぜ…使わない…?」
「人間の輪の中に入るためだ。他に方法がなかったんだよ」
まあ結局のところ生命力と回復力が抑えきれなくて輪の中から追い出されたから抑えた意味は無かったんだけどね。
だが意味無くても、力を抑える自己暗示と言うのはそう簡単には解けない。
でもまあ頑張れば解けない事はないんだけど。
だから別に後悔はしていないし、人間に警戒されない分プラスになってると言ってもいいぐらいだ。
「…輪…?…魔物になったのに…まだ人間に未練が…?」
「人にせよ魔物にせよ…居場所は欲しいからな、どこでもよかったんだよ」
「…居場所…か…なら…」
奴はエルーに剣を向ける。
「…お前が力を開放しないなら…エルーシャを殺す…」
「…なに?」
「はっ!やるのか?」
奴の言葉にエルーは鼻で笑って剣を構えた。
俺はエルーが殺されても開放しないだろうな…多分。
「お前らは仲間内での戦闘は禁止されているだろ?」
「…なら…」
奴は少しの間だけ俯いて何かを考えていた。
そしてハッとしたように顔を上げる。
「…お前は魔物…確か、魔物は群れと…報告では…そうか…!…その手が…」
こいつまたブツブツ呟いてるよ…んっとに気味悪いな。
エルーも剣を構えたまま引いてるし。
「…お前が…力を出さないなら…ここら一帯にいる魔物を…全て殺す…」
「なに!?」
それはマズイ!部下達が全部ヤられたら俺に責任が降りかかる!
責任を取らされてしまう!
それだけはどうしても避けないと…!
「…どうだ… ?…仲間が殺されるのを…黙って見とくのか…?」
「はぁ…オーケイ。分かったよ、俺の負けだ」
仕方ない…部下達が殺されて責任を取らされるぐらいなら、力なんていくらでも開放してやるよ。
「…そうか…」
「その代わり2分待ってもらうぞ?リミッター…暗示を外すのには少しばかり時間がかかる」
「…いくらでも…待つ…」
ふぅ…体の力を全部抜いて…
無心…無心…無心…
…
……
………よし。
これでリミッターは外れたはず。
そんな感覚だ。
体中の力が元に戻った感じがする。
回復力もダメージを受ける前の50%程度までなら戻った。
傷も全て治ったし。
少しばかりの高揚感が湧いてくる…
「エルー、頼む、剣を貸してくれ」
俺は手を合わせて軽く頭を下げた。
「大丈夫か…って傷が治ってる…」
「ども、少しばかり離れてた方がいいと思うぞ?チビ達にも言っておいて」
「大丈夫なのか?お前…さっきと対して変わらないように見えるが」
「大丈夫。それより、あいつが待ってる」
いつの間にか奴は30mぐらい離れた場所に移動してた。
そしてエルーは渋々と言った感じで離れて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます