06
あーあ、上半身と下半身が分かれちまったなー。
右腕と左脚も切断かよ。
流石に切断されると痛いんだよね。
「まずは一匹!」
「次だ」
「駆逐してやる」
俺をバラバラ?にした三人は後ろにいる部下達の方に行った 。
とりあえず俺は残った左腕で器用に下半身をくっつけて回復。
次に片脚でぴょんぴょん跳ねながら左脚の所に移動して、拾ってくっつけて回復。
残った右腕も拾ってくっつけて回復。
よし、全回復した。
さて、部下達は…
「オラオラ!どうした!」
「所詮この程度か」
「魔物って弱ーい」
うん。俺の言った事をちゃんと守ってる。
最初の命令は聞かなかったのに…やはり三年ぶりだから聞かなかったのか?
どうしたものかね…
つーか、せっかく掃除したのに俺の血で汚れたし。
全然全く致死量にはいかないとしても結構な量は出たな。
「お前ら止めろ!!」
ついにリーダー格の奴がキレた…のか?なかなかデカイ声だ。
「う…」
「戻れ」
「「はい」」
三人はリーダーの元へ戻って行った。
「すまない、部下達の非礼は詫びよう」
「あ、いえ、そんな」
え、なにこいつ?なんで俺に近づいてきたと思ったら頭下げてんの??
え?俺一応魔物だよ?魔物って倒す対象じゃないの?
俺が軽いパニックになってると、リーダー格の男は俺をじっと見ていた。
「もしかしてお前…やっぱりか!」
は?またこいつなに?意味わからないんだけど。
「テイト!テイト・トオマだろ!?」
「なんで俺の名前知ってんの?」
気味悪い。
「俺だよ!エルーシャ!学校時代の同じクラスメイト!よく喋ったじゃないか!」
エルーシャ?エルーシャ…エルーシャ…エルーシャ… ……あ!!
俺がまだ死ぬ前に通っていた養成学校時代の!
「思い出した!お前、エルーか!」
そういや仲良かった奴が何人かいたな。
仲が良い奴は数少なかったのになんで忘れてたんだろ?
数少なかったからか?
「お前…死んだと聞かされたが…生きてたのか?」
「いや、多分死んだ」
一回死んだからこそ人間を辞めて魔物になろうと思ったんだよな。
後悔も未練も無い。
今思えば人間って簡単に辞められるんだな。
「いや、おかしい…死んだらここにはいないはずだろ?」
「まあそうなんだけど…」
なんて説明したものか…
「実は生き延びてたのか?話を聞いた限り生き延びれる状況ではなかったが…」
「へぇ?なんて聞いた?」
俺の死亡報告はどんな風になってるんだろうな。
「『テイト・トオマは魔物の群れからチームの仲間を逃がすため、一人で囮になった。
その後魔物の群れはトオマが逃がしてくれた仲間と増援で殲滅し、その場の血液の量からして…トオマの死亡が確認された。
おそらく魔物達に喰われたのだろう、と言う現場の判断だ』だったかな」
「ははっ、そんな大層なもんじゃないぜ」
俺が死んだのは、同じチームの仲間に後ろから斬られると言う裏切りのせいで死んだんだからな。
囮?確かに囮には使えただろうな。
人間だって食べ物だ。エサに夢中になればそりゃ追って来ないだろ。
「どうした?」
黙り込んだ俺を見て心配してくれているのか?流石は友達だ。
だが今ので思い出した。
俺を裏切って殺した奴らの顔を。
別に『憎い』とか『殺したい』とか『復讐したい』とか思ってるわけじゃない。
当時弱かった俺が悪かったんだから。
弱肉強食の世の中で自分を守れるのは自分だけだ。
他人に守ってもらえるわけじゃない。
自分以外は全員敵。
隙を見せた自分が悪いんだから憎みようがない。
復讐はただの八つ当たりで責任転嫁だ。
俺はお前らを憎んでるわけじゃない。
そのお前が目の前にいても別に、だ。
だからそんな化け物を見るような目で見ないで欲しいな。
「なあエルー」
「なんだ?」
「あいつはお前の補佐官か」
俺は顔を思い出したばかりの奴を指差した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます