07

「ああ、あいつも同期だ。思い出したのか?」


「まあな」


「じゃあ聞かせてくれ。5年前のあの日に何があった?」


「それは俺に聞くよりあいつに聞いた方がいいぞ?」



周りから見た俺の顔は多分意地悪な笑顔なんだろうな。



「マナタラにはもう聞いた」


「あ、じゃあ俺が裏切られて死んだって知ってんの?」



なーんだ、せっかくシリアスで決めてたのに…つまんねぇな。



「え?」


「え?」



え?なんかまずった?



何この空気…いたたまれないんだけど。



「どういうことだ?」


「いや、どういうことも何も…」



顔が怖い!仕方ない…説明するか。



出撃した先の魔獣の群れが予想以上に強くてだな。



誰か一人囮にして増援呼んできたら倒せるんじゃね?



よし、前線で戦ってるあいつを囮にしよう!



「てなわけで俺は後ろから剣を突き立てられて、あげく斬られたわけ」



そんで魔獣の群れの真ん中に放置してあいつらは逃げてった。



「これが真実、でもそのあと魔獣の群れは倒せたんしょ?俺一人の犠牲で魔獣の群れが倒せたんなら安いもんじゃね?」



チームでもかなり苦戦してたしな。



「そうか」



おお、エルーさんが物凄い眼光で補佐官(名前忘れた)を睨んでるよ。



「いや、まて…おかしいぞ…」



え?俺の話のどこに矛盾が?やばい、マジな話なのに信じてもらえない系?



「お前…死んだんだよな?」


「おう」



…?何が言いたいんだ?こいつ。



さっきから死んだ死んだ言ってるじゃねえか。



「ならテイトはなぜここにいる…?」


「へ?」



俺とした事が間抜けな声を出してしまった。



「死んだならここにはいないはずだろ?」


「ああ、なんだその事か」


「は?」



今度はエルーが間抜けな声を出す。



順番か!



「死ぬ直前?いや、死んだ後もか?異常なぐらい生きる事に執着してたら扉を開いた」


「扉?」


「そ、扉。ドア、とも言えるかもな。とにかくそれを開いたら生き延びた…違うか、生き返った」



魔物として。




人間を辞めて魔物としての生涯を生きる事になったとしても、俺は生きる事を選んだ。



「人間が魔物として生き返るぅ?そんなの聞いた事ないぞ?」


「冥妖の門…」



エルの問いに俺の代わりにさっき襲ってきた三人組の一人、一番背の低い奴が答えた。



「めいようのもん?なんだそれ何か知ってるのか?」


「あんまり詳しくは、知らない」



『冥妖の門』…どっかで聞いた事あるような…



…………思い出した!



俺がまだ小さかった頃に故郷で聞いた言葉だ!




『妖怪はね、冥妖の門より現れるんだよ。

冥妖の門は冥界に行けなかった人…つまり生前に悪さをした人が通ると言われてるのさ。

死んでも人に迷惑をかけるなんて本当に迷惑な話さね』



『妖怪の原点は人。

妖怪は生前悪さばっかり繰り返し人に迷惑をかけまくった人の成れの果て。

妖怪はみんなから忌み嫌われ退治される存在』




『程人は妖怪にならないためにも立派な人間になるんだよ』




誰の言葉だっけ…?言葉は思い出せたんだけど、顔が思い出せない…どこか懐かしい感じはするんだけど…




うーん…



…まあ誰でもいっか。



つーか、生前悪さをしてない俺が冥妖の門を通ってから悪さをするようになるとか…皮肉な話にも程があるわ。



言葉をくれた人ゴメン…



せっかく忠告してくれたのに結局俺は妖怪になっちゃった☆



…故郷に帰ったらぶっ殺されるな。マジで。





んで俺の正体は実は妖怪か。



これで俺の抱えてる謎が一気に解けたわけだが…いやぁスッキリした。



通りで血を操れたり影を移動したり出来るわけか。



生命力と回復力は殆どの魔物と一緒だけど。



とりあえず弱点が太陽の光だけとか、そんなローリスクハイリターンな能力の魔物とかいんの?とか思ってたけど、 妖怪か。



流石は不思議の国。



妖怪の能力も不思議だらけだ。

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