04

村で一晩過ごした俺らは、次の街だか村だかに向けて現在進行中である。



とはいえ地図が無いから道なりに進んでるだけ、なんだけど。



「くそっ!」

「撤退だ!」

「急げ!げぶっ…!」



道中色んな人間が待ち伏せしてたりしてるんだけど、そこまで強くない。



せいぜい足止めと言った所だろうか。



血気盛んな部下達は一人も逃がさずに仕留めていた。



魔物が部下だとご飯をあげる心配をしなくていいので楽だ。



仕留めた動物やら人間やら…たまに果実なんかを食べてるから…心配なのはむしろ自分の事。



俺はやはり元人間だから食べ物については料理された物が良い。



生肉は臭いが駄目なんだ。



「魔物!?」



また待ち伏せか?いや…三人しかいないからその可能性は薄いな。



「しかもこんなに大量に!」


「せっかくここまで逃げてきたのに…!」



んん?ワケありか?



とりあえず右手を上げて襲いかかろうとしている部下共を止める。




「…?襲いかかってこない?」



三人の内の一人が身構えたまま不思議そうに俺を見た。



「お前らワケありなのか?」


「なんだお前は?」


「こいつらの直属の上司だよ」


「この魔物の群れの親玉か!」



一番若いお姉さん?が手に持っている剣で切りかかってきた。



「おっと」



あら、避けたつもりだったのに右腕が斬り落とされちゃった。



いい攻撃だな。



とりあえず落ちた右腕を拾ってくっつけた。



これぐらいならくっつけるだけですぐに治るさ。



念のため指を動かして感覚を確かめる。



「!なんだお前…!化け物か!」


「それは置いといて、こんな所で何してんの?待ち伏せ?」



待ち伏せだったら即部下のエサになるんだけど。



「違う、逃げて来たんだ」


「逃げて来た?」



これは意外な展開だな。



「ああ、色々あってな」


「待ち伏せじゃないんなら…まあいいか。逃げていいよ」


「なに?」



んん?言い方が気に障ったのか?



「よせ、見逃してくれるならありがたいじゃないか。さっさと逃げるぞ」


「あ、ちょい待ち、ここからどれくらいで次の集落?に着く?」


「だいたい…1、2時間ぐらいだ」


「そ、ありがと」



よし、進撃開始だ。



俺は部下達にお前らこの三人に手を出すなよ?と言う意味を込めたサインを出して、先へ進む。



それからも待ち伏せしている人間達を倒しながらも進む事、三時間。



ようやく家らしき物が見えてきた。



どうやらそこそこの大きさの町らしい。



結構賑わっている。



「よし、好きなだけ暴れてこい。ただし…わかってるな?建物の被害はなるべく出すなよ」



部下達は咆哮をあげると町へ突っ込んで行った。



部下達が突っ込んで行って5分もしない内に町は阿鼻叫喚に包まれた。



遅れて俺が町に入ると町の中は大パニック。



逃げ惑う人々で混乱している最中に俺の部下達は立ち向かう男共を倒しては食い散らかしていた。



「あーあひどい有様だこと」



まあ俺は基本的にただ見てるだけだ。



今の俺は剣や武器の類を持ってるわけじゃないし、部下の魔物共みたいに鋭い牙や爪があるわけでもない。



ただ回復力と運動能力が人より少しだけあるだけ、だ。



回復力はさておき、今の運動能力も人間の頃からあまり変わってないし。



とは言えただ見てるだけなのも暇である。



「た、助け…」



ゴキュ。



流石に首を捻ることぐらいなら俺でもできる。



男に助けを求められてもな…



俺が今見てるのは部下が女を襲わないかどうかなんだけど。



もはや監視?と言ってもいいかも。



一回言っただけで聞けばいいんだけど…二、三回言わないと聞かないんだよなー。



「きゃ…!」



ほらまた。



「とう」



ボギッ!



あ、なんか俺の体から嫌な音が…



うん。地味にじわじわと痛みがこみ上げてくるんだけど。



「大丈夫ですか!?」




女の子が近寄ってくる。



俺に攻撃した部下はもう別の場所へ移動していた。



あのクソ…!次やったら覚えてろよ!



「ああ…うん」


「助けてくれてありがとうございます」



女の子はわざわざ頭を下げてお礼を言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る