第3話 火星人と海老

私は今日子。


はぁ…何か疲れたわ。


あのサーモン…何星人だったのかしら。


「あのサーモンは水星人ですタコ」


水星人なの?


まぁ、一番魚類にはあってる星ね。


「じゃぁ、そろそろ火星に向かいますタコ」


嫌だって言ってんでしょ。


ワタシ、チキュウ、スキ。


そもそも何で私なの?


他に強い人いっぱいいるでしょ?


「私の強さは53万ですタコ」


意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ。


強さは53万って、せめて戦闘力って言えよ。


そして何で火星人が地球のアニメのこと知ってんだよ。


はぁ…本当にどうしたらいいのかしら。


ただ、全宇宙を巻き込んだ大戦争なんてやられたら…


「地球も無事では済まないですタコ」


タコタコうるせぇな、このタコ。


無理矢理タコを語尾に付けるんじゃねぇよ。


そして何でタコだけ声が聞こえるの?


サーモンも同じことできないの?


「企業秘密」


あっそう。


企業があるのね。


「今日はキレがないタコ」


もうツッコむのも疲れたわ。


でも…あのサーモンも私を狙ってたわね。


私の力って…一体…


やだ、こんなこと考えてたら怖くなってきた。


『怖がる必要は…ないぜ!』ビターンッ!


また…か。


次は何?


【エビ】でした。


『さぁ、俺と一緒に来な!お姉さんよ!』


ねぇ、ちょっと聞いていい?


何で私なの?


『まさか…お姉さんは…自分の力に気付いていないのかい?』


私に力なんてないわよ。


ヤンキーでもないし、喧嘩もしたことないし。


『腕力…じゃないんだよな。能力…と呼ぶべきか』


能…力…?


女子…力…?


まさか、私の溢れ出る女子力が異星人を引き付けてるの!?


『いや、違う』


「それはないタコ」


否定早ぇな、おい。


貴様ら覚えてろよ!


女の人にはなぁ…!


嘘でも…!!


お世辞でも…!!!


嬉しい言葉があるのを覚えておけぇぇええ!!!!


出でよ!!


【白醤油】!!!


まずは…貴様【エビ】からだ。


ほぅら、冷たいだろ?


このまま氷の中でお眠り。


これで貴様は身動きが取れないはずだ。


そして…頭と尾を両手で押さえ、頭の方の親指を貴様の頭にねじ込む!


タイトなジーンズにねじ込む私と言う戦うボディのように!!


頭を引き離せば自然と背ワタも抜けるはず。


抜けなければ…楊枝で掘り出してやりなさい!


そして足をもぎ取って…塩ゆでよ!


そうね、2分程ゆでて全体に赤みを帯びたらOKよ。


茹で過ぎはダメよ。固くなっちゃうから。


そしてここで【白醤油】よ!【白醤油】なのよ!!


別の鍋に【白醤油】【みりん】【料理酒】【砂糖】を投入よ!


もちろんさっきもぎ取った【頭】もね。背ワタはノーよ!


そして塩茹でで残った茹で汁を加えて一煮立ちさせるの。


エビは避難させておいてね。一緒に煮立たせると身が固くなりすぎるわ。


【白醤油】は、本来の伝統的な作り方ならば【醤油】とは言えないのよ。


なぜならば【醤油】の定義は【大豆】を加えることだから。


伝統的な【白醤油】は小麦だけで作られるの。


小麦を精白し、そこから麹を作り出すの。


そして塩水を加えて【低温】で熟成するのよ!


そう、【低温】で熟成するの。


だから【生きた酵母】が白醤油には含まれてるわ。


実は健康にもいいのよ。


今はみりんや料理酒が入った【白だし】が有名ね。


便利よ、あれ。


さらに熟成期間が短いのも特長よ。そうね、3か月程かしら。


だから色も綺麗な琥珀色なのね。


ただ注意が必要よ!塩分は高いわ。


【濃口】や【淡口】の使用量の2/3程度に抑えておいた方がいいわ。


そして出来上がった【出汁】を避難させておいた【エビ】にぶちこんでやりなさい。


頭は入れないようにね。ザルでこすといいわよ。


そして半日冷蔵庫で保管よ。


そうすれば…じっくりと旨味が染み込んだ【エビの旨煮】の完成よ!


何て美しいの…。


つやつやと輝く琥珀色の出汁の中に、紅白に色づいたエビが踊ってるわ。


軽く温めて食べてもいいし、お弁当やおせちなんかに入れてもOKよ。


冷たくても美味しいのが旨煮のいい所なの。


また地球を救ってしまったわ。


はぁ…私の力って…何なの?


美味しいわ。


エビの旨煮美味しいわ。


明日のお弁当に入れよ。


それでは今日も


御馳走様でした!

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