ひげ

さて、どうしたものか。


私は、かれこれ1時間は鏡の前でうなっている。

・・・いや、今は容姿のことで悩んでいるわけではない。

今は、だけどね。


朝起きたら、顔にヒゲが生えてた。

おじさんのアレじゃなくて、犬とかの動物の。


カミングアウトが突然すぎて、戸惑っている方もいるかもしれない。

でも、私なんて寝ぼけた中でのカミングアウトだったんだからね!?


とりあえず、会社は仮病で休ませてもらった。


でも、そこで解決するほど、簡単じゃない。


どーすんだコレ。


いや、現実問題ヒゲは切ってしまえばいいのだ。


そうじゃないのだ。


だって、怖くね?

人間なら、ありえないことなわけで。

SNOWとかのアプリだったら、

「盛れたね~♪」でいいのだけれどね。


そうじゃないのだ。


なんだろう?

病院?獣医?親?

それとも、なんかの研究所?

誰に相談するべき?


私、なんか遺伝子おかしいのだろうか?


やだやだ怖い怖い怖い!!


「テッテレーン!ドッキリ大成功~☆」


急に、部屋に誰かが入ってきた。

彼女は、隣に住む親友、美結だ。


「・・・は?(怒)」


「ごめんって~!テヘペロ☆」


「ごめんじゃないよおおお!!!!!

会社休んじゃったじゃん!!!!!」


・・・どうやら、そのヒゲはニセモノで、ちょっと強く引っ張れば取れるらしい。


なので、思ってたよりも強く引っ張ったのだけど、ちゃんと取れた。


んもう美結~!!!!!






しかし、その日の夜。

私のベッドに、今日取って捨てたばっかりのヒゲがあった。


何度捨てても帰ってくるヒゲなのか、

今朝抜いたヒゲが本物のヒゲだったのかは分からない。


・・・とりあえず燃やしといた。


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短編集 夏目ぽぷら @hallocast

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