アンドロイド トヤベマリ
私の名前はトヤベマリ。
中学生だ。
そして、単刀直入に言うと、ロボットだ。
見た目は普通に女子だが、体はなんか複雑な機械らしくて超気持ち悪い。つまり、怪しい研究で作られたアンドロイドだ。
私を作った博士は、私がロボットだとばれてほしくないくせに、普通の中学校に入学させ、
「絶対に目立つな」
とか言うから、目立てというフリかと思ったが違うらしくて面倒だ。
しかも、つい数日前、転んだひょうしに鼻が鉛筆削りに変形なんかしちゃったので、体に何が搭載されているか不明である。
それでも学校に行け、ばれるなと言うから反抗期が来てしまったのだ。
そんな感じで今、中学1年生の5月である。
しかし学校中に、博士に頼まれて私を監視している者がいるらしい。
まあ、私服警官みたいなものだ。嫌気がさす。
これで説明は終わりだが、最後。
作者よ、ここまでの流れを何故一冊の本にしなかった!!
読む前に。
私、トヤベマリは、思いっきり冷めた喋り方をする。
(機械らしさの名残らしい)
そして、この話に出てくる伊能という男は、かなりアツい喋り方をする。
そのことを覚えていてほしい。
さあ、物語(?)のはじまり×2。
「トヤベ、おはよう!」
今は朝で、教室に入ったところである。今あいさつしてきた人は、伊能風矢。
ルックスはいい方らしいが、中2病が重症だ。
「なあ、おはよう!」
私は極力、人と会話したくないので、伊能に片手を小さく挙げた。
(挨拶のつもりだ。)
「いやはや、今日は寒いなあ。」
機械に言うな。
(感覚のデータはプログラミングされていない。)
「いや、おかしい。今は5月。」
ごもっともだ。
「もしや。この寒さ…、偉い人の陰謀ではッ!」
偉い人誰?というか、どんな陰謀だよ。
「冗談はとにかく」
冗談?…飛ばされたいのか?
「えーっ、何か話すことあった?」
知るわけない。
伊能は、私以外にマトモな友達がいないらしく、私は伊能をうっとうしいと思っているので、この男は本当に哀れである。
「私以外に友達どれ位いる?」
私からも少しは話しかける。
その度、伊能は、嬉しそうな顔をする。
しかし、彼は特に私に恋愛感情を抱いているわけではないので、この話が機械と人間の禁断の恋の話だと思って期待している方には申し訳ない。
(私には、ロボットとしての機能なのか性格なのかは分からないが、相手が誰をどう思っているか分かる瞬間があるのだ。まあ、つまり急に発動するテレパシーだな。)
「俺には、悪の組織を倒す味方が十人はいるんだ。」
その人達には、ぜひとも会いたくないものだ。
「学校は、そのための情報と知識を集める場所だから、友達と呼べる人はいなくていい。」
ある意味立派なのかも知れない。
「仲間も集める場所なのだが、一人も増えないんだ。」
知識の前に、恥を知った方がいい。
「地球の危機なのに、呑気にしてないで、仲間になればいいのに。」
君の脳も危機だ。
「仲間はたくさんいればいるほど良いんだ。」
伊能みたいなヤツがたくさんいるなんて、それこそ地球の危機だ。
「まあいい。これをみてくれ。」
偉そうに言うな。
「悪の秘密結社のリストだ。」
仕方なくみてみると、会社名に『ブラック』と『ダーク』が入っている率がやたらと高い。
「すごいだろう。一つ一つの会社の情報も、仲間と一緒に苦労して集めたんだ。」
どこに不法侵入したんだ。
「例えば、この会社は、社長の名前が・・・、えーっと、なんて読むんだ?」
犯罪の臭いがしているのだが。
「まあいいか。興味あった?」
「全然ない!」
「…そうだ。放課後、5時に中学校の正門に来てくれない?」
だから読者よ。
告白ではない。
ワクワクするな。
「何するつもりだ。」
「一緒に来てほしい場所がある。」
「私もだ。」
「じゃ、そういうことで。」
放課後。
「あ、来た!」
呼んでおいてなんだ。
「あ、家族に遺言言った?」
は?
「何せ相手は、悪の秘密結社。何が起こるか分からない!」
ってことは、秘密結社にいくの!?…聞いてない。
「女の子を連れて来るのは良心がいたむが、」
帰りたい。
「君には不思議な力がある気がする。」
気のせいである。
「まあ、君が行きたいところが先でいい。」
だから、偉そうに言うな。
私は、ついてこいと言うように、手招きをする。
「ま、まさか…!ついてこいと言うのか!?」
察せ。
そのまま歩くこと10分。
「到着。」
私は、目的地を手で示す。
「ここは…。」
驚くな。ただの交番だ。
「ダメだトヤベ。警察には、どうすることもできないっ!
だから俺達は、苦労して選ばれし者を探しているんだ!」
無駄なご苦労、お疲れ様でした。
「愛と、勇気と、仲間の力で、悪に立ち向かうんだ!」
幼稚園生向けヒーローの決めゼリフみたいなこと言うな。
「友情の絆の力が、やがて奇跡を呼ぶ…!」
わかった黙ってろ。
「そうではない。伊能が怪しいことしてるから、交番をすすめているのだが。」
「怪しいことじゃなくって、救世主だから!」
その発言がすでに怪しい。
さてと。
ロボットなりの親切、ありがたく受け取れ。
「さあ、俺の目的地へ出発!」
交番の前じゃなかったら、軽く殴っていた。
せっかくの優しさを、無駄にするんじゃないっ!!
怒りを抑えながら伊能について行くこと12分。
「伏せろッ!」
いきなり!?
「ここは?」
「到着。」
今の会話、微妙に噛みあってない。
「ここは、ダーク・ドア・エイト・ビッツ社だ。」
名前長っ!!
いや、そうでもないか。
っておい、もしや…?
「とびだすな!!危ないッ!」
建物の中から、コワい人が出てくる。
すると、伊能が私をかばうように、コワい人の前に立つ。
「俺が守る!!」
(伊能の心の中↓)
このまま、か弱い女子を危険にあわせるのは男のプライドが許さない!俺が、なんとしても守ってやるから!俺がやられたら、お前は俺をおいて、先に行けッ!
(↑どっかで聞いたぞ!by作者)
「ここ、私の、家!なのだが?」
「うっ、そ……?」
本当なのだが。
「すみません、すみません、すみません!!」
伊能が、コワい人に必死に謝っている。
『コワい人』……うちの研究員、綾原は、まだ謝っている伊能を、睨みつけるように見下ろしている。
「綾原さん。
コイツ、大分反省しているようだし、なんか言ってあげてくれないか。」
綾原は、うーん、と、うなってから、
「失敬な小僧、俺は、自分の顔がコワいことは知ってる。見た目で判断するなよ。」
「はい!」
「女の子をかばうところ、気分は悪いが気に入った!じゃあな!」
綾原よ、ところでお前は一体何しに来た。
家に帰るなよ。
…まあいい。
「伊能、この会社のことは、どの位知ってる?」
「社長の名前、内部の地図、それと…。」
「じゃあ、交番行くしかないな。」
「え、嘘。」
「いつも話しかけてくるくせに疑うな。本当だ。」
特別に、私が連行してやる。
「綾原さ~ん!!助けて~え!!」
(終わり)
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