②
家について、部屋であーだこーだ言い合う。
「その妹が、生霊になるのはどう?」
「増々怖いね」
二人で意見を出し合う。
「でも、なんで妹は生霊になったの?」
「姉の死を許せなかったからよ」
「そうか」
お宮様の意見に納得がいった。
「そして、最後は殺した人が殺されるのはどう?」
「怖すぎるよ」
「そうかしら」
お宮様は、何冊も本を読んでいるから、怖くないのだろう。
「これで、いいのかな?」
企画書が出来上がった。
「うん、いいわね、後は、書き始めるだけだけど、青さんは長く書ける?」
「ううん」
「そうよね、集中力がないわよね」
「そもそも、私、勉強も得意な方じゃないし、仕方ないんじゃないかな?」
「そうね、でも、青さんに書いてもらわなければいけないの」
「う~ん、がんばってみるよ」
「そうね、少しずつでいいわ」
「うん」
お宮様が珍しく優しい。
「今日は、この辺でやめましょう」
「そうだね」
ほっとしていると、花ちゃんの事を思い出した。
(いつまでも、花ちゃんと仲が悪いなんて嫌だな)
心の中のもやもやがそう言う。
「よし、花ちゃんの家に行って来よう」
一人で、花ちゃんのかんざし屋へ向かった。
☆ ● ☆
かんざし屋を目指していくと、『かんざし屋』の看板が飾ってある古民家が見えた。
中に入ると、色鮮やかなかんざしたちが並んで置いてある。
「こんにちは、おばさん」
「いらっしゃい! って、青ちゃん」
出てきたのは、花ちゃんのお母さんだった。花ちゃんのお母さんはやせ形なのに、たおやかに見えるのだ。
「いつも仲良くしてくださってありがとう」
「いいえ、それより、花ちゃんは?」
「今、かんざしの構図を書いているわ」
「そうですか」
「でも、中に入って行きなさいよ、花だって喜ぶわ」
お茶とせんべいを出されて、中の畳の間に入った。
「ちがう、こうじゃない」
花ちゃんは、一生懸命何かを描いている。
「菜の花のかんざしか……」
書いてあったのは、菜の花を主役にした。かわいらしいかんざしだった。
(すてきだな)
そう思って見ていると。
「この子が構図を描いてくれるおかげで、家はもうかっているのよ」
花ちゃんのお母さんがそう言う。
「そうですか」
「十二才だけど、うちの子は天才じゃないかしら?」
構図の斬新さ、細かいところまでの構図の気配り、とても十二才の少女が書いたようには見えなかった。
(すごい)
改めて、花ちゃんがすごい人間なのだと知った。
(こんなにがんばっているのに副業なんて進められないよね?)
心の中で申し訳なくなった。
「あれ、青ちゃん」
花ちゃんが、やっと気が付いたようにそう言った。
「次は、白詰草を使ったかんざしの構図を描こうと思っていてね」
「花ちゃん、さっきは、ごめんね、副業を持つなんて話になってしまって」
「あっ、そのことは、青ちゃんは悪くないよ、だってお宮様が勝手に言っただけだもの、あの時、青ちゃんは、本気にしてなかったみたいだし」
「そうだよ、本気にはしてないよ、でも、花ちゃんが気にしていたら嫌だなって思っただけなんだ」
少し安心してそう言った。
「絵をほめられるのは、うれしいよ、でも、本の挿絵なんて、うまい人がもっといる物、私の絵じゃ、お宮様に迷惑をかけちゃうよ」
(確かに、貸し本屋の本の絵は、敷居が高い)
「そうかな? 花ちゃんの絵、私は好きだな」
「そう?」
花ちゃんは、照れくさそうにそう言う。
「花ちゃん、私たちだって絵師は、花ちゃんがいいと思っているよ」
「えっ、売れなくなるよ」
「別にいい、そもそも、お宮様の趣味に合わせているだけだもの、売れなかったら、それはそれで、いい思い出になるよ」
「そうかな? それじゃあ、もう少し考えてみるわ」
「お願いね」
そう言って、去って行った。
☆ ● ☆
そして、その夜も、眠れないのでお母さんと眠った。
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