第28話 買い物

 それから僕らは下着を売っているお店に行った。

 うわぁ。男のときだったら絶対に入れてないぞ。

 カラフルなブラジャーやパンツが並んでいる。

 

「おい、これなんかどうだ」

 レズビアが僕に黒のパンツを見せてきた。


「って! これ真ん中に穴あいてるじゃん! エログッズでしょ、これ!」

 

「そう思うからそう見えるだけだ」


「いやいや、明らかにやべーやつでしょ」


「魔族にもいろいろいるからな。こういうのが入用な魔族もいるのだ」


「例えば?」


「淫魔族とか」


「やっぱエログッズじゃんか!」


「リリスちゃん、これとかどう? すけすけだよ!」

 カーミラもまたとんでもないものを持ってくる。


「カーミラ、透けてるパンツとか持ってこないで」


「これとかどうかしら?」

 と、スウィングもパンツを持ってくる。


「それ縞パンじゃん!」


「別にそんなに変なものでもないと思うわ。何をそんなにうろたえているのよ」


「いや、その……」

 たしかに考えてみると、縞パンってそんなにエロいものでもないような気もする。でも、なんか、その……駆り立てられるものがあるよね。


「リリス、買ってきてやったぞ」

 いつの間にかレズビアが会計を済ませていた。手には紙袋を提げている。


「ちょっと待って。買っちゃったの? もしかして、あの真ん中に穴の開いたやつ」


「安心しろ。普通のやつも買ったぞ」


「普通のやつ『も』ってことは、やっぱあれ買ったんだね……」

 僕は絶対穿きませんからね。


「ただ、Qカップのブラジャーは置いてなかった。こないだ買ったところにはひとつあったが……。ここは品揃えが悪いな」


「えっと、Qって、数字の9じゃないよね?」


「当たり前だ。アルファベットのQだ」


「ちょっと待って。これそんなにあんの。てか、Qカップとかって存在するの?」


「存在するも何も、自分自身がそうだろう」


「ううっ、まさか……。そんなにあるなんて」

 Qカップとか搾乳エロゲでしか見たことないんだけど。


 何やら店内がざわついている。

「Qカップ?」「マジで?」「たしかに爆乳ね」「そんなの初めて見たわ」


「出よう」

 僕はレズビアの手を取って店内から出た。


 カーミラとスウィングも僕らについて店から出てくる。


「しかたがない。ブラジャーは通販で買うことにしよう」


「通販とかあるの? じゃあ最初からそれにしてよ……」


 その後、僕らは服屋に行った。


「ねえねえ、これ見て、すっごくかわいい」

 カーミラはバニーガールの衣装を指差す。


「こんなもの置いてあるとか、ここも普通の服屋じゃないでしょ。てか、これどんなときに着るんだよ」


「普段着にいいではないか」


「よくねーよ。女の子の服でももっとかっこいいのとかないの?」


「例えば?」


「どくろのついたTシャツとか」


「何だその中学生みたいな発想は」


「うるさいなぁ」


「どくろのTシャツならこっちにあるわよ」

 と、スウィングが示す。

 たしかにその場所には黒のどくろTがある。


「でも、これリリスが着たら、どくろが乳でびよーんとなるぞ」


「でも、びよーんってなったどくろもかわいいと思うよ」


「ちょっと着てみればいいわ」


「やめとく」

 Tシャツもまともに着れないなんて。


「そういえば、ここもリリスに合うような服は置いてないな」


「また通販?」


 レズビアは首を横に振り、

「なんだかんだで、やっぱりメイド服がいちばん似合うな」


 僕もそう思うけどね……。



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