第27話 放課後

 そんなこんなで放課後になった。


「よっしゃ! みんなで遊びまくるぜい!」

 カーミラが頭の羽をばさばさばさばさっと動かす。


 僕、レズビア、カーミラ、スウィングの四体のメンツが集まる。

 ちなみに、オキュラは生徒会、テレーズは合唱部に行った。

 アルビンはって? 何で僕が男のこと気にしないといけないんだよ。


「私とリリスは買い物に行くが」


「僕、初耳なんですけど」


「スマホも必要だし、下着の数も足らない。それに……」


「それに?」


「リリスに服を買ってやる」


「ま、まあ、ありがとう」


「何だその鈍い反応は」


 うーん、だってどうせエッチなかっこうさせたりするんでしょ?

 それにメイド服に慣れちゃってるし。


 はっ! 慣れちゃってる……?! この僕がメイド服を着ていたいと思っちゃってる?! これもマズいかもしれない。


「何を神妙な顔をしているんだ」


「いや、べ、別に」


「ねえねえ、あたしたちも付いていっていい?」


「うーん。まあ、いいが……」

 レズビアはスウィングのことを見る。


「はいはい、立ち去ればいいんでしょ」


 僕は教室から出て行こうとするスウィングの手を取った。

「スウィングも一緒に行こう?」


「な、ななな……」

 スウィングは狼狽した様子で、僕の顔を見る。

「リリスがどうしてもっていうのなら、しょうがないわね」


 うわっ、やっぱこいつ性格悪いわ。こんなこと言わなきゃよかった。



   ※   ※   ※



 魔界学園に隣接しているデパートは、僕のいた世界のデパートと同じようなものだった。お客さんが魔族だっていうこと以外は。


 一階は化粧品売り場になっていて、女らしさをアッピールするようなにおいが充満していた。そういえば、どうしてデパートとか百貨店の一階って化粧品売り場なんだろう。微妙に男には入りづらい雰囲気出しているよね。


「リリスちゃん、お化粧したらもっとかわいくなると思う」


「そ、そうかな。カーミラのほうがかわいくなると思うよ」


「えへへ。ありがとう、リリスちゃん」


「本来魔族には化粧品なんて不要だ。そんな人間のような真似など……」


「レズビィちゃん、そんなことないよ。レズビィちゃんもお化粧すればもっときれいになるはずだよ」


「私はそういうのは似合わない」


「うーん、たしかに……」

 青い肌のレズビアが赤い口紅を塗った姿を思い浮かべる。


「おい、今何か言ったか?」


「いいえ、何も言っていません。美しいレズビア様」


「ふざけるな」


「ちょ、乳つねってこようとすんのやめて。ここ人前だから」


「そういえば、スーちゃんは?」


「そういえばいないな。置いていくか」


「そうだね」


「って! なに私を置いていこうとしているのよ!」

 突然スウィングが後ろから現れた。


「うわっ、びっくりした」


「スウィング、お前、どれだけがめついんだ。この短い間によくそんなに……」

 レズビアが呆れたように言う。


 スウィングの手には、化粧品の試供品が入った袋がいくつも握られていた。


「た、試してみるためよ。私の一族が栄光を取り戻したら、むしろこのデパートごと買ってやるわ」


「せいぜい頑張れよ」


「何よその反応!」


「あ、この口紅、リリスちゃんに似合いそう」

 カーミラがスウィングの持っている袋をごそごそとあさる。


「ちょっと、それ私の戦利品よ」


「どうせただでパクってきたやつだろう」


「リリスちゃん、口閉じてて」


「ちょ、ここで塗んの?」


「おい、何をやってるんだ。バカども、行くぞ」

 レズビアが僕の尻尾を引っ張って連れてこうとする。


 その拍子に、リリスが塗ろうとしていた口紅が、僕の鼻に突っ込まれた。


「ふがっ」


「わ、私の口紅に、リリスの鼻くそが!」


「そういえば、リリスは鼻フックが似合いそうな顔をしているな」


「どんな顔だよ。てか、そういうこと言うのやめて」


「リリスちゃん、やったねっ! レズビィちゃんに褒められたね」


「カーミラ、何にもよくないからね」

 てか、意味わかってる?


 はぁ……魔界の女子って騒がしいね。


 

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