第21話 洗濯室

 風呂から上がって、再びシャワーを浴び、脱衣所に戻る。

 そして、バスタオルで身体を拭く。特に、胸の谷間と下乳は水が溜まるので、丁寧に拭いていく。


 そういえば、太もものところにほくろがある。

 これは僕の前の身体のときにも同じ位置にあった。

 ちょっと共通点を見出して嬉しくなったけど、すぐにむなしくなった。ほくろの位置が一箇所同じだからって、何だっていうんだ。

 それ以外の何もかもが変わっちまってるのに。


 ドライヤーで髪を乾かす。

 髪長いからめっちゃ時間掛かる。

 これマジで億劫だな。

 うん、リリスちゃん、ショートカットも似合うと思うよ。


 ドライヤーを掛け終え、レズビアのところに行くと、彼女は二本の牛乳瓶を持っていた。


「風呂からあがったら、これだろう」


「おおっ、いいね。でも、それ、本当に牛乳」


「当たり前だ。何をバカなことを言っているのだ」


「本当に牛乳ならいいんだけど」

 僕は牛乳を受け取り、腰に右手を当て、ごくごくと飲む。

 本当に牛乳だった。疑って悪かったね。


「銭湯の隣に、洗濯機が置いてある部屋がある。そこで洗濯物を洗う」

 と、牛乳を飲み終えたレズビアが言う。


「魔界にも洗濯機ってあるんだ」


「田舎者のくせにバカにしているのか」


「田舎者じゃないし」


「とにかく、洗濯はメイドの仕事だ」

 レズビアは洗濯物を僕に渡してくる。


「あ、レズビアのパンツ、くまさんがついてる。かわいい~」


「やめろ。変態。ひとのパンツをじろじろ見るな。あと、嗅ぐな」


「いやいや、嗅いでないから! でも、レズビアってこういう趣味があるんだ」


「違う。パンツの柄などどうでもいいことだ。そういうものにはこだわらないからな」


「ふーん」


「おい、何だその目は。洗濯室に案内するからついてこい」


「ちょっと待って。僕まだ裸なんだけど」


「全裸で来い」


「す、すぐ着替えるから」



   ※   ※   ※



「これ、明らかに洗濯機じゃないよね」

 僕は洗濯室の中にいるモンスターを指差す。


 そのモンスターは壁にはめ込まれ、大きな口を開けている。

 めっちゃぶさいくな顔してる。


「洗濯機だ」


「いやいや、少なくとも「機」じゃないでしょ。生き物だし」


「その口の中に洗濯物をぶち込むのだ」


「ばっちいでしょ。えんがちょでしょ」


「大丈夫だ。洗濯機の唾液は、洗濯物を綺麗にしてくれる。やつらは洗濯物についた汚れから栄養分を摂取しているのだ」


「いやぁ……でも、唾液でしょ」


「さっさと洗濯物をぶち込め、やつらも食いたくてうずうずしている。さっさとしないとリリスをぶち込むぞ」


「ひえっ、わかったよ」

 僕は洗濯物をモンスターの口の中ににぶち込んだ。


 洗濯機モンスターは満足そうに口をもぐもぐさせる。

 うへぇ。


「洗い終わったものは、明日の朝取りに来て、それで干せばいい」


「干すところは?」


「中庭に物干し竿が置いてあるから、だいたいはそこで干す」


「学校にも行かないといけないのに、あわただしいね」


「私はぎりぎりまで寝ているが」


「えー」


「リリスはメイドなのだから、それくらいはしないといけない」


「ちぇっ、わかったよ」

 

 僕らは洗濯室をあとにして、部屋に戻った。



   ※   ※   ※



 僕は例の自分のベッドを見てため息をつく。

 このぼろくてちょっとべたついたベッドに寝ないといけないのか。


「今日は私と同じベッドに寝てもいいぞ」


「ふ、ふたりで一緒に?」


「ああ、リリスは柔らかそうだし、抱き枕がわりにちょうどいいからな」


「ひとのことなんだと思ってるんだよ」


 こうして、僕とレズビアは同じベッドで寝ることになった。

 ふわっふわのベッドだった。

 僕の住んでるアパートのかったい万年床とは大違いだ。


 マジで一瞬で眠りそう。疲れてもいるし。


 すうぅ……。


 って! マジで抱きついてきたし!

 だからおっぱい触ってくんのやめて!


「リリス……」


「何?」


「おやす……すうぅ……」


 え? 寝ちゃった? 寝るの早っ!


 僕も寝ようか。

 って、女の子に抱きつかれてる状態で眠れるかって。

 



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