第18話 アネリア
「あらあら、レズビアの新しいメイドさん? わたしはアネリアといいます。レズビアの姉です。アネリアだけにね」
「リリスです。淫魔族ってやつみたいです」
「みたい?」
「アネリア姉さん、この子は自分の種族に対してコンプレックスを持っているのだ」
「そうなの? とってもかわいらしくて素敵だと思うわ」
「ありがとうございます」
「レズビア、その変な話し方、相変わらずね」
と、アネリアさんが言う。
「魔王の娘として、威厳を保たないといけないからな」
レズビアは偉そうに腕を組む。
「そんなんだからお友達ができないのよ」
「ち、違う。私はできないのではない。あえて馴れ合わないだけだ」
レズビアはにやにやしている僕のほうを向く。
「おい、何だ、リリス。言いたいことがあるのか?」
「別に」
レズビアがカーミラやスウィングに対してとった行動をみるに、たしかに友達なんてできそうもないよな、なんて思う。
「リリスさん、レズビアと仲良くしてやってね」
「まあ、はい」
と、答えたけれど、仲良く……やっていけるのかな?
「仲良くとかそういうのはいらない」
「二人とも仲がよさそうに見えるわ」
「「どこが」」
僕とレズビアは同時に言う。
「ほら」
と、アネリアさんがにこにこしながら言う。
レズビアは恥ずかしそうな表情をする。
まさか、レズビアが僕のことをこうやって淫魔族の女の子として召喚したのは、もしかして話し相手がほしかったから? メイドだとお友達ってていにしなくても済むから。
「もしかして、リリスさんは魔界学園の生徒さん?」
「正確に言うと、今日田舎から出てきて、明日から魔界学園に通うことになっている」
「あらあら、大変ね。私、魔界学園の生徒会長なの。わからないことがあったら聞いてね」
「はい」
アネリアさんは、レズビアと違ってすごくいいひとだな。
ちょっとは見習ったらどうだ。
「二人で仲良くお風呂に入ってね」
と、言いながらアネリアさんは浴場を後にした。
※ ※ ※
「リリスは女の身体について初心者だからな。今日は特別に私がリリスを洗ってやろう」
「別にいいから。自分で洗うから」
「そう言うな」
レズビアは、僕の肩をつかんで、無理やり風呂椅子に座らせる。
僕の背後にはレズビアが立っている。
ちょっと怖いんだけど……。
目の前には鏡があって、でっかいおっぱいとピンク色の乳首が映っている。
「仲良くとかではないからな。あくまでも主人とメイドの関係だ」
「あくまでもって、ダジャレ?」
「くだらないことを言うな」
レズビアは僕の髪の毛にシャンプーをどぼどぼとかけてくる。
「ちょっと、そんないっぱい……め、目に入るから」
僕は目をつむって、レズビアが髪を洗うのに任せる。
どうして自分で髪を洗うときは別にそんなに気持ちよくは感じないのに、美容院とかでひとに洗われると気持ちいいんだろう。
「髪が長いから時間がかかるな」
「短く切っちゃってもいいかな」
この髪、たしかに長すぎて邪魔だ。
それに、もうけっこうな時間洗われつづけている。
「ダメだ」
「どうして。私の趣味だ」
「そんなあ」
「このピンクの髪はとても美しい。短くするのはもったいない」
たしかにこのピンク色の髪の毛は、きらきらと透き通っていて、宝石のようにきれいだ。
でも、邪魔なものは邪魔だ。洗うのにも時間かかるみたいだし。
「あと、角もきれいに洗わないといけない」
レズビアはブラシのようなもので角をごしごしと洗う。
「間にごみがたまったりするからな」
「この角って何の意味があるんだろう。動物の雄なら、雄どおしで雌を争うためにあるんだろうけど」
「たしかに私たちは雌だし、そういう使い方はしないな。両手を使いたいときにものを引っ掛けたりする。ハンカチとポーチとか赤鉛筆とか」
「たしかに便利そうだけど」
なんか見た目は滑稽だな。
「あと、人間共は、この角こそが邪悪のしるしとか、そんなことをのたまっている。狩った魔族の角を戦利品なんかにしている」
「ひえっ、そんな残酷な。でもカーミラには角はついてないけど」
「ああ、もちろん角のない魔族もいる。人間共が言っていることはでたらめだ」
「でも、僕も元は人間なんだけど」
「ペロンチョ界の人間とは別だと考えたほうがいい。人間だからと気を許してはいけない。特に淫魔族の女の母乳は媚薬の材料になるらしく、人間共は淫魔族の女を拉致して、牧場に連れていくらしい」
「ぼ、牧場ってまさか」
「死ぬまで母乳を搾り取られるらしい」
「ひっ、ひえっ!」
僕が思っているよりも、人界の人間っていうのは、そうとうやべーやつららしい(もしかしたらレズビアが盛ってる可能性もあるけれど)。
「大丈夫だ。もし人間共が来たとしても、リリスには指一本触れさせない」
それは頼もしいけど、なんでそんなハードモードな種族にしたんだよ。
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