第15話 また明日

 トイレから出てくると、レズビアたちはもうお会計を終えて待っているところだった。


「さて、リリスも戻ってきたことだし、今日のところは解散しよう」


「えー」

 カーミラが異議を唱える。


「今日はメイドの仕事の初日ということで、リリスも疲れているのだ」


「ならしょうがないよね。でもでも、明日また学校で会えるんだよね」


「たぶんね」

 と、僕はカーミラに答える。

 カーミラには悪いけど、明日になったら元に戻ってないかな、なんてことを思う。


 僕らは店を出て、堕落街の通りに出る。

 まだまだ街はたくさんの魔族で活気付いていた。


「また、明日ねっ」

 カーミラは僕に抱きついてくる。


「うん、また明日」

 ちょっとカーミラに対しては心苦しい。


「ごめん、ちょっと涎垂れちゃった」


「ええ……」

 たしかにちょっと胸のあたりが湿ってる。

 やっぱりまだ僕の血をおいしそうだと思ってる?


 カーミラはハンカチを取り出し、僕の胸についた涎を、ぽんぽんとはたくようにぬぐう。


「リリスちゃん、怖がらないでね、ごめんね」


「大丈夫だよ」

 僕はちょっとためらったけど、カーミラの頭を撫でる。


 カーミラはとっても嬉しそうな顔をして、

「えへへ。もっと撫でて撫でて」


「う、うん」

 僕はもっとカーミラの頭を撫でてやる。


「なに女どうしでいちゃついてるのよ……」

 スウィングが呆れ顔で言う。

「また明日もあなたのそのでかいおっぱいを眺めないといけないのね」


「別に眺めなくていいから」

 スウィングに対しては何も思わない。むしろあっち行けって感じ。


「じゃあ、またねー」

 と、カーミラが手を振る。

 僕も手を振り返す。


 そして、カーミラとスウィングは、魔王城とは反対方向に歩いていった。


「さ、リリス、帰るぞ」

 と、レズビアは僕の手を取る。


 帰る場所って、もちろんあの魔王の城だよね……。


 僕は天を衝く尖塔がそびえる禍々しい魔王城を仰ぎ見た。


 あれが、僕のこれからの家ねぇ……。



  ※ ※ ※



 例の監獄のような自分の部屋に着くと、さっそくベッドにダイブした。


 痛っ。


 おっぱいがぼよんとベッドに弾き返される。


 このベッド、硬ぇ……。


 しかも、蜘蛛が寝てたってことで、若干べとついている。


「おい、リリス、いきなり寝ようとするな」

 レズビアが入り口で呆れたような顔で言った。


「だって、疲れたし」


「風呂に入るぞ」


「まだこの身体になって半日くらいだし、別に入らなくても」


「私が入る必要があるのだ。もう少しメイドとしての自覚を持たせないといけないな」

 レズビアは不敵な笑みを浮かべる。


 そして、彼女は僕のところに来て、僕の角をがっしりと両手でつかむと、

 僕の身体を無理やりベッドからはがしにかかる。


「痛っ。痛いって。角折れるから!」

 僕は慌てて自分から起き上がる。


 くそぅ……。人界の人間さんは早く魔界に来て、レズビアのことを退治しちゃってください。


 あ、お風呂ってことは、自分のエロい全裸を見ちゃうってことだよね。

 あと、ついでにレズビアの身体も……。

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